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| 勝利を願うフラッグ。しかし、選手は戦う姿勢すら見せられなかった。 |
2003Ｊリーグ ディビジョン２ 第29節 サガン鳥栖vs.川崎フロンターレ
2003年8月23日（土）19:04キックオフ 鳥栖スタジアム 観衆：4,002人 天候：晴
試合結果／サガン鳥栖０−２川崎フロンターレ（前０−１、後０−１）
得点経過／［川崎］長橋（36分） ジュニーニョ（77分）
取材・文／中倉一志
キックオフ時点での気温は29.6℃。おまけに湿度は68%。この日のナイターは選手にとっては厳しいコンディションの試合だった。また、選手に疲労が蓄積されている時期でもあり、パフォーマンスが上がらないのも仕方のない面もあった。しかし、その一方で、この時期をきちんとした形で取り組まなければ、シーズン終盤になって大きなツケが回ってくることも確か。厳しいコンディションの中で、どれだけ自分たちのサッカーが出来るかがポイントになる試合だった。
しかし、残念ながら両チームの戦う姿勢からは、そういった意識を感じることが出来なかった。見ていて感じられたのは、厳しいコンディションに選手たちが相当しんどい思いをしているということだけ。チームの立ち直りを信じ、必死の声援を送る鳥栖サポーターにとっては物足りない試合だったことだろう。また、勝った川崎Ｆにしてみても、ただ勝点３を積み重ねたという以外に何もない試合だった。
特に川崎の動きは最悪に近かったのではないか。「攻撃にしても、DFにしても、やろうとしていることがほとんど出来ていない」と石崎監督（川崎Ｆ）の言葉も手厳しい。両ＷＢは低い位置にとどまったまま。ＤＦラインも押し上げることが出来ない。その結果、中盤でプレスをかけられず、鳥栖にボールを支配された。攻撃といえば、前に張るホベルチと、裏へ飛び出すジュニーニョに長いボールを蹴るだけ。２人でやってくれと言わんばかりのサッカーだった。
しかし、そんな川崎Ｆの状況に付け込めないのが今のサガン鳥栖。中盤の主導権争いで優位に立ち、何度も攻めの形を作るもののフィニッシュに持ち込めない。連携も決していいとは言えず、持ち味のサイド攻撃も姿を隠したまま。結局は川崎Ｆにボールを奪われた。そんな試合は、中盤を行ったり来たりするだけ。36分に、川崎Ｆのジョニーニョが右サイドを崩し、その折り返しを長橋が決めて川崎Ｆが先制したが、これといった見所のないままに前半が終了した。
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| キックオフ前にフラッグを掲げて選手を鼓舞する川崎Ｆサポーター。 Ｊ1昇格の夢は届くのか？ |
「ＦＷに、もうワンテンポ早くボールを出し、ＦＷは、もうワンテンポ早く動き出そう」。石崎監督は、動かない選手たちに全員でボールを運ぶよう指示を送った。
確かに両チームとも、立ち上がりは多少前に出る構えを見せた。５分には鳥栖が、10分には川崎Ｆが、それぞれ得点チャンスを迎えた。だが、その後は前半のリプレイのようなプレーが続く。動けず、連携できない選手たち。試合は、そのまま時間だけが過ぎていく。
特に、ビハインドを負っているはずの鳥栖のパフォーマンスは、上がらないどころか、さらに悪化。攻めに出ても個人突破に頼る以外に道がなくなっていく。流れを変えるために投入された川崎も十分に持ち味を発揮できないまま。そんな状況では、ボールを持って攻めに出ても、いつのまにか川崎Ｆの選手に囲まれてボールを奪われることを繰り返すしかない。そして32分。川崎ＦがＰＫを決めたところで事実上の決着はついた。
川崎にとっては、最悪とも言える状況の中で勝点３を積み重ねることが出来たのは、非常に大きかったかもしれない。しかし、「どういう環境であろうときちっと出来ていかないと、中々いいチームに離れないんじゃないか」と石崎監督も語ったように、J1昇格の最低条件は、厳しい状況の中で戦う術を身につけることだろう。J1昇格争いも残すは15試合。気持ちを切り替えていかないと、思わぬところで足元をすくわれかねない。次節にどこまで建て直せるか、注目したいところだ。
さて、またも敗れた鳥栖。千疋監督の記者会見は歯切れが悪いものだった。クラブが厳しい環境の中で戦っていることは誰もが承知している。しかし、ここまで勝てないチームではない。なぜ戦う気持ちが見えない試合が続くのか、なぜ選手のパフォーマンスが上がらない試合が続くのか。いくらなんでも、そろそろ根本原因から目をそらさない勇気を持つときだ。クラブとしてやるべきことをやらなければ、チームに勝利の女神が微笑むことはない。
| ● | 石崎監督（川崎Ｆ）記者会見 |
| ● | 千疋監督（鳥栖）記者会見 |
