圧倒的な攻撃力。ブラジルが２度目の優勝を飾る
FIFAコンフェデレーションズカップ2005　ファイナル　ブラジル代表vs.アルゼンチン代表

2005年6月29日（水）8:45キックオフ　バルドシュタディオン（フランクフルト）　観衆：45591人
試合結果／ブラジル代表４−１アルゼンチン代表（前２−０、後２−１）
得点経過／［ブラジル］アドリアーノ（11分）、カカ（16分）、ロナウジーニョ（47分）、アドリアーノ（63分）、［アルゼンチン］アイマール（65分）


文／中倉一志

「我々は勝利に値するチームだったと思う」。試合後、パレイラ監督は胸を張って答えた。グループリーグでは１勝１分１敗。準決勝ではドイツと接戦を演じる等、数字だけを見れば決して他を圧倒したわけではない。しかし、全ての試合に共通していたのはブラジルの圧倒的な底力。スコアにかかわらず、実際は他を寄せ付けない実力の差を見せ付けて当然のように決勝戦に進出。そして爆発的な攻撃力を見せてアルゼンチンを圧倒した。

　一方、「望んだのとは全く正反対の結果。逆にブラジルにはすべてがうまくいった」とはペケルマン監督。クレスポ、アジャラの攻守の要を欠き、試合毎にメンバーとシステムを変えたアルゼンチンにとっては、テストの意味合いを持った大会だったが、ロベルト・カルロス、カフーらの主力を温存していたのはブラジルも一緒。さすがに、ここまでブラジルにやられるとは思っていなかっただろう。しかし、本番はＷ杯。この大会の結果が将来を約束するものではないことは、両監督とも十分に知っているはずだ。

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　ともに選手を試しながらも勝ち進んできたこの大会。しかし、南米の両雄同士の決勝戦となれば、その意味合いは大きく違う。緊張感に溢れる試合は、随所で激しいプレーが繰り広げられる。立ち上がりのペースは、ややブラジルか。ボールをしっかりと回してリズムを刻む。しかし、アルゼンチンも攻撃的だ。左サイドのソリンが絞ったポジションを取り、３バックの左に位置するブラセンテが高い位置まで上がってくる。実質的には２バックのようなシステムでブラジルゴールを目指す。

　そんな試合の流れを一気にブラジルに傾けたのはアドリアーノの一発だった。時間は11分、ゴール前やや右でボールを受けたアドリアーノは、スライディングタックルに来るエインセをひらりとかわすと、そのまま中央へ移動して左足を一閃。目にも留まらぬ豪快な一発がゴールネットを大きく揺らした。ゴール前でアドリアーノに前を向かせてしまったところで勝負あり。瞬間のスピードと、左足の振りの速さと、重量感溢れるシュート。もう誰にも止められない。

　主導権を奪ったブラジルは一気呵成に攻め立てる。追加点は16分。先制点が豪快な一発なら、２点目はブラジルらしいパス回しと高い個人技から生まれる。守備体系を整えるアルゼンチンの前でダイレクトパスをつないで、シシーニョの大きなサイドチェンジからホビーニョが中央に入ってきたカカへラストパス。カカはワンタッチで足元にコントロールすると、わずかに出来たスペースを見逃さずに右足を振りぬいた。コントロールされたシュートはゴール右上へ。ＧＫルクスは見送るしかなかった。

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　この２点目で事実上の勝敗は決した。余裕を持ったブラジルはバランスを取って守備を固め、前へ出ようとするアルゼンチンからボールを奪うと、今大会で絶妙なハーモニーを奏でるロナウジーニョ、カカ、ホビーニョ、アドリアーノの４人であっという間にアルゼンチンゴールへ迫る。そして３点目が生まれたのは後半開始直後の47分。右サイドをオーバーラップしてきたシシーニョがカカからボールを受けてセンタリング。中央へ走りこんだロナウジーニョが難なく右足インサイドで合わせた。

　ブラジルの攻撃はまだ終わらない。時間は63分、ロナウジーニョが左サイドにアルゼンチンを引き付けておいてからサイドチェンジ。シシーニョからの狙い済ましたクロスが巧みなポジショニングでフリーになっていたアドリアーノへ。これをヘディングシュートでゴールマウスに流し込む。その直後の65分、アルゼンチンは途中出場のアイマールが頭から飛び込んで１点を返したが、試合の流れは変わらないままだった。

　その後も、決定的なチャンスを演出して試合を支配下に置くブラジル。意地を見せたいアルゼンチンも81分にはソリンが、84分にはテベスが決定的なシュートを放つが、これはＧＫジーダがファインセーブを見せてゴールを許さない。やがて試合は３分間のロスタイムへ。勝利を確信したブラジルは控選手がベンチの前でビブスを振り回して踊りだす中、ブラジルの２度目の優勝を告げるホイッスルが鳴った。

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　６月８日のＷ杯南米予選でアルゼンチンに１−３と屈辱的な敗戦を喫したブラジルにとっては、その雪辱を果たすには十分すぎる完勝だった。際立ったのは、その攻撃力。ゴール前での一瞬のチャンスを確実にゴールに結びつける決定力が優勝をもたらした。加えて、シシーニョ、ジウベルトの両ＳＢの活躍も大きな収穫。大会を通じてはつらつとしたプレーを見せたホビーニョも十分使える目途が立った。そして大会を欠場しているロナウド、ロベルト・カルロス、カフーらも控えている。パレイラ監督のうれしい悲鳴が聞こえてきそうだ。

　今大会でのブラジルとの比較で言えば、アルゼンチンは個人能力という点で際立った選手が少なかった。特にゴール前での決定的な仕事という意味では、ブラジルとの差は認めざるを得ず、それがそのまま決勝戦の結果につながったと言える。しかし、主力を欠いた中で、選手とシステムを試しながら決勝戦までたどり着いたのは収穫。ライバルであるブラジルに敗れた悔しさは残るだろうが、来年のＷ杯本大会に向けて、意義のある大会であったことも間違いないだろう。