大宮、Ｊ１初戦にうれしい初勝利！
2005Ｊリーグ　ディビジョン１　第１節　ガンバ大阪vs.大宮アルディージャ

2005年3月5日（土）15:05キックオフ　万博記念競技場　観衆：16,168人　天候：晴
試合結果／ガンバ大阪０−２大宮アルディージャ（前０−０、後０−２）
得点経過／［大宮］桜井（81分）、森田（89分）


取材・文／貞永晃二

　３月５日土曜日。サッカーを愛する人たちが待ち望んだＪリーグ開幕の日。Ｊ１は新たに川崎Ｆ、大宮の昇格２チームを加え全18チームとなり、１シーズン制という大きな改革を加える年となった。第1節の９試合でトータル22万５千人がスタジアムに詰め掛けた。関西では５日にＧ大阪が、翌６日に神戸とＣ大阪がそれぞれ開幕戦を戦った。

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　昨季浦和に次ぐ得点（69点）をあげた攻撃力を誇るＧ大阪にＪ２最小失点（38点）と鉄壁を誇った大宮が挑戦する初顔合わせ。試合は予想通りＧ大阪が大宮を押し込む展開となる。新戦力アラウージョを前線で大黒と並べ、フェルナンジーニョがかき回し役となる攻撃。左アウトサイドに位置する二川とボランチ遠藤からの長いパスが大宮伝統（？）のフラットな４バックラインの背後をつく。

　トニーニョと奥野を中心とする大宮DFは、懸命に守りクリアで逃げるがことごとくＧ大阪に拾われる苦しい時間が続く。トップに起用した新加入のクリスティアンに精彩がなく、クサビの受け手となれないことも戦いをさらに苦しくする。攻めでは二人の新加入選手、藤本と桜井にボールが入ったとき、うまく押し上げができ、サイドからのオーバーラップが促される。しかし、クロスはＧ大阪ディフェンスに脅威を与えるまでに至らない。

　押し込みながらもはね返される展開に、20分前後からＧ大阪は今度は持ち前のパスが回り始める。しかし、まったくシュートで終われないＧ大阪。エース大黒も強引に打った一本だけ。もちろんコンパクトな大宮の３ラインによるチームディフェンスの成果でもあるのだが、それよりもＧ大阪のラストパスが正確性を欠いた印象が強い。スコアレスというよりも、「シュートレス」というべき前半だった。

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　後半もＧ大阪がキープする時間が続く。大宮は必死に耐え続けるしかない。51分、チームのオフィシャルグッズ売り上げにも大貢献しているという大黒にビッグチャンスが来る。やはりパスの供給元はナンバー10・二川。大黒の柳沢敦ばりの鋭い動き出しにピタリと合わせられるのはやはり彼だけのようだ。しかし大黒はこの絶好機をフイにしてしまう。背後からの浮き球という難度の高いシュートだったのだが。

　三浦監督のベンチ前での動きが激しさを増す。先手を打って早めに交代か。前線？中盤？いやその両方だ。緊張のためか能力を発揮できない金澤から斉藤へ、シュートゼロのクリスティアンをトゥットへと連続して送り込む。だが、Ｇ大阪の攻撃は激しさを増すばかり。しかしサイドアタッカー不在のＧ大阪の中央からのごり押し攻撃は相手にも守りやすいのではないか。西野監督は森岡、渡辺をサブに入れながらなぜ交代に出ないのだろうか。

　遠藤が足の不安を抱えるためキッカー役を務めるフェルナンジーニョからのFK、CKが大宮ゴール前を襲う。しかしこれも大宮の守備リズムにはまったかのように得点には結びつかない。63分、大黒のドリブルからアラウージョへ、しかしシュートはGK荒谷がブロック。どうしても入らない。Ｊ２でも前半はガマン、後半勝負という戦い方を常道としてきたのか、徐々にペースを握り返す大宮。69分には前がかりのＧ大阪のスキをつきマーカスの華麗な右足アウトサイドによるスルーパスがトゥットへ通る。守るのは實好のみ。大きな切り返しでかわしたトゥットだったが、シュートはGK松代が飛び出しストップする。

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　ここまで意識的に動かなかったとしか思えない西野監督の切った札はフェルナンジーニョに代えて左サイドの児玉。二川を中央で使ういつものやり方か。だが訪れるチャンスも大黒、遠藤とつぶしてしまう。次にDF實好を引っ込め、吉原投入で前線の人数を増やす西野監督。皮肉にもこの交代直後の大宮のカウンターが試合を動かす。

　81分、右にドリブルで進んだ藤本から中央の桜井へ。桜井はスルーし右に飛び出す。トゥットはDFを引きつけてその桜井へ。ワンフェイクで対面の宮本をかわした桜井の右足シュートは松代の手をかすめてゴールへ飛び込んだ。吠える桜井。少数ながらＪ１デビューに駆けつけたオレンジのサポーターが芝生席で爆発した。

　思わぬ終盤の失点に目の色を変えて攻めに出るＧ大阪。シジクレイを前線に固定し放り込みをかける。右から左からクロスが入るがトニーニョ、奥野の高さが活きる。しかし二川のクロスに合わせ、吉原がGKとの接触も恐れず飛び込みヘッド。きっと三浦監督でさえあきらめたであろうこのシュートは必死にゴールカバーに戻ったトニーニョの長い脚がラインすれすれで蹴り出すビッグプレー。スタジアムのビジョンは大きく「ＧＯＡＬ」と映し出す。しかしノーゴールなのだ。

　３分のインジュリータイム、Ｇ大阪DFを追い回す役割か、森田が桜井に代わってピッチに登場する。その森田が冨田からのパスで飛び出した藤本の折り返しをファーストタッチでごっつぁんゴール！。メインスタンドでは、試合を決める２点目に怒ったように席を立ち帰りを急ぐ人々。終了のホイッスルは駐車場かバスを待つ行列で聞いただろう。

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　まだ初戦だ。たかが34試合のうちの1試合。率にして３％にも満たない重さしかない試合。しかし、大宮の選手、スタッフの歓喜はなんだろう。この日のために長いキャンプ、苦しいトレーニングをこなしてきたのだ。Ｊ１を知らない選手も多く、相当なプレッシャーに飲み込まれていたはずだ。それらに打ち勝っての初勝利だ。今は喜べ、しかしまだ戦いは始まったばかりだ。しかしここからも何も恐れることはない。自信を持ち胸を張って戦えばよい。君たちは十分にＪ１にふさわしいチームであり、選手であることを証明できたのだから。

　思わぬ敗戦を喫したＧ大阪。西野監督が終盤まで動かなかったのは選手への信頼過剰、相手への認識不足のためか。あまりにも中央からの攻めにこだわりすぎた気がする。リスクを犯さずに容易に勝利が手に入るはずはない。リードされてからの攻撃がもっと早い時間帯でできたはずなのだ。それができるだけの戦力が評価されて優勝候補の末席にいるのがＧ大阪なのだ。チャンピオンチームのような受身の戦い方ではまた過去の失敗を繰り返してしまう。「熱き青の力」の結集を期待したい。さあ出直しだ。