ブラジル、劇的“逆転”で７度目Ｖ！
COPA AMERICA PERU2004　決勝　アルゼンチンvs.ブラジル

2004年7月25日（日）15:00キックオフ　エスタディオ・ナシオナル（リマ）　
試合結果／アルゼンチン２−２（PK２−４）ブラジル（前１−１、後１−１）　
得点経過／［アルゼンチン］キリ・ゴンサーレス（19分）、［ブラジル］ルイゾン（44分）、［アルゼンチン］ルイス・ゴンサーレス（87分）、［ブラジル］アドリアーノ（89分）


文／中島泰介

　コパ・アメリカもついに残すところ決勝の１試合となった。勝ち上がってきたのは南米２強のアルゼンチンとブラジル。ブラジルは固定されたメンバーで決勝を迎え、アルゼンチンも、おなじみの名前が先発出場だ。しかしシステムに若干変更を加えている。今までディフェンスラインはセンターにアジャラ、エインセ、両翼にサネッティ、ソリンの４人のメンバーだったが、今日はセンターにアジャラ１人、右にコロッチーニ、左にエインセ、そしてサネッティとソリンは一列前にポジションを取る。

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　試合は開始１分、アドリアーノがドリブルでアルゼンチン守備をぶっちぎるが、サネッティが身体をぶつけブロックする。アルゼンチンは３分にサネッティのミドルシュート、９分にはソリンのヘッドでゴールを狙い、ブラジルは10分に右サイドをマイコン、ルイス・ファビアーノで突破し、クロスをアルゼンチンゴール前に入れる。更にこの攻撃のこぼれ球をブラジルが奪い、アドリアーノが強引にシュートに結びつける。

　先制点はアルゼンチン。ルイス・ゴンサーレスがテベスとのワンツーでペナルティ・エリア内に侵入し、ルイゾンがルイス・ゴンサーレスを倒し、アルゼンチンにPKを献上してしまう。これをいつも通り、キリ・ゴンサーレスが決め、優勝へ一歩前進した。その後、アルゼンチンがゲームを支配する。26分には左サイドからルイス・ゴンサーレスとソリンがワンツーでペナルティ・エリア前中央に侵入。ブラジルが誰もプレッシャーをかけに来ないとみるや、ミドルシュートを放つ。これはジュリオ・セザールが横っ飛びセーブを見せてゴールは許さなかったが、これはブラジルの怠慢なプレーだ。38分にもブラジルはディフェンスラインの裏を取られ、テベスがゴール前にボールを折り返すが、これをまたジュリオ・セザールがストップ。

　アルゼンチンにとって怖いのはアドリアーノの個人の突破力くらいだろう。ブラジルにほとんどチャンスを与えず時間が進む。アルゼンチンは、集中力を欠くブラジルから中盤でボールをインターセプトし、何度もゴール前に攻め込むシーンを見せた。理想的な展開だ。しかし前半ロスタイムに、リズムに乗れないブラジルに大きな１点が入った。グスタボ・ネリがロサーレスにもらったファウルによるフリーキックを、アレックスがゴール前に送る。これにルイゾンが頭で合わせ、GKアボンダンシエーリが見送るしかなかったそのボールはゴールネットを揺らした。

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　だが後半もアルゼンチンがペースを握る。49分、テベスからのサイドチェンジのボールを、右サイドでサネッティが受け取り、ロサーレスにボールをあずけると、ロサーレスは左足でゴールへ向かうクロスを入れる。二アにいたルイス・ゴンサーレスは、そのボールに触ることはできなかったが、ファーに詰めていたテベスが膝に当ててゴールに押し込もうとするが、おしくもボールはポストに当たる。ここでも人数はいたブラジル守備陣だが、まったく２人をケアしておらず、この集中力のなさはこれからも心配になってしまう。

　54分、負傷したクレベルソンに代わり、ジエゴが入る。今大会ずっと良い働きを見せていたクレベルソンがいなくなるのは不安だ。アルゼンチンはテベスの突破力とサイド攻撃を織り交ぜてブラジル守備陣を襲い続ける。62分にブラジルは足を引きずるアレックスをフェリピに、アルゼンチンはトップのロサーレスをデルガードに交代させる。64分には角度のないところからデルガードが、66分にはコーナーキックからアジャラが頭で、70分にはこぼれ球をテベスがシュートするが、ゴールには至らなかった。ゲームを支配するがなかなかゴールできないアルゼンチンは、74分にルイス・ゴンサーレスに代え、ダレッサンドロを投入する。

　76分に、テベスを狙ったアジャラのロングパスをGKジュリオ・セザールがカットした後、久々にブラジルにチャンスが訪れる。フェリピ、ルイス・ファビアーノとつなぎ、ペナルティ・エリア前中央に侵入すると、狭いスペースで両国選手がボールを奪い合う。そのこぼれ球に走りこんだグスタボ・ネリがミドルシュートを放つが、これは白と空色の壁に阻まれる。跳ね返ったボールを左でエドゥが拾い、クロスを上げるとまたグスタボ・ネリがダイレクトボレーでゴールを狙ったが、これは枠に飛ばなかった。

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　80分、ルイゾンの代わりにクリスがピッチに入る。58分にアジャラとの空中戦で頭を強く打ったルイゾンは、その後ずっと体調が良くなかったようだ。交代が告げられるとピッチに座り込み、担架でピッチの外へ運ばれ、すぐピッチ外で救急車に乗せられスタジアムを去った。ブラジルは３枚のカードを全て負傷交代に使った。

　攻め続けたアルゼンチンが、その甲斐があって試合終了３分前に２点目を奪う。右サイドでコロッチーニ、サネッティとつなぎクロスボールを入れ、ゴール前でソリンとファンが空中戦で競い、ボールがこぼれる。クリアしようとしたヘナートが空振りし、ボールはデルガードへ渡る。デルガードはワントラップして強烈なシュートをサイドネットに突き刺した。

　その後、あからさまに、そして巧みに時間稼ぎをするアルゼンチン。そしてそれに苛立つブラジル。アルゼンチンの15度目の優勝は決まったかに見えた。しかし、ここでブラジルが、いや、今大会ブラジルで最も頼りになる男、アドリアーノがそれを許さなかった。ロスタイムに、ペナルティ・エリア内に送られたボールをブラジル、アルゼンチンの選手が競う。そのこぼれ球に最も早く反応したのがアドリアーノだ。一瞬のスキを逃さず、ワントラップして左足を振り抜き、同点ゴールを叩き込んだ。

　その直後に試合終了。アルゼンチンは奪還しかけた王座を手からすべり落とし、ブラジルは最後の最後でチャンピオンになるチャンスを手繰り寄せた。南米王者の称号は、PK戦に委ねられることとなった。そして、アルゼンチンは最初の２人、ダレッサンドロとエインセが失敗。キリ・ゴンサーレス、ソリンは成功するも、ブラジルは、アドリアーノ、エドゥ、ジエゴ、ファンと全員が決め、PK戦では形勢逆転し、優勝を手にした。

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　優勝を目標に強力なメンバーを集め、この試合も内容ではブラジルを圧倒したアルゼンチン、土壇場で優勝を逃した悔しさは計り知れない。ブラジルはサブメンバーのテスト的な意味合いを含めて召集した選手で大会に臨んだ。６試合で、アドリアーノ、ファン、ジュリオ・セザールなど、見込みある選手をチェックでき、更に優勝まで手に入れてしまったパレイラ監督には満足いく大会だったことだろう。

　20日間に亘って行なわれたコパ・アメリカはこれで終了し、一度チームは解散。しかし、参加国は、すぐにまた大きな挑戦、ドイツワールドカップ出場に向けて戦いを再開する。