候補アルゼンチン、その力を余す所なく発揮。
COPA AMERICA PERU2004　グループＢ第１節　アルゼンチンvs.エクアドル

2004年7月7日（水）19:45キックオフ　エスタディオ・ブリガディエール・エリアス・アギーレ（チクラーヨ）　
試合結果／アルゼンチン６−１エクアドル（前１−０、後５−１）　
得点経過／［アルゼンチン］キリ・ゴンサレス（５分）、サビオラ（63分、73分、78分）、ダレッサンドロ（84分）、ルイス・ゴンサレス（89分）、［エクアドル］デルガド（61分）


文／中島　泰介

　第41回南米選手権（コパ・アメリカ）がペルーで開幕した。７月６日から25日まで７都市（リマ、トルヒーヨ、チクラーヨ、ピウーラ、アレキーパ、タクナ、クスコ）で試合が行なわれる。初日はグループＡ、ディフェンディングチャンピオンのコロンビアと開催国ペルーが登場。コロンビアはPKの１ゴールでベネズエラを振り切り、ペルーはボリビアと引き分けた。ペルーは終始ゲームを支配しながらもボリビアに２点をリードされる苦しい展開。しかし、ベテランのロベルト・パラシオスの華麗なボールコントロールからの豪快なボレーで同点に追いつき地元大観衆を熱狂させた。

　大会２日目にはグループＢの試合が開催された。まず第１試合では北中米カリブからの招待国で前回大会準優勝のメキシコと、ウルグアイが対戦。１人少ないウルグアイが終盤引き分けに持ち込むスリリングな展開となった。そして第２戦。優勝候補のアルゼンチンが登場。エクアドルと対戦する。

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　アルゼンチンはバレンシアのパブロ・アイマールや、先日レアル・マドリード入りが発表されたセンターバックのワルテル・サムエルなどを欠くが、才能ある選手が豊富なアルゼンチンにとっては、それほど戦力ダウンを感じさせない。対戦相手のエクアドルの１枚上を行っているという事実は衆目の一致するところだろう。しかし、エクアドルは2002Ｗ杯の予選で２位通過を果たした国。世界的にも強豪との力の差が縮まっている今日、何が起こるかわからない・・・。

　しかし、アルゼンチンは初戦から大爆発。エクアドルを一蹴してしまった。試合開始から５分、早くもゴールが生まれる。キリ・ゴンサレス、ソリン、ダレッサンドロとスピーティーにつないだボールを受けようと、ゴール前に走りこんだルイス・ゴンサレスがエクアドルのDFエスピノーサに倒され、アルゼンチンにPKが与えられる。これをキリ・ゴンサレスが決めて先制。そしてアルゼンチンはエクアドル陣内に波のように押し寄せた。

　10分にはカウンターから左サイドをセサル・デルガドがドリブル、そして素早くゴール前へボールを送ると、エクアドルのディフェンスはついていけず、走りこんだサビオラがダイレクトでボレー。19分には、ペナルティ・エリア内からエクアドルDFエスピノーサがサイドへパスを出したがこれをキリ・ゴンサレスがカット。ここでも時間をかけずに中央のダレッサンドロへボールを渡しチャンスを作った。この２つのチャンスはゴールにつながらなかったが、立ち上がりからアルゼンチンの猛攻が目立つ。

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　ようやくエクアドルにファーストショットが訪れたのは26分。右サイドのデ・ラ・クルスは、中央やや右に入ってきたチャラッにパス。珍しくアルゼンチンがプレッシャーをかけないと見るや、ペナルティ・エリア外からシュートを打った。初シュートはGKアボンダンシエーリに難なく処理されたものの、一息つく格好になったエクアドルは、ここから自分たちのリズムを作っていきたいところ。29分には、テノーリオに代わりサラスを投入。状況の打開を試みる。

　しかし、それ以降も主導権はアルゼンチンが握り続けた。中盤のダレッサンドロとルイス・ゴンサレス、そして両翼のキリ・ゴンサレスとセサル・デルガドが、スピードに乗った組織プレーで何度もエクアドル陣内へ侵入する。試合はハーフコートゲーム様相を呈していた。最終的には、アルゼンチンの追加点は生まれず１−０のままで前半が終了したが、アルゼンチンにとっては全く危なげない試合展開。初戦からエンジン全開である必要はないし、何も変えずに後半に臨めば良いのではないか、というのが前半を終えての印象だった。対してエクアドル。全くアルゼンチンを脅かすことができなかった。この状況を後半どう打開するか？

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　後半開始。相変わらずアルゼンチンがボールを操るが、エクアドルは気持ちを前面にだしたディフェンスで、アルゼンチンの猛攻を防ぐ。そして61分、エクアドルにゴールが生まれた。右サイドでダレッサンドロがバックパスをミス、エクアドルのアグスティン・デルガドにボールが渡る。アルゼンチンDFエインセがデルガドに対峙していたが、デルガドはペナルティ・エリア内、右コーナー付近でそのまま右足を振り抜き、ボールをアルゼンチンゴールに突き刺した。

　しかし、エクアドルの喜びはわずか２分しか続かなかった。アルゼンチンが見事な組織プレーでエクアドルを突き放したのだ。ルイス・ゴンサレスから左サイドのキリ・ゴンサレスにボールが渡ると、２人のエクアドルDFがすばやくプレッシャーをかけに行く。そのDFのすぐ後ろを縦に走りこんできたソリン。キリ・ゴンサレスからの短いパスを受けると、ダレッサンドロ、ルイス・ゴンサレスと少しずつ中央へボールを移動させ、ペナルティ・エリア内で待ち構えていたサビオラへ。一度左へ切り返し、エクアドルのプレーヤーで密集しているエリアで見事ゴールを突き刺した。攻撃のコンビネーション、スピード、サビオラの決定力と、申し分ないゴールだった。

　さらに追加点は73分。デルガドに代わり右サイドに入ったロサレスが、相手のプレッシャーが弱い中、正確なクロスを上げる。このボールをキャッチしようとしたイバーラの目の前で、小柄なサビオラがヘディングでゴールネットを揺らした。ドンピシャのクロスも素晴らしかったが、サビオラの動きに気づかなかったエクアドルDF及びGKのミスでもあった。

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　これで試合は決まった。しかし、アルゼンチンは攻撃の手を緩めない。78分、CKをソリンがヘディングで落とし、ファーでノーマークのサビオラが思い切り良く右足でボレーシュート。爽快且つ豪快なゴールでサビオラはハットトリックを達成。82分にボカのアイドル、テベスと交代した際に観客から拍手で迎えられた。その直後の84分、エクアドルDFの弱々しいクリアボールを、ルイス・ゴンサレスがワンタッチでペナルティ・エリア前中央のダレッサンドロにパス。ワントラップして浮いたボールをダレッサンドロが一閃。低い弾道のシュートでアルゼンチンに５点目をもたらした。

　ゴールのフィエスタは最後まで続く。ロスタイムに決まった、この試合最後のゴールも、美しいパスワークからだった。自陣左サイドから、ダレッサンドロ、テベス、そしてキリ・ゴンサレスに代わったロドリゲスへと縦につなげ、エクアドル陣内に侵入。左コーナー付近からロドリゲスが中央へマイナスのパスを送る。それをテベスがスルーして、上がってきたルイス・ゴンサレスがパスを受ける。そして、すぐ側にいたダレッサンドロに預けて前へ。ダレッサンドロの繊細なタッチから繰り出されたパスが、エクアドルディフェンスの頭上を越えてルイス・ゴンサレスへと渡った。ルイス・ゴンサレスはGKと１対１。ダイレクトでボールをゴールへ流し込み、華麗な攻撃のフィニッシュを務めた。

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　大敗を喫したエクアドル。ほとんどサッカーをする時間がなかった。さらに残りのグループリーグの相手はウルグアイ、メキシコと曲者揃い。１試合を終了しただけだが、ベスト８進出は非常に苦しいと言わざるを得ない。
　逆にアルゼンチンは優勝候補であることを存分に見せつけた。優れた個人技に加え、この日の試合は、組織プレーにも目を見張るものがあった。エクアドルよりもレベルが上であるとみられるメキシコ、ウルグアイとの対戦で、どんなプレーを見せてくれるのか楽しみである。