魅せた３発。ブラジル、欧州チャンピオンを寄せ付けず
FIFAコンフェデレーションズカップ2005　グループＢ　ブラジル代表vs.ギリシャ代表

2005年6月16日（木）20:15キックオフ　ツェントラルシュタディオン（ライプツィヒ）　観衆：42507人
試合結果／ブラジル代表３−０ギリシャ代表（前１−０、後２−０）
得点経過／［ブラジル］アドリアーノ（41分）、ホビーニョ（46分）、ジュニーニョ（81分）


文／中倉一志

　これがブラジル。その力を見せ付けるような３つのゴールだった。１発目は41分、決めたのはアドリアーノだ。ロングフィードを右に流れて受けたアドリアーノは、キリヤコスと対峙しながらボールを２度つついてゆっくりと左へ移動する。もう一度作り直すかと思われた瞬間、その左足が唸りをあげた。電光石火の早業と目にも留まらぬ豪快なシュート。ニアサイドのゴールネットが大きく揺れると、スタンドからどよめきが起こった。

　２発目はホビーニョ。ハーフウェイライン手前でボールを受けたジウベルトがドリブルを開始。待ち構えるギリシャの選手を次々とかわしてペナルティエリアへ入り込んでシュートを放つ。そのシュートが右へ外れたと思った瞬間、視界の外からトップスピードで飛び込んできたホビーニョが右足で合わせた。そしてとどめの３点目はジュニーニョ。ゴール手前約20メートルの地点から放ったＦＫが壁を越えて大きく曲がり、そして落ちた。難敵ギリシャを一蹴する３発。ブラジルは、その強さを見せ付けた。

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　ともに前への意識を強くして始まった試合は、やがて落ち着いた試合展開へと移行していく。ブラジルのフォーメーションは４−４−２。最前線は１トップ気味のアドリアーノと、その周りを動き回るホビーニョの２人。２列目からロナウジーニョとカカが隙を狙い、中盤の底ではエメルソンとゼロベルトがバランスを取る。両サイドからオーバーラップの機会を窺うのはシシーニョとジウベルト。最終ラインにはルッシオとホッキ・ジュニオールの２人が君臨する。高いテクニックと流れるようなバス回しでゴールの機会を窺う。

　ギリシャの布陣はブリザスを１トップ気味に置く３−４−３。しかし、彼らのフォーメーションが流動的なことはサッカーファンにはお馴染みだ。相手ボールの時には左サイドのヤナコプロスが低い位置まで戻って守備の枚数をそろえて粘り強く守り抜き、ひとたびマイボールにすれば３トップの前線と両サイドが駆け上がって鋭いカウンターを仕掛け、そしてセットプレーから得点を狙う。ブラジル相手ではそれほど攻撃の機会は多くないが、それでも粘り強い守備は健在。ブラジルに決定機を与えない。

　そんな展開も、30分を過ぎた辺りからブラジルの攻勢が強まる。33分、ホビーニョの強烈なシュートが左ポストをかすめ、36分にはカカのミドルシュートがＧＫニコポリディスを襲う。そして41分、ギリシャの、そして４万を越す観衆の度肝を抜くアドリアーノのシュートが決まる。しかし、前半で１点のビハインドはギリシャの想定の範囲内。慌てずにゲームを進めるギリシャはロスタイムにハリステアスが際どいシュートを放ち、試合はこれからとアピールする。

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　しかし、そんなギリシャの気持ちを、後半開始早々にホビーニョが打ち砕く。ホビーニョの才能を感じさせるブラジルの２点目が決まったのは、まだホイッスルが鳴ってから40秒ほどの時間。後半の開始から、セイタリディス、ブリザスに代えて、ビントラ、パパドプロスを投入して反撃体制を整えたばかりのギリシャの出鼻をくじくには、これ以上ないゴールだった。そして、この一発でギリシャは明らかに意気消沈。ここからは一方的なブラジルペースで試合が進む。

　追加点で勢いに乗るブラジルは、ギリシャの息の根を止めるかのように一気にギリシャに襲い掛かる。面白いようにボールを回し、次から次へと選手が後方から飛び出してきて組み立てる攻撃は迫力満点だ。そして後半の10分を過ぎた辺りからはゲームをコントロールし始めた。高い位置からプレスをかけてギリシャからスピードを奪い、ギリシャが出てきたところを捕まえてカウンター気味にボールを回してゴールに迫る。そして、相手の人数が揃っているきはボールを回して時間を使う。もうギリシャに反撃の余地はなかった。

　ギリシャからはEURO2004で見せた粘り強さも、連動性も、スピードも、そしてセットプレーの強さも消えた。前半に激しくボールを回されて体力を必要以上に消耗したのも、その原因だろう。そして、前半の終了間際と後半開始早々にブラジルが奪った２ゴールが精神面にも大きなダメージを与えたようだ。そして81分、途中出場のジュニーニョがＦＫを直接叩き込んでギリシャに止めを刺した。

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　当初、若手中心で今大会に参加することを表明していたブラジルだが、結局はほぼフルメンバーで参戦してきた。カフー、ロベルト・カルロスらのベテランや、ロナウドが参加していないとはいえ、中心選手をそろえての参加はブラジルの優勝に対する強い気持ちを表すもの。その意気込み通り、初戦はギリシャに完勝した。チーム状況はまずまず。今大会でも「らしさ」をふんだんに見せてくれることになりそうだ。

　さて敗れたギリシャ。初戦の敗退は、グループリーグ突破のためには厳しいスタートと言わざるを得ないが、相手はブラジル。敗れることも、ある意味では想定の範囲内の出来事だ。堅守を誇るチームながら３失点は意外な結果だったが、ゴールはどれもスーパーゴール。必要以上に悲観する必要はないだろう。大切なのは気持ちの切り替え。ギリシャは残り２戦にグループリーグ突破をかける。