北中米の雄・メキシコ、世界チャンピオンを破り、セミファイナル進出。
FIFAコンフェデレーションズカップ2005　グループＢ　メキシコ代表vs.ブラジル代表

2005年6月19日（日）20:45キックオフ　ハノーバー・シュタディオン（ハノーバー）　観衆：43,677人
試合結果／メキシコ代表１−０ブラジル代表（前０−０、後１−０）
得点経過／［メキシコ］ボルヘッティ（59分）


文／西森彰

　昨年行なわれたコパ・アメリカ2004・ペルー大会では、クォーターファイナルで４対０とメキシコを壊滅させたブラジル。その時のメンバーは、Ｂ代表とでも言える構成だった。疲労を考慮して主力の一部を召集しなかったものの、ロナウジーニョ、カカら、それなりのメンバーを揃えている今回のブラジル。初戦でギリシャを寄せ付けなかった内容から、この日、セミファイナル進出を決めるものと思っていたが…。

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　９分に生まれたロビーニョのシュートを皮切りに、ブラジルの攻撃が次々にメキシコのゴールを襲う。最前線に張るのは、コパ・アメリカの対戦で２ゴールを奪っているアドリアーノ。だが13分、18分とGKと１対１になりかける決定機にゴールを奪えず、23分、ゴール正面からのシュートも枠を捉えられない。ロナウジーニョ、カカらのゲームメイクはさすがだが、メキシコも自陣に人数をかけて、バランス良く守る。

　そして28分、モラレスがサイドから鋭いクロスを入れると、飛び込もうとするボルヘッティをホッキ・ジュニオールが抱えた。PKだ。ファールを受けたボルヘッティは自らPKスポットに向かう。鼻の頭を撫でた右手を胸に降ろし、俯きながら呟き、再び握り締めた右手を口につけて、空に向かって開く。そして、蹴った。ゴールの真ん中に決まる。しかし、ボルヘッティのキックを前に、フォンセカがペナルティエリア内に片足を踏み入れており、蹴り直しの判定が下った。

　再びボルヘッティはおまじないを繰り返してキック。ゴールバーが弾き返した。しかし、また主審の笛。今度はブラジルのエメルソンが侵入していた。ゴールを取り消したフォンセカ、さらに蹴り直させてしまったエメルソン。気まずくふたりが見守る中、もう一度、ボルヘッティは呪術を行なう。しかし、２度の蹴り直しに飽きたのか、最後は神様がそっぽを向いた。純粋な１対１の勝負はPKストッパー・ジダが制し、無得点。

　肝を冷やしたブラジルは、39分にもアドリアーノがメキシコDFラインの裏をとって独走するが、このチャンスも決めきれず。ロスタイムにもカカ、ロビーニョが粘ってフリーの場面を迎えたアドリアーノだが、またもやこれを吹かす。ブラジルにとってはフラストレーションが溜まる展開で、前半はスコアレスドロー。

　ハーフタイムを挟んでメキシコのラボルペ監督が動く。フォンセカに代えてルイス・ペレスを入れる。早めの選手交代で、ブラジルからイニシアチブを奪い取ったメキシコは、59分、この日、唯一のゴールを奪う。左コーナーキックのハイボールに３人のメキシコ人がフリーで飛ぶ。最終的に合わせたのは、PKを失敗していたボルヘッティ。自分のヘディングシュートが、ブラジルのゴールネットを揺らしたことを確認すると、さんざん見せていた神様への感謝のポーズをとった。

　不動の両翼を欠くカナリアは、中央突破に拘るあまり、このメキシコのきめ細かい網に絡めとられていった。虎の子の１点をGKサンチェスの好セーブなどで守りきったメキシコが、２連勝でセミファイナル進出決定。国内メディアや代表OBとの対立も囁かれるアルゼンチン人のラポルタ監督は、宿敵ブラジルを破って体制を固めた。

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　ブラジルは序盤に掴んだ試合の流れを、自らのミスとメキシコの粘り強い守りによって手放してしまった。ロナウジーニョやカカがフリーで持った時のアイデアはさすがだし、アドリアーノの身体能力も凄い。しかし、カフー、ロベルト・カルロスを欠いたため、得意の分厚いサイドアタックは今ひとつ。今大会、パレイラ監督がこのポジションの戦力発掘に躍起になっているのも理解できる敗戦だった。

　メキシコとしても完勝と言える内容ではなかった。シュート数８対19（枠内５対６）、ボールポゼッションでも45％対55％。マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたのがGKのサンチェスだし、アドリアーノのブレーキに助けられた感もある。しかし、各所でブラジルの選手たちに１対１を挑まれながら、メキシコの選手たちは背を向けず戦い、そして負けなかった。これが最大の勝因だ。

　１対１の勝負で負けないことを前提にするのはジーコ・ジャパンも同じ。今夜、青きイレブンはメキシコ同様にブラジルの才能を相手に五分以上の戦いが求められる。現在のファイティング・スタイルが世界に通じるかどうかの指標になるはずだ。