初優勝まであと一勝！アルゼンチン、「欧州最後の砦」を陥落させ決勝へ
アテネオリンピック2004　準決勝　イタリアvs.アルゼンチン

2004年8月24日（火）18:00キックオフ　パンテサリコ・スタジアム　観衆：30,910人　
試合結果／イタリア０−３アルゼンチン（前０−１、後０−２）
得点経過／［アルゼンチン］テベス（16分）、ルイス・ゴンサレス（69分）、マリアノ・ゴンサレス（84分）


文／貞永晃二

　ここまでの４試合を４連勝、しかも13得点無失点という破竹の勢いのアルゼンチン。対照的に一方のイタリアは２勝１分１敗、６得点５失点という苦しみながらの勝ち上がり。もうひとつのセミ・ファイナルがパラグアイ対イラクとなったために、この試合が事実上のファイナルとされるのも無理のないことだろう。試合は攻撃のアルゼンチン対守備のイタリアという展開が予想されるが、アルゼンチンがここまであまりにも順調すぎるだけに、巧者イタリアに足元をすくわれる可能性も十分考えられた。

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　キックオフから中盤で激しくつぶし合う展開。その中で、まずイタリアがFKを素早く右に展開し、デ・ロッシが鋭いクロスボールを入れる。さらにカウンターからセンターサークル付近でアジャラをワンタッチでかわし入れ違ったジラルディーノがドリブル突進しシュート。失点にはならずともアルゼンチンDF陣はイタリアの人数をかけない攻めへの恐怖感を十分に味わったはずだ。

　しかしこの時間を過ぎればアルゼンチンが完全に試合を支配する。手始めにCKからエインセのヘッドが飛ぶ。ダレッサンドロ指揮下の「セレステ・イ・ブランコ」はとにかく運動量豊かで、面白いようにパスを回す。

　そして16分に早くも先制する。中盤から組み立てて、最後はダレッサンドロが右サイドで開いたロサレスへ。クロスはゴール前でワンバウンドし、フェラーリがヘッド・クリアをミスしテベスの目の前へプレゼント。真上から落ちてくるボールを少しバックステップを踏んだテベスがジャンプボレー！これぞジャスト・ミートというシュートはネットを突き破りそうな球速。マリ戦で大活躍したGKペリッツォーリもここはノー・チャンス。大会７得点目のテベスは奇妙な振りで歓喜の舞いを踊る。

　イタリアにはまだ70分以上残されている。しかしトップ下に位置したピルロが、反則を巧みにまじえたマスケラーノの密着マークでピッチから「消され」、ジラルディーノへのホットラインは「不通」状態に。攻められないイタリア。そして一度アルゼンチンに奪われると取り返すにはひと苦労となる。デルガド、ダレッサンドロのミドルはイタリア・ゴールを襲い、さらに左サイドの守備でも貢献するキリ・ゴンサレスまでが駆け上がり、ダレッサンドロの落としからシュートを見せた。前半終了間際にはダレッサンドロ、ルイス・ゴンサレス、テベスが美しく連係し、最後はダレッサンドロのシュートチャンス！ここはイタリアDFが必死に戻ってことなきを得た。

　ピルロにスポットが当たったのはFKを正確にボボのヘッドに合わせた26分。これはさすがの精度だったが決まらず、40分の直接ゴールを狙ったFKはフレームを空しく外れていった。

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　イタリア・ジェンティーレ監督は押され続けるのは覚悟していたはず、彼にとって一点差で前半を終えたのはまずまずの結果といえるだろう。そして後半開始からリフレッシュとイエローカードを考慮しデ・ロッシ、スクッリからドナデル、デル・ネーロに同時二名交代の手を打ってきた。

　そして開始早々、ピンツィのロング・ドリブルからチャンスを作り代わったばかりのデル・ネーロが左サイドを上がりクロスを入れる。ターゲットはエース・ジラルディーノ。しかしほんのわずか合わない。アルゼンチンは前半の戦い方を維持するだけ。ダレッサンドロのシュート、CKからのこぼれをコロッチーニのシュートと厚みのある攻撃は休むことを知らない。

　しかし攻めるしかないイタリアは早めの高い位置での守備が功を奏し始める。53分、左サイドからの崩しであわやPKというシーンを作る。ピルロ、デル・ネーロ、ジラルディーノとつなぎ、ボックスへ流したボールに右から上がったボネーラがシュートチャンスをつかむが戻ったDFがからみ転倒！しかしホイッスルは鳴らない。その後もCKからピンツィがヘッドで狙うがバーを越える。

　アルゼンチンはロドリゲスを入れて４バック気味にし、サイドのケアを図るが、イタリアはアルゼンチンのシュートミスにも助けられつつ、しっかりとした守備でカウンターを仕掛ける。同点も近いと思われたが、好事魔多し。69分にアルゼンチンの追加点が決まってしまう。コロッチーニに交代したメディーナがピルロから奪取したボールをテベスにつなぐ。ターンして前進したテベスはタイミングを計り右を並走するルイス・ゴンサレスへ。ロドリゲスにアタックするDFはいない。ニアのポスト、GKペルッツォーリの左肩上を抜いたボールはイタリアにとって致命的な２失点目となった。

　まだ残り20分、しかし20分。伝統的にイタリアはリードして何とか逃げ切るという形の試合が得意だ。日本戦は狙い通り逃げて、ガーナ戦は追いつくのがやっと、パラグアイには逆に逃げられた。この相手に２点差はやはり大きすぎる。しかし、試合は終わってはいない。DFボボのミドルは惜しくもGKルクスに防がれる。

　アルゼンチンは決して無理をせず自分たちのできることをこなし、時間の経過を待つ。そして駄目押しのゴールシーンがやってくる。84分、中央のダレッサンドロからテベスへ。右から突進したテベスは左から詰めるマリアノ・ゴンサレスを見逃さない。グラウンダーでGKの取れないボールをマリアノ・ゴンサレスは足を延ばして左足で決めた。

　絶望的な３失点を喫したイタリアの最後のチャンス、ピルロのシュートもGKルクスが押さえ、アルゼンチンは初優勝への階段をもう一段上がったのだった。

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　セリエＡ開幕を先延ばしにして準備したと言われるイタリアだったが、フル代表と同様に決定力には問題があったといわざるを得ない。傑出した点取り屋ジラルディーノとはいえ、頑強なアジャラには押さえ込まれ若さを暴露した。彼に頼るチームだけに勝敗に大きな影響を与えてしまった。

　５戦全勝、16得点無失点。これ以上望めないほどの数字を残してアルゼンチンは決勝へ進む。守備面も攻撃面もどこといって穴を見つけられないメンバー、適所にオーバーエージを配し、まさに磐石だ。このセレステ・イ・ブランコの志向する魅力あふれるフットボールに勝利の女神が微笑んでくれることを願いたいものだ。