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　webnews　03/05/07 (水)

存在する大きな差。福岡、「強豪」広島の前に力負け。
2003Ｊリーグ　ディビジョン２　第10節　アビスパ福岡vs.サンフレッチェ広島

2003年5月5日（月）15:34キックオフ　東平尾公園博多の森球技場　観衆：8,283人　天候：晴
試合結果／アビスパ福岡０－２サンフレッチェ広島（前０－０、後０－２）
得点経過／［広島］服部（79分）、森﨑浩（89分）

取材・文／中倉一志

　福岡にとっては力の差を痛感させられた試合だった。ここまで８勝１分の広島と、３勝１分５敗の福岡。成績もさることながら、互いの間にあるチームとしての質の差は予想以上に大きかった。粘りに粘った福岡にもいい時間帯がなかったわけではない。少ないながら決定的なシーンも作り出した。凌いで、凌いでワンチャンスを狙う。そこに活路を見出すはずだった。しかし、その戦術が通用する相手ではなかった。その事実がむなしく博多の森を包む。「最後は力尽きた」指揮官は力なく試合を振り返った。

　現段階での広島との差はサポーターも認めるところ。しかし、ここは博多の森。どんな相手であろうと勝利をプレゼントするわけにはいかない。開始直後からサポーターの大声援が博多の森に響き渡る。それに勇気付けられたかのように、選手たちも集中力の高い立ち上がりを見せた。ボール支配率では劣っているものの、コンパクトなゾーンを敷いて広島と真っ向からぶつかり合う構えを見せる。ゲームの入り方としては悪くはなかった。

　しかし５分、広島が実力を見せつける。左サイドをスルスルと上がってきた服部がアーリークロスを入れると、やや下がった位置から大木がフリーで飛び出して右足を投げたした。強烈なシュートが福岡ゴールを襲う。ボールはクロスバーの上を通過していったが、福岡守備網が完全に崩された瞬間だった。そしてこれを合図に広島の猛攻が始まった。判断のスピード、パスの精度、こぼれ球の予測、どれをとっても福岡は広島に及ばない。

　この日の広島は駒野の怪我のため、今シーズン初めて試合開始から３－４－３システムを起用してきた。桑原を中心にした固いDF。左サイドから積極的に仕掛ける服部。巧みに出入りを繰り返して裏を狙う３人のFW。中盤の底ではサンパイオと森﨑（和）が巧みなボール捌きで福岡の隙を突く。福岡が中盤に網を張ればロングボールで、隙があればボールをつないで、そして守備網がほころびると左サイドから突破する。その攻撃は多彩で、福岡はただ守だけで精一杯の時間帯が続く。

　それでも福岡は粘りに粘る。サンパイオにいいようにパスを回されたが、最後のところでは身体を寄せて凌ぎ、千代反田を中心とする最終ラインも安定感を見せてロングボールを跳ね返す。ゴール前のピンチにはなりふり構わずボールを跳ね返した。そして０－０のまま迎えた後半、指揮官は「立ち上がりの15分が勝負」と指示を出す。そして48分、ベンチーニョがヘディングシュートを放つ。さらに52分、森﨑（浩）からボールを奪ったベンチーニョが決定的なチャンスを作った。福岡の反撃が始まる。

　広島は明らかに運動量が落ちている。中盤のプレスは甘くなり、動きが減ったためにパスも回らない。左サイドの服部も、まるで別人のように低く構えたまま。前半、自陣に閉じ込められていた福岡がボールを回して広島陣内に攻め込むシーンが目立ってくる。福岡に勝機があったとすればこの時間帯だった。しかし、守備は整備されつつあるものの、まだ攻撃の形を作りきれない福岡にゴールチャンスは生まれない。そして15分が過ぎ、試合はこう着状態に陥った。

　しかし、押し気味に試合を進めたのはやはり広島。ポジションを修正し、新しい選手を投入して福岡の息の根を止めにかかる。福岡はGK水谷がファインセーブを連発し、ゴールライン上からボールを蹴りだすなど、ギリギリのところでボールを跳ね返す。だが、広島の攻撃は確実に福岡を追い詰めていく。そして79分、ペナルティエリアの外側で高く跳ね上がったボールに服部が左足ボレーであわせると、絶妙なコースに飛んだボールがゴールネットを揺らす。さらにロスタイムにはカウンターから２点目をゲットして福岡を突き放した。

　広島は強かった。しかも、その強さは守りに守ってJ1昇格を果たした大分とも、攻めに攻めてJ1復帰を果たしたＣ大阪とも異質のもの。J2特有のロングボールに頼る攻撃ではなく、ボールをしっかりとつないでビルドアップする質の高いものだった。スーパースターがいるわけではないが、11人が遜色なく動いてチームとしての力をフルに発揮している。ボールの出所を意識したポジショニング、こぼれるボールを予測してボールの落下点に移動する等、ボールを持たないところでの動きもJ2レベルをはるかに上回っていた。

　J2は44試合の長丁場。さすがの広島も足踏みするときは必ず来るだろう。しかし、この強さは簡単には崩れそうにない。25得点という結果を見れば攻撃的な印象も受けるが、広島は決して攻撃重視のチームではない。組織力の高さと、決まりごとを淡々とこなしていく能力の高さ。そして苦しくなっても、平然と基本動作を繰り返しやってのけるところに本当の強さの秘密がある。その結果の９連勝。楽でないように見えて終わってみれば完勝する。これは本物の強さの証だ。

　一方、破れた松田監督（福岡）の記者会見は歯切れの悪いものになった。現時点では、これ以上どうしようもない、そんな雰囲気が漂う記者会見場では記者たちの質問も少なかった。決定機は４度、得点のチャンスはあった。しかし、たった４回のチャンスだけでは勝つことは難しい。誰もが認めざるを得ない大きな力の差。現時点での力は出し切った感が強い試合だったが選手たちは何を感じたのだろうか。この結果に激しく反発するようなら、これからの楽しみがあるのだが・・・。

● 小野監督（広島）記者会見

● 松田監督（福岡）記者会見

（アビスパ福岡）			（サンフレッチェ広島）
	GK	水谷雄一		GK	下田崇
	DF	平島崇　藏田茂樹（70分／川島眞也）　千代反田充　立石飛鳥		DF	リカルド　桑原裕義　上村健一
	MF	宮崎光平　篠田善之（80分／宮原裕司）　原田武男　アレックス		MF	李漢宰（60分／茂木弘人）　森﨑和幸　サンパイオ　服部公太
	FW	林祐征（76分／太田恵介）　ベンチーニョ		FW	森﨑浩司　大木勉（76分／高木和正）　高橋泰（83分／八田康介）

※このレポートは「ONLINE MAGAZINE　2002CLUB｣に掲載されたものです。

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●	小野監督（広島）記者会見
●	松田監督（福岡）記者会見