計算通りの勝利。チェコ、欧州チャンピオンへ、あと２つ
UEFA EURO2004 PORTUGAL　準々決勝第４試合　チェコvs.デンマーク

2004年６月27日（日）　19：45キックオフ　ドラゴン　天候：晴
試合結果／チェコ３−０デンマーク（前０−０、後３−０）
試合経過／［チェコ］コレル（49分）、バロシュ（63分、65分）


文／西森彰

　EURO96ではイタリア、ドイツ、ロシア。EURO2000ではフランス、オランダ、デンマーク。クジ運に恵まれないチェコは、２大会連続で優勝国を含む強豪揃いの「死のグループ」に組分けられた。今大会でもオランダ、ドイツ、ラトヴィアと同居したが、円熟味を増したこのチームは、３試合連続でゲームをひっくり返し、参加16チーム中、唯一３戦全勝で決勝トーナメントに進んだ。

　これを迎え撃つデンマークはEURO92の覇者である。前回のEURO、そして2002ワールドカップ予選では、チェコと同じグループに入っていた。因縁浅からぬ関係だ。予選グループ最終戦の土壇場で、スウェーデンに追いつかれたために、またもやチェコと顔を合わせることになった。これまでの対戦成績では分が悪いが、2002ワールドカップで出し抜いた自信も残っているはずだ。

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　デンマークは４−３−３の打ち合いを望む攻撃的なフォーメーションで、最前線に絶好調のヤン・ダール・トマソンが張る。最終ラインを高く保ち、中盤から前の出足でチェコを圧倒的に凌駕するデンマークのボールポゼッションは、７割に達しようとしていた。デンマークのモアテン・オルセン監督は「前半は素晴らしかった」と振り返った。確かに「ダニッシュ・ダイナマイト」の名にふさわしい攻撃だったが、ゴールという結果は付いて来なかった。

　２戦目でグループリーグ突破を決め、３戦目のドイツ戦をターンオーバーしたチェコは、一見動きが悪く見えた。しかし、戦後に行なわれた記者会見の内容を見ると、カレル・ブリュックネル監督が、後半に脚を矯めさせた結果に思える。デンマークの得意な打ち合いに付き合えば、勝ったにしても２日のディスアドバンテージを背負うギリシャ戦は、満身創痍で戦わざるを得ない。対デンマークの戦略としてのみならず、大会全体の日程まで考えた上の深謀遠慮だったのだ。

　一方的に押される展開の中でも、チェコは失点をしなかった。さらに言えば、決定的シーンを作った回数を比べればデンマークを上回っていた。ハーフタイムをスコアレスで迎えた時点で、チェコのペースになっていることは明らかだった。

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　前半は流し気味に相手と併走していたチェコは、後半に入ると、あっという間にリードを開く。まずは49分、右からのコーナーキック。カレル・ポボルスキーの蹴ったボールにデンマークDFが被ってしまう。その後ろにいたヤン・コレルが強烈なヘディングシュートでゴールの右隅へ叩き込んだ。相手のミスに付け込んだ、大きな先制点だった。

　刃を研ぎ澄ませたチェコのカウンターが、デンマークを切り裂き始める。右のポボルスキー、左のパヴェル・ネドヴェド。高速ドリブルにデンマークのDFは、為すすべなくイエローカードを重ねた。そして、右サイドのパス回しから、一瞬の隙を突いたミラン・バロシュの動きに、ポボルスキーが点で合わせるスルーパス。このゴールで勝負は決まった。その３分後、ネドヴェドからのパスに走りこんだバロシュが大会５得点目を決めて駄目押し。

　そこからの30分はチェコにとっては付録だった。３点目と前後して２枚の選手交代を行なって、セミファイナルへ向けてバロシュをベンチに下げる。後はのらりくらりとデンマークの攻勢を無失点で凌いで３対０。僅差の続いたクオーターファイナル４試合で、唯一の完勝劇を飾った。

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　敗れたデンマークだが、グループリーグの３試合では、素晴らしい戦いぶりを見せた。初戦のイタリア戦、「ノルディック・ヴィクトリー」となったスウェーデン戦はどちらも内容では上回っていた。しかし、勢いが付くとどこまでも伸びていく一方で、リズムが狂うと立て直せない悪癖も相変わらずで、このチェコ戦でもひとつのミスから崩れていってしまった。

　勝ったチェコは一頃の勝負弱さが払拭され、内容に結果が付いてくるようになった。ネドヴェド、ポボルスキーの両翼から、コレルをターゲットにして、衛星のバロシュ、２列目のトーマス・ロシツキが絡む攻撃は迫力十分だ。３つの逆転勝利を含め、いずれの試合も後半に結果を残していることは、対戦相手に無言のプレッシャーを与えている。ハードな日程というハンデを乗り越えて、欧州チャンピオンに輝くことができるか。