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2003Ｊリーグ ディビジョン２ 第27節 アビスパ福岡vs.サンフレッチェ広島
2003年8月10日（日）19:04キックオフ 東平尾公園博多の森球技場 観衆：12,578人 天候：晴
試合結果／アビスパ福岡３−１サンフレッチェ広島（前１−０、後２−１）
得点経過／［福岡］ベンチーニョ（41分）、林（69分）、ベンチーニョ（84分）、［広島］マルセロ（85分）
取材・文／中倉一志
「メンタリティの部分が勝敗を決する一番の核にある。技術、戦術、体力も、もちろんあるけれど、中核にあるのはメンタル」（松田監督・福岡）
「内から沸いてくる自信、それから思い切りの良さ、そういうのが結局は反映してくる。最後は気持ちのところの問題」（小野監督・広島）
記者会見の席で、両監督ともメンタリティの大切さを口にした。福岡にとっては掴みかけた自信を本物にするために勝っておきたい試合。広島にとっては、建て直しのきっかけを得るために、どうしても勝たなければいけない試合。互いに一歩も引けない中での対戦はギリギリのところでの勝負になる。勝負を決するのはほんのわずかな差。そのわずかな差を手に入れる鍵は、どれだけ相手より強い意志を持つかにあった。
まず試合の主導権を握ったのは広島だった。ダイレクトパスを多用した早いパスワークでリズムを作り、３人のFWとMFの高木、森ｱ浩が出たり、入ったりしながら組み立てる攻撃は福岡に的を絞らせない。圧倒的にボールをキープする広島。試合は広島の一方的なペースで進んでいく。そんな広島に問題があるとすれば最後の部分。有利に試合を運びながらも、この時間帯にたったの１本のシュートしか放てない。広島にとっては、勝負をかけた立ち上がりに攻め切れなかったことが、後になって大きく尾を引くことになる。
広島の分厚い攻撃を凌ぎに凌いだ福岡のチャンスは17分。ベンチーニョからのボールを受けた林が素早く反転してゴールへ向いた。その瞬間、上村がラグビーのタックルよろしく両手で林の上体にしがみつく。しかし林は、これをものともせずに振り切ってドリブルシュートを放つ。シュートはポストの左に外れたが、相手を蹴散らす迫力にスタンドから大きな歓声が沸く。そして、福岡の粘り強い守備と林が見せたゴールへの執念が、広島の勢いを止めることになる。
「ボールよりもみんなが前のほうに行ってしまって、かえって自分たちでスペースを埋めてしまった」（小野監督）。焦りからか広島は中盤のバランスを崩す。そして中盤で自由を得た福岡がペースを奪いにかかった。左からは宮崎がスピードあふれる突破を見せ、右からは大塚、川島が仕掛けにかかる。流れが福岡に傾き始めた。しかし、広島も守りは堅い。試合はやがてこう着状態に。互いに辛抱の時間帯が続いていく。
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「落ち着いて、熱いハートで戦え」。１点のビハインドを背負った広島の小野監督は選手を後半のピッチに送り出す。「一瞬でも隙を見せるな。最初の15分が大事。気持ちで負けるな」とは松田監督。前がかりになって攻め込む広島と、高い集中力で跳ね返す福岡の戦いは一瞬たりとも目が離せない展開で進んでいく。しかし、ここでも気迫にまさったのは福岡。ルーズボールに一歩早く反応し、危険な場所には必ず福岡の選手がいた。前半同様、広島は攻めながらもシュートまで持ち込めない。それどころか少しずつ歯車が狂い始めた。
61分、大事な時間帯を凌ぎきった福岡はスーパーサブ古賀を投入。この采配が見事に当たる。鋭い突破とボールへの激しいプレスを仕掛ける古賀の動きは、福岡に再び攻撃のリズムをもたらした。そして69分、古賀が折り返したクロスボールが二アに走りこんできた林の頭にドンピシャリ。豪快なヘディングシュートがゴールネットを揺らす。さらに84分、林が広島DF２人を振り切ってゴールへ突進。右サイドでドフリーになっていたベンチーニョへラストパスを送ると、これをベンチーニョが落ち着いて決めて試合の決着をつけた。
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「点差ほどの内容の差はなくて、うまいこと試合を運べたなというのが率直な感想」。松田監督は試合を振り返ったが、我慢のしどころを凌ぎ、勝負どころで狙い通りのゴールを挙げた試合展開は見事。メンタル部分での成長は明らかで、またひとつ自分たちの殻を破ったようだ。しかし松田監督は慎重な姿勢を崩さない。「本当の力というのは１年通して出るもの。まだまだ発展途上の段階」。次節はホームでの大宮戦。更なる発展を遂げるため、福岡は４連勝を目指す。
| ● | 小野監督（広島）記者会見 |
| ● | 松田監督（福岡）記者会見 |
