罠に落ちた日本、バーレーンに苦杯、３チームが同勝点に！
アテネ五輪アジア最終予選Ｂ組　日本ラウンド第１戦　日本vs.バーレーン

2004年3月14日（日）19:20キックオフ　埼玉スタジアム2002　観衆：55,442人　天候：晴
試合結果／日本U-23代表０−１バーレーンU-23代表（前０−０、後０−１）
得点経過／［バーレーン］アデル・アッバス（71分）


取材・文／貞永晃二

　思わぬ失点だった。71分、那須のファウルからのバーレーンのFK。フサイン・ハサンのキックは日本の作った壁に跳ね返ってふわっと上がった。これをうまくクリアできず、アデル・アッバスの前にこぼれてしまう。日本はエアポケットに入り込んだように寄せられず、フリーでシュートさせてしまう。両チームの選手がブラインドとなり、GK林にはノーチャンスだった。

　負けられない日本。焦りは隠せなくなる。ボールがタッチを割るたびに山本監督の位置が前へ前へと出てくる。必死にゴール前にハイクロスを上げる日本、それをはね返しロングクリアで逃げ、接触プレー後には必ず倒れ露骨な時間稼ぎのバーレーン。それが何度も繰り返される、スタジアムは猛烈なブーイングの嵐。そしてタイムアップ。

　ホイッスル直後、一斉に立ち上がり、口々に不満を吐き出しながらスタジアムを出て帰途を急ごうとするサポーターたち。ＵＡＥラウンド初戦でスコアレスドローに持ちこまれた日本だったが、そこで学んだものをこの日の再戦に活かして快勝してくれるという淡い期待は見事に裏切られた。第１試合で勝点ゼロのレバノンに対しドローに終わったUAEを笑える立場ではなかったのだ。

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　右ストッパーに茂庭、左アウトサイドに緊急召集の根本、松井・山瀬ではなく前田MFに配置した日本。帰国後コンディションが戻らない選手が多く苦しい試合になることが予想される。

　バーレーンは予選突破には勝利しかありえない。そのため最初から攻撃的にくるものと想像された。しかし、シェリダ監督が選んだ手はＵＡＥでドローに持ち込んだのと同じ方法「負けないこと」だったのだ。人数をかけた守備。開始数分はリズミカルな攻めを見せた日本だったが、やがて５バック、いや６バックとも見えるバーレーンDFに取り囲まれて、日本はサイドからも中央からも攻め込みながらも、決定的チャンスをつかめない、イライラのつのる戦い。

　そして、26分に思わぬ「事故」がチームをさらなる動揺に導く。ここまでチームをリードしてきた一人、闘莉王がなんと負傷退場。那須をセンターに移し、徳永をDFに下げその後へ石川という手もあったはずだが、山本監督は帰国後に招集した阿部をそのままセンターに入れた。彼の正確なキックを攻撃の基点にしたいという考えもあったのだろう。

　前半はこのまま終了。日本の拙攻、バーレーンの健闘という予想外の展開に大観衆は誰もが大きな不安を感じながらも大きな声で選手を鼓舞し続けた。この試合の勝利で眼下の敵ＵＡＥを大きく突き放すことができるのだ。しかし本当に勝てるのか？

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　闘莉王の負傷退場で交代カードを一枚切ってしまっていたため、山本監督は後半開始からの思い切った交代での攻撃のてこ入れを躊躇した。しかし、前半と同じ選手からいいリズムが生まれだすのだからサッカーは面白い。

　阿部をキッカーとするFK、CKからも大きなチャンスが生まれた。高松がCKからヘッドで、さらに左からのクロスをダイレクトボレーで狙ったシュートなど、もう一息というところで、バーレーンDF陣は必死に踏みとどまった。ボールを完全に支配した日本。しかし、肝心の得点があげられない。ゴール前に張り付くDFを引っ張り出すため、田中達はミドルシュートで狙う。しかしバーレーン守備陣の集中力は後半半ばをすぎてもいささかも衰えない。

　そして神のいたずらか、冒頭のバーレーンの先制点が決まる。この失点でまたも日本のリズムはくずれてしまう。根本から石川、鈴木から松井と温存したプレーヤーをピッチに送り出すがゴールは遠い。ビッグチャンスは83分、スペシャリスト阿部に絶好の見せ場が訪れる。しかし、右足からのFKはコースを空けようとした茂庭に当たってしまいノーゴール。絶妙のコースに飛んでいただけに悔しい阿部。

　フェアプレーとは程遠い内容ながら、観衆の大部分を敵に回してもとうとうバーレーンは逃げ切ってみせた。本当にあきれるほど逞しいバーレーンの選手たち。

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　２試合を残して悲観的になる必要はない。同勝点に３チーム、しかし他力ながら首位は守ったのだ。こんな負け方もあるのがサッカーなのだ。闘莉王の負傷、那須の出場停止と日本を追い詰める要素は多い。下を向かず、顔を上げて次の試合に備えよう。次のレバノン、そしてＵＡＥ。この日出場かなわず、ベンチで爪を研ぎ続けた選手がきっとやってくれるはずだ。アテネへ、オリンピックへ、日本中の誰よりも一番たどり着きたいと願っているのは、選手たち自身なのだから。