最後に点火した“湘南花火”、ベルマーレがドローに持ち込む
2003Ｊリーグ　ディビジョン２　第27節　大宮アルディージャvs湘南ベルマーレ

2003年８月10日（日）　18：31キックオフ　さいたま市大宮公園サッカー場　観衆：5.072人　天候：晴
試合結果／大宮アルディージャ２−２湘南ベルマーレ（前１−０、後１−２）
試合経過／［大宮］黒崎（２分）盛田（75分）［湘南］戸田（77分）パラシオス（88分）


取材・文／砂畑　恵

　台風が過ぎ去った関東地方では、時折、名残の強い風が吹くものの、真夏らしい１日となった。巷はお盆休みに入った人もおり、やや早目のナイトゲームでもあったことから、スタジアムは多くの親子連れで賑わった。順延となった地元の花火大会も、遠雷のように打ち上げの音を轟かせ、観客席から遥かな空に華やかな大輪が顔を覗かせる。そんな中での試合は行なわれた。

　ゲームはアルディージャにとって幸先のよいものであった。試合開始２分での先制点。野口のクロスに対し、ゴール中央で構えていた斉藤がジャンプ。ボールはわずかに頭上を超えてゴールラインを割るかに思われたが、フォアに詰めていた黒崎がボールの落ち際をプッシュして得点を挙げる。

　その後、20分まではアルディージャが高いボールポゼッションを誇り、アルディージャペースで試合が進んだ。その間のベルマーレは混沌としたチーム状態。全体のバランスも悪く、動きも少ない。選手同士が連動することも、お互いに働きかけることもないまま、雑然とした印象ばかりが目に付いた。

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　ただアルディージャの攻めを見ていると気掛かりな点があった。ゴール前にはテンポよく運ぶのだが、シュートへの詰めの段階になると、味方同士の呼吸は合わず、シュートまで持ち込むことが出来なかったからだ。それと同時に、穴沢主審は接触プレーについてはあまり厳しくは取らないジャッジを下していく。その２つが相まって、アルディージャの攻撃は徐々に乱れていく。そればかりか時間が進むにつれて足取りが重くなり、ロングボールを前線に放り込んで、バレー任せにするシーンが多くなっていった。

　逆にチーム状況が良いようには見えなかったベルマーレは、悪いなりにもシンプルで、きっちりとしたパスを繋げていくことでチーム内にテンポを取り戻す。熊林にボールを集め、ここを起点に攻撃を組み立ていくようになり、トップの柿本と高田の、それぞれの役割もはっきりしていった。柿本がポスト役になり、高田はバックラインの裏を取る。特にこの日の高田の動きは俊敏で、アルディージャDF陣もその対応に手を焼いていた様子。25分を過ぎた頃には、攻撃をシュートで終らせるようになる。リズムに乗ったベルマーレは、32分には坂本のパスから柿本がシュートへと持ち込んでGK川島を慌てさせ、37分には金のパスに反応した坂本が無人となったゴールにシュート。間一髪DFがクリアーしたが、アルディージャの牙城を脅かすようになっていった。

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　ハーフタイムに山田監督からボールを早く動かす指示を受けたベルマーレの選手達は、ワンタッチパスを多用して後半の攻撃をスピードアップ。躍動感がみなぎったベルマーレに、なんとかアルディージャ守備陣が食い下がるといったゲーム展開となる。60分にはオフサイドをかい潜った高田への縦パスを、ゴールエリアを飛び出した川島が寸でのところでクリアーしてピンチを逃れる。72分には途中交代の加藤がアルディージャの選手３人を振り切ってシュートするもポストが阻む。それでもいつベルマーレにゴールの瞬間が訪れてもおかしくない。ベルマーレの雰囲気は盛り上がった。

　アルディージャは苦しい流れの中で、頼みの綱となるバレーに個人で打開することを委ねるが、パラシオスの的確で力強い守備の前では思うようにいかず。そこで菅野監督は一度に２人のFWを入れ換える荒治療に着手。その采配は的中した。エジソンが、75分に伊藤のロングパスに全速力で駆け上がる。パラシオスのナイスディフェンスには遭ったが、どうにかCKをもぎ取った。そのCKがアルディージャの２点目になる。安藤のキックを人でへし合う一団の背後から盛田がヘディングで見事にゴールに突き刺す。最悪のパフォーマンスであったアルディージャは、交代選手の活躍で立ち直るかと思われたのだが…。

　ところがベルマーレの気迫はこの日のアルディージャでは押しと止めようがなかった。77分、熊林のCKを戸田が頭で押し込んで１点を返す。その２分後には熊林のシュートがバーを直撃。84分にはGK小林のゴールキックから、アルディージャDFの跳ね返しを拾った高田がきわどいコースにシュートを放つ。どうにかこのまま時間を堪え忍ぼうとするアルディージャの焦りに乗じて、ベルマーレは87分にゴール前のFKの奪取に成功。５枚の壁を築くアルディージャに対し、熊林はボールをパラシオスに軽く流した。閃光はネットに触発。攻めに攻めながらも決まらぬゴールにやきもきし、一旦は負けを覚悟したであろうベルマーレサポーターは、残り15分、しかも目の前で点火した“湘南花火”に一際大きな歓声を上げた。