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2003Ｊリーグ ディビジョン２ 第32節 サガン鳥栖vs.コンサドーレ札幌
2003年9月6日（土）19:04キックオフ 鳥栖スタジアム 観衆：3,303人 天候：曇
試合結果／サガン鳥栖０−１コンサドーレ札幌（前０−０、後０−１）
得点経過／［札幌］砂川（51分）
取材・文／中倉一志
「勝て！！負けは、もう見飽きた×」。鳥栖サポーターが陣取るゴール裏に大きな横断幕が張られている。鳥栖の前回の勝利は６月８日に行われた横浜ＦＣ戦で挙げたもの。実に３ヶ月もの間、勝ち星から見放されている。経営をめぐる様々な問題が噴出していることも勝てない原因なのだろうが、それにしてもひどすぎる。自分たちの出来ることは応援することだけ、そんな気持ちで精一杯の声援を送ってきたサポーターのやりきれない思いがにじみ出ているような横断幕だ。
鳥栖ほどではないにしろ、勝てないということでは札幌も同じ。７月19日の湘南戦以来８試合も勝ち星から遠ざかっている。26節終了後にはジョアン・カルロス監督がチームを去り、27節からは昨シーズンと同じように張監督がチームを引き継いだが建て直しの兆しは見られない。それでも、はるか北海道からは大勢のサポーターが鳥栖スタジアムに駆けつけている。「とにかく勝て！」。願いにも似た思いを胸にキックオフの時を待つ。
試合開始直後、まず前に出てきたのは札幌だった。しかし、その攻撃は慌しい。勝ちたいという気持ちがそうさせるのだろう。ボールをつながずに早めに前線へフィード。スピードを上げて前へ走りこむ。しかし、選手間の距離があき、それぞれが孤立気味。一見攻め込んでいるように見えてバランスは悪い。「あんな暑さで、あんなにスピードを上げて走っても続かない」。張監督は試合を振り返ったが、やがて運動量も落ちていく。
そんな札幌を３−５−２のフォーメーションで鳥栖は迎え撃つ。狙いは攻守の速い切り替えからのカウンター。孤立した札幌の選手にプレッシャーをかけてボールを奪うと、両SBが前がかりになりバランスを崩す札幌のDFラインの両側のスペースを、鈴木、山道が突破。ゴール前で待つ２トップに加え、トップ下に入った大友が1.5列目からスペースへ飛び出して札幌DFを慌てさせる。試合を掌握する鳥栖にホームのサポーターの期待は膨らむ。
しかし鳥栖にゴールが生まれない。札幌からは覇気が感じられない。それに乗じて一方的に攻め立てている。しかし、ラストパスがゴール前に詰める選手に合わないのだ。何度も繰り返される光景に、サポーターの歓声はため息へと変わっていく。「最終のフィニッシュの部分での精度を上げないと、やっぱり・・・」。記者会見で千疋監督は力なく語ったが、前半のうちに得点を挙げることが出来なかったことが、その後の展開を大きく変えることになる。
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砂川がボールのクッション役を務めることで、札幌は面白いようにボールをつなぐ。鳥栖から前半の勢いを奪い、右へ、左へと翻弄する。そして51分、アンドラジーニャの右サイドからのクロスに砂川がフリーで頭を合わせた。鳥栖にとってはあまりにも重い１点だ。あれよ、あれよという間に奪われた先制点。緩慢なGKの動き。前半の展開が嘘のような劣勢。鳥栖サポーターの間に「またか」という思いと、「まさか」という思いが交錯する。
鳥栖は失点を喫した直後、山道を下げて米山を右MFとして投入。そして、大友を左MFに、鈴木をボランチに、川崎をトップ下へとポジションを変える。しかし、失ったリズムは戻らない。サイド攻撃は全く機能しなくなり、途中交代した米山は試合のリズムに乗り切れず、ほとんどボールにも触れない。そんな状況の中、ボランチの村主が右サイドから何度もオーバーラップを試みるが、それもむなしい努力。もはや、鳥栖に勝機はなかった。
「この１勝までが、あまりにも長かったです。まず、この勝利をイエス・キリスト、神様にささげます。感謝しています」。張監督の表情には安堵の色が浮かんでいた。しかし、ピッチの上では派手なジェスチャーは控えた。鳥栖スタジアムは張監督が日本でのキャリアをスタートさせたところ。その場所で自分の成長した姿を見て欲しかったと張監督は語る。しかし、鳥栖の現状は惨憺たるもの。胸中には複雑な思いが渦巻いていたに違いない。
そして、この日も敗れた鳥栖。その試合展開はリプレイを見ているようにいつもと同じだ。そこからは明日への希望は感じられない。記者会見に臨む千疋監督の表情には思い通りにいかない焦燥感が溢れている。現場の指揮命令系統と責任体制は不明確なまま。首を傾げたくなるような選手起用。そして、いつまでも払拭しきれない経営問題。問題を山ほど抱えるサガン鳥栖は、どこへ行くというのだろうか。
| ● | 張外龍監督（札幌）記者会見 |
| ● | 千疋監督（鳥栖）記者会見 |
