それぞれの課題を抱えたセカンドステージ：市原がＧ大阪に辛勝！
2003Ｊリーグ　ディビジョン１　２ndステージ第２節　ジェフユナイテッド市原vs.ガンバ大阪

2003年8月23日（土）18:34キックオフ　市原臨海競技場　観衆：6,747人　天候：晴
試合結果／ジェフユナイテッド市原２−１ガンバ大阪（前１−０、後1−1）
得点経過／［市原］サンドロ（15分）、ミリノビッチ（55分）、［Ｇ大阪］マグロン（66分）


取材・文／佐内豊

　夏休みも終盤を迎えた市原臨海競技場は多くの子供達で賑わった。ゴール裏では規模は小さいながら国際色豊かな屋台が出展し、昨年のワールドカップを思い出させるような光景が繰り広げられた。あちこちでビールを飲みながら、スパイシーなスナックを楽しむファンの笑い声があちこちから聞こえる。選手にはつらいが、やっと夏らしくなった気候に会場は盛り上がっている。前節、悪い内容ながら神戸に競り勝ったことがファンをリラックスさせているのだろう。

「前半の15分がすべてだった」と西野監督が試合後に語ったように、立ち上がりは圧倒的にＧ大阪が主導権をにぎった。立ち上がりの４分、左CKをマグロンが決定的なヘディングシュートを放つが惜しくもクロスバーにはじかれる。13分、右CKから大黒の決定的なヘディングシュートはGK櫛野がファインプレーでしのぐ。Ｇ大阪がいつ先制してもおかしくないと思われる展開がつづく。

　しかし先制点をあげたのは市原だった。15分、中盤でボールを受けた崔龍洙が独特のリズムのドリブルでゴール前に迫りシュートチャンスを狙う。右にサンドロがDF裏を狙いながら飛び込むタイミングを計っている。シュートかパスか。スタジアムに一瞬緊張が走る。パス！サンドロがDFの前にうまく飛び出すのと同時に、崔龍洙から絶妙のタイミングでラストパスが通った。これをサンドロが難なくゴール隅に決めて、市原が先制。

　とにかくＧ大阪は市原を攻めきれない。前節からの新布陣（マグロンがワントップ、二川と大黒がシャドー）をこの日も採用。ＤＦから中盤の底に上がった山口が遠藤とともに中盤を制圧した。シュート数（市原４、Ｇ大阪10）から明らかなように圧倒的にゲームを支配した。しかし最後の詰めが甘い。「このジェフを崩せないようじゃ話にならない」と指揮官を嘆かせるような展開のまま前半が終了した。

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　自軍のふがいない攻撃にしびれを切らした西野監督は、後半頭から新井場に代えて吉原を投入し反撃に出る。しかしながら、司令官の思惑ははずれ、追加点をあげたのは市原。55分、右サイドからのFKの場面、村井の左足から放たれた低く鋭く落ちるボールはゴール前を抜け、飛び込んだミリノビッチが腿で押し込んだ。

　２点先制されたＧ大阪は、なおも攻撃的な選手を投入して反撃を試みる。62分、アウトサイドの橋本に代えチキアルセ。クロスを放り込むＧ大阪、耐えてカウンターを狙う市原という図式が繰り広げられる。それぞれ数度の決定機を逃したあと、得点したのはＧ大阪。66分、マークを巧妙にはずしてDF裏に抜けた遠藤がふわりとしたラストクロスをゴール前に送ると、マグロンがヘッドで綺麗に合わせて２−１とした。

　この得点で勝負の行方は判らなくなってきた。72分、Ｇ大阪は大黒に代え中山を入れて攻勢を強めれば、市原も74分、村井に代え茶野を投入。守りに入ったかと思わせたが、チキアルセのマンマークに専念させる戦術的な交代だった。Ｇ大阪の攻撃が収まった81分には大柴（サンドロ）、84分には林（羽生）を投入し、再び攻撃的な姿勢を誇示する市原。両チームとも３人の交代選手を使いきった総力戦は、ベンチワークの戦いとしても見どころがあった。両軍とも決定的な場面が多いスリリングな展開だったが結局、市原がリードを守りきりＧ大阪を振り切った。

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　ファーストステージ終盤以来、市原本来のサッカーが出来ていない。正確にいえば、させてもらえていないのかもしれない。前からのプレスによってパスコースを限定させ相手ボールを奪取して速攻というのが一つのパターンだったが、ここ数試合、そのようなシーンは皆無だ。マンマークを基本とする市原の守備に対して、対戦チームは巧妙にその隙を狙っている。相手の激しいポジションチェンジによって出来たスペースを狙う相手中盤の選手の動きに、この日のボランチ（阿部・佐藤）は忙殺され、攻撃の起点になることは僅かだった。相手に研究されたこれまでのパターンから一歩抜け出すために、オシム監督の次の一手は？市原の守備ブロックに注目だ。

　Ｇ大阪にとっては惜しい試合を落とした。立ち上がり圧倒的にゲームを支配しながら得点できなかったのが大きかった。しかしながら、山口をボランチにあげた新布陣も効果的で、遠藤とともに多くのチャンスを演出していたのが印象的だ。マグロンという強力なセンターフォワードを有する攻撃陣は驚異だし、遠藤・山口の両ボランチはアグレッシブでクレバーだ。課題は最終ラインの安定性ぐらいか。惜しい星を落としたがセカンドステージの台風の目になる要素は十分にある戦いぶりだった。