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2003Ｊリーグ ディビジョン２ 第24節 サガン鳥栖vs.サンフレッチェ広島
2003年7月26日（土）19:04キックオフ 鳥栖スタジアム 観衆：4,603人 天候：晴
試合結果／サガン鳥栖２−２サンフレッチェ広島（前２−１、後０−１）
得点経過／［広島］李（11分）、［鳥栖］佐藤大実（26分）、鳴尾（37分）［広島］大木（88分）
取材・文／中倉一志
第１クールの勢いが嘘のように消えてしまった広島。新潟との間にあった11の勝点差は、いつの間にか２差に縮まったばかりか、２連敗を喫し一時の勢いが完全に消えてしまった。そして最下位から抜け出せない鳥栖。シーズン中の事実上の監督交代劇も、ジュニーニョの補強も結果を出すには至っていない。両チームにとって、いま一番大切なのは勝点３という薬。試合内容よりも、順位よりも、まずは勝利という結果が欲しい。
そんな状況におかれた両チームは試合開始直後から激しいバトルを繰り広げた。４−３−３の布陣を敷く広島は、駒野、服部の両SBが高い位置に張り出し、まるで２バックとも思えるような陣形で攻撃姿勢を鮮明にする。特に右SBの駒野は、ほとんど右のMFかと思われるほどの位置でプレーを続けている。とにかく前がかり。激しく鳥栖陣内に攻め込んではゴールを目指す。総攻撃を仕掛けて早々と勝負を決めてしまおうという狙いだろうか。
しかし、迎え撃つ鳥栖からは守ろうなどという意識は感じられない。前へ出てくる広島に対して真っ向勝負を挑む。フルパワーの広島に決してひるまず、攻め込まれてもとことんマークについて、ほんのわずかな隙を見つけてはカウンター攻撃を狙う。闘志むき出しとはまさにこのこと。とにかく相手に喰らいつきながら、前へ、前へ出ようと試みる。
互いが真正面からぶつかり合う試合の先制点は広島。時間は11分のことだった。鳥栖のクリアボールを拾った李がペナルティエリアのすぐ外から右足を一閃。ほんのわずかな隙を突いて放ったシュートは、ゴール上段、右隅に見事に吸い込まれた。防ごうにも防ぎようのないコース。互角に戦っているように見えても、そこは広島。きっちりと先制ゴールを奪った。やはり首位の壁は最下位の鳥栖にとって厚いのか。しかし、鳥栖イレブンの闘志は、いささかも衰えることはなかった。
サポーターの声援が選手を奮い立たせ、選手の闘志がサポーターを熱くさせる。鳥栖は広島を押し返し始めた。その原動力となったのが左SBの中村。駒野とマッチアップするポジションにもかかわらず、積極果敢にオーバーラップを繰り返し、駒野の前進を阻んだ。それどころか、何度となく駒野の背後のスペースをついてチャンスを作り出した。いつしか試合のペースは鳥栖のものに。広島も跳ね返そうとするが鳥栖の勢いは止められない。
巧みな動き出しでボールを引き出す佐藤（大）。その佐藤（大）とバランスを取って中央の隙を狙う鳴尾。２列目の小石とジュにーニョはポジションチェンジを繰り返しては、両サイドの背後を狙い、選手が動いたことで出来るスペースには佐藤（陽）、鈴木の両ボランチが飛び出して巧みにチャンスを広げる。最終ラインも前へ出るDFを忘れない。「異様な雰囲気で試合が進んでしまって、うちの良さが出せないまま時間が過ぎた」とは小野監督（広島）。鳥栖は力で広島をねじ伏せた。
鳥栖の反撃ののろしは26分。ジュニーニョのからのボールを受けた小石が右サイドを突破、アーリークロスをゴール前へ送り込む。絶妙にコントロールされたボールは、４人揃っていた広島の最終ラインの真ん中へ飛び、そこへ飛び込んできた佐藤（大）がフリーでヘディングシュートを叩き込んだ。さらに37分、左サイドへ飛び出した小石がGKと１対１に。小石はGKの動きを見極めて折り返すと、フリーで飛び込んできた鳴尾がゴールへ流し込んだ。
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こうなるとペースは一気に広島へ。右から駒野が鋭いクロスを放り込めば、左からは服部がスピードを生かして攻め上がる。前半、フルパワーで戦った影響からか鳥栖は広島に遅れを取ることが目立ち始め、一方的に攻め込まれた。攻撃サッカーを標榜する広島の攻撃は迫力満点。試合はいつ点が入ってもおかしくない展開になっていく。しかし、ここでも鳥栖は粘りを見せる。身体を張り、集中を切らさず、必死にゴールを守る。その姿にゴールポストまでもが味方する。
これでもかと言わんばかりに攻め立てる広島。必死になって跳ね返す鳥栖。時計の針はいつの間にか87分を刺していた。その時、ゴール前でマルセロがドフリーで放ったヘディングシュートがクロスバーを叩く。どよめくスタジアム。この日の広島に運は味方しないのか、そんな空気がスタジアムに流れる。しかし、その直後の89分、CKからのゴール前の混戦からお起きが値千金の同点ゴールをゲット。広島は土壇場で追いついて引き分けに持ち込んだ。
前半だけなら圧倒的に鳥栖。後半だけなら圧倒的に広島。そんなゲームだった。真っ向勝負を仕掛けて広島を押さえ込んだ鳥栖の前半は見事の一言。そして、それを力づくで引き分けに持ち込んだ広島の後半もまた見事だった。両チームにとって何が何でも欲しかった勝利は手に入らなかったが、長いシーズンはまだ半分が終わったばかり。この日の試合を肯定的に捉えてこそ次の試合につなげなければならない。広島は勢いを取り戻せるのか。鳥栖は立ち直りのきっかけをつかめるか。それは次の試合にかかっている。
| ● | 小野監督（広島）記者会見 |
| ● | 千疋監督（鳥栖）記者会見 |
