またも「候補」の苦戦続く！韓国、ヨルダンGKの堅守崩せず！
AFC Asian Cup China 2004 グループリーグＢ　韓国vs.ヨルダン

2004年7月19日（月）18:30キックオフ　済南・山東省スポーツセンター　
試合結果／韓国０−０ヨルダン


文／貞永晃二

　優勝候補にあげられていた中国とサウジアラビアが、それぞれバーレーンとトルクメニスタンに苦戦を強いられ、結局引き分けに持ち込まれるという小さな波乱があった今大会。

　最大の「候補」韓国が３回目の優勝を目指し済南に登場した。86年メキシコ大会から５回連続でアジアを代表し、世界サッカーの祭典の舞台を踏んでいる韓国も、このアジアカップでは第2回大会（1960）以来優勝はなく、アジア大会でも86年が最後のアジア制覇である。　コエリョに代わり指揮をとるオランダ人・ボンフレール監督がどんなサッカーを見せるのか注目された。

　対するヨルダンは、６月に行われたワールドカップ予選でイランを敵地テヘランで１−０で降し注目されている。中東ではイラン・サウジに次ぐFIFAランク40位で、エジプト人・ゴハリ監督が率いる強固な守備を誇るチームという前評判である。

---

　ボンフレール監督は、ヨルダンの守備重視の戦い方を見越し４人のFWを前線に配する戦い方を選択した。トップに李東国を置き、その下に鄭�g鎬、薛�g鉉、安貞桓を並べた。そして韓国の激しい攻撃は安の左足ミドルで始まった。前線からの激しいチェイスで相手を追い込みボールを奪い、左右のスペースを使った攻めでヨルダンを自陣に押し込む。

　しかし、最初の決定的なチャンスはヨルダンに訪れるからサッカーは難しい。MFからのふわりとしたパスをDFの裏に落としダイレクトで折り返すと、シェルバイアがフリー！しかし空振り！惜しい先制機を逃してしまう。

　安がからみ鄭�g鎬の左ミドルが右に外れる。続いて安、李榮杓、薛�g鉉の連係で右サイドを破ってのクロスボール、鄭�g鎬のヘッドもワクをとらえられない。23分、薛�g鉉からのフィードを受けた安の強烈なドライブショットはGKシャバが鋭い反応で防ぐ。ヨルダンが安の奔放な動きを抑え切れない場面が続く。だが、序盤とは違いヨルダンはロングパスをうまく使い少ない人数でカウンターを仕掛ける。しかし試合を支配するのはやはり韓国。29分、大きなフェイントで右サイドを破った薛�g鉉のグラウンダーのプルバックをインサイドキックで狙った鄭�g鎬だったがボールはバーの上に消える。さらに李東国の直接FKもGKシャバが好セーブ。

　韓国は攻撃につぎ込む人数も多く、キープする時間も長く、攻撃のバラエティも豊かだがいかんせん決定力不足に泣く。ヨルダンの繰り出すカウンターもまたシュートがワクに飛ばず、36分のカセムの右足ミドルもポストぎりぎりに外れる。韓国はシュートがあまりに入らないためか、シュートチャンスにも打たず、さらに良いポジションにパスを回すシーンが増える。韓国の前半最後のチャンスは、安が鋭いアーリークロスをGKとDFの間に通す。合わせようと精一杯足を伸ばす薛�g鉉だったが、シュートにはならなかった。

---

　後半、韓国の攻撃は激しさを増す。48分、スローインから玄泳民が上げたボールを李東国が高いジャンプヘッド。しかしこれにもGKシャバが立ちはだかる。さらに李東国はスルーパスを受け大きな切り返しでDFをかわし左足カーブシュート、わずかにバーの上だ。前半よりも展開が早くなった韓国。

　残り30分を切りボンフレール監督が動く。玄泳民と多くのチャンスをフイにした鄭�g鎬に代えて金正謙と車ドゥリを入れる。一点さえ取れれば勝てる、その確信を支えに攻めに攻める韓国。李東国のすり抜けからのプルバック、安がワントラップする余裕からシュートするが、完全に乗ってしまったGKシャバがセーブ。安のドリブルから薛�g鉉の低弾道の強烈な一撃が出るがこれもシャバがファインセーブ。ヨルダンも必死に抵抗するが、ラストパスは精度を欠き、決定的なチャンスには遠い。

　一点が取れずもがく韓国。残り10分を切り、主審の厳しい判定でさらに苦しい立場に立たされる。DF崔眞�浮ｪ２枚目のイエローを受けピッチを去ったのだ。このあとの韓国の攻めは明らかに冷静さを欠きミスが続いた。逆に試合終了間際にはヨルダンのクロスがミスキックとなりGK李雲在があわてて判断を誤り、クロスバーを叩く場面まであった。

---

　三週間という大会期間をフルパワーでしかも最高のコンディションで戦い抜くことが難しいのはワールドカップでもヨーロッパ選手権でもよく耳にすることだ。韓国も手探りでの初戦であったし、初戦特有な緊張感もあったことだろう。しかしこの日は、あたかもヨルダンGKシャバの「ファインセ−ブ特集ビデオ鑑賞会」のようだった。決定機を逃し続けたFWを責めるよりもシャバを賞賛すべきだろう。彼がいなければ３、４点決まってもおかしくない試合となっていたはずだ。

　韓国にとってトリニダードトバコ戦で負傷した朴智星の不在が大きな問題なのだろうか。豊富な運動量で攻守にわたって機能し、タメを作れる朴がいないことで攻撃が単調になってしまうのかもしれない。

　この引き分けでＢグループは混戦となるのは必至だろう。順調に行けばＢ組の勝ち抜きチームと準々決勝で当たる日本にとっては頭の痛いことである。