雨にかすむ大宮公園サッカー場

混戦模様は続く。雨中の決戦は２−２のドロー。
2004Ｊリーグ　ディビジョン２　第13節　大宮アルディージャvs.アビスパ福岡

2004年5月19日（水）19:00キックオフ　さいたま市大宮公園サッカー場　観衆：1,901人　天候：雨
試合結果／大宮アルディージャ２−２アビスパ福岡（前０−１、後１−２）
得点経過／［大宮］高橋（19分）、［福岡］増川（78分、81分）、［大宮］パレー（89分）


取材・文／中倉一志

　第８節、博多の森で福岡に敗れて以来、勝ち星から見放されている大宮。しかし、昇格争いのライバルチームとのホームでの戦いに勝たないわけにはいかない。そんな姿勢が立ち上がりからプレーに現われる。積極的に前から仕掛け、１人がボールを追えば、それに続いて、２人、３人と福岡にプレッシャーをかけていく。奪ったボールはシンプルに前へ。最前線ではバレーが相変わらずの存在感を見せ付ける。いいリズムでスタートを切った。

　一方の福岡も負けてはいない。激しいプレスをかいくぐりながら、ベンチーニョを起点にして１タッチ、２タッチでパスを回す。最終ラインもバレーと高橋の大宮の２トップをしっかりとマーク、決して引かずに真正面からぶつかっていく。福岡も、いいリズムで試合に入っているようだ。雨という悪コンディションながら、コンパクトなゾーンに相手を封じ込め、ボールをよく回す両チーム。目が離せない序盤戦だ。

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雨の中、キックオフを待つ大宮サポーター。願うは6試合ぶりの勝利。

　しかし、時間の経過とともに主導権は大宮へ。「中盤をつないでいくサッカーというのは、（雨のグラウンドでは）やはりリスクが大きすぎるようなところがあった」（松田監督・福岡）。大宮の激しいプレスの前に福岡のパスが乱れ始める。それをカットしては、すばやく切り返して攻撃の形を作る大宮。11分には、バレーが左サイドからドリブルでゴール前へ。あわやというシュートを放つ。大宮は、次第に福岡を相手陣内へ押し込んだ。

　そんな大宮の先制点は19分。福岡の最終ラインが大きく左に展開したボールを若松がカット、金澤、高橋とボールをつなぐ。中央のスペースをドリブルで駆け上がった高橋は、約30メートルの地点から右足を一閃。ドライブ回転のかかったシュートがＧＫ水谷の頭上を越えてゴールマウスに吸い込まれた。ここからは一方的な大宮のペース。バレーが巧みにボールを引き出し、高橋、金澤、安藤正らがバイタルエリアに進入しては福岡を攻め立てる。それでいて両ＳＢは低い位置を保ち、古賀、山形の攻撃を封じ込めた。

　大宮の流れを断ち切るために松田監督が手を打ったのは33分。「いったん相手陣内にボールを運んで、そこを起点に。相手に取られたとしても、そこから、もう一回盛り返すという形でないと少し難しい」。田中に代えてターゲットマンとして増川を投入すると、増川にボールを預ける作戦に出る。このカードは大宮の勢いを静めることに成功。福岡は何とか一息つく格好で前半を終えた。残りは45分。今度は福岡が攻める番だ。

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横断幕を準備する福岡サポーター。雨なんか気にならない。

　増川が高さと強さを武器にターゲットマンの役割を果たし、こぼれたボールを拾って前へ出る福岡。後半は福岡のペースで進んでいく。高い位置にボールが収まるようになった福岡は、両サイドから攻撃を仕掛ける場面も出始めた。しかし、福岡が攻勢に出るのは三浦監督（大宮）は計算済。「後半20分、しのげるように」。ハーフタイムに指示を出すと、62分には、高橋を下げてＤＦ登録の斉藤をボランチとして投入。中盤を５人にして守りの体制をとる。この交代で福岡は再び手詰まりになっていく。

　しかし、攻めるしかない福岡は68分、米田を下げて福嶋を投入。ベンチーニョをトップ下に下げる。それでも流れが変らないと見るや、75分には川島に代えて宮崎をいれて３バック気味にシステムを変えた。あくまでも攻め抜く姿勢を見せる松田監督。そして、その采配が実を結ぶことになる。大宮の決定機をＧＫ水谷が弾き返した直後の78分、福嶋のポストプレーからボールを受けた増川が、ＤＦに身体を寄せられながらも左足を一閃。豪快なシュートがゴールネットを揺らしたのだ。

　浮き足立つ大宮に福岡はさらに襲い掛かる。同点から３分後の81分、右からＣＫに再び増川がニアに飛び込んで頭で合わせた。不恰好ながらもアグレッシブな姿勢を崩さなかった福岡のあっという間の逆転劇だった。この後、増川をボランチの位置に下げてゲームコントロールに入る福岡。このまま試合は終わるものと思われた。しかし、大宮も粘りを見せた。時計の針が90分を回ってから数10秒後、ゴール前にこぼれたボールをバレーが叩き込んだのだ。そして４分のロスタイムを経過してホイッスル。試合は２−２の引き分けに終わった。

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	フラッグを振ってチームを鼓舞するちびっ子サポーター

　残り15分となった時点では福岡は負けてもおかしくなかった。同点ゴールを挙げてからは勝ちに等しい戦いぶりだった。終わってみれば２−２の同点。福岡にとっては評価の難しい試合だった。しかし、混戦が続くJ2では今は辛抱のしどころ。「普通のチームというのは、こういう戦いを続けていきながらリズムを掴んでいくしかないかなと思っています」（松田監督）。波に乗り切れない福岡だが、まずは昇格争いのライバルとの勝ち点差を縮めさせなかったという最低限の仕事は出来たというところだろう。

　一方、記者会見場に現われた三浦監督は明らかに不満の表情を浮かべていた。勝っておかなければいけない試合。しかも75分までは、ほぼプラン通りに試合を進めていた。「後半、あれだけディフェンシブな戦いをしたにも拘らず失点を２点もしてしまったというところに、いま問題がある」と三浦監督は悔やんだ。抜群の存在感を示すバレーを擁するチームなら１点は計算できる。その１点を守りきれるチームにすることを模索する三浦監督にすれば、耐え難い引き分けだっただろう。

●	松田浩監督（アビスパ福岡）記者会見
●	三浦俊也監督（大宮アルディージャ）記者会見