ナビスコ史上最多得点を決め、レッズが再び国立を席巻す！
2003Ｊリーグ　ディビジョン１　ナビスコカップ　準決勝　第２戦　浦和レッズvs.清水エスパルス

2003年10月８日（水）　19：04キックオフ　さいたま市浦和駒場スタジアム
観衆：18.486人　天候：曇
試合結果／浦和レッズ６−１清水エスパルス
試合経過／［浦和］田中（26分、44分）エメルソン（54分、57分、62分）山瀬（70分）
　　　　　［清水］トゥット（77分）


取材・文／砂畑　恵

　平日開催のナビスコ杯は、土日に行なわれるリーグ戦よりも人の出足は鈍る傾向にある。駒場での準決勝・第２戦のチケットも残席があり、思うような伸びではなかった。無冠のチームに是非ともタイトルをと願うレッズサポーター有志が、一人でも多くの声援で選手を後押ししようと、浦和駅前で観戦を呼びかけるビラを配布したと聞いた。その成果もあってスタジアムは真っ赤に染まった。第１戦を１−０で勝利を収め、決勝進出に意気込むアウェイ席も立錐の余地もないほどの入り。まさに準決勝にふさわしい舞台が整った。

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　ゲーム序盤、上手くスタートを切れたのはエスパルスの方だった。大木監督は先勝した優位な立場を守るのではなく、第２試合も先制点を奪って相手の戦意を削ぐ積極策を選んだのだ。攻撃的に出たエスパルスの中でも、その急先鋒となったのが先発起用されたトゥット。古巣でもあるレッズだが、遠慮会釈なく牙を剥く。FKからのリスタート。パスを受けたトゥットはマーカーの内舘をドリブルで振り切り、ゴール前で得意な横移動をしながら力強くシュートを放つ。ポストを叩くシュートにレッズサポーターからは悲鳴の後、烈しいブーイングが起こった。

　トゥットのきわどいシュートはレッズイレブンに火を点けた。エスパルスに先を越されてはなるまじと、攻撃に拍車がかかる。速い出足でエスパルスに襲いかかり、エメルソンの単独突破から徐々にゲームの流れを掴んでいく。そのエメルソンに田中、トップ下の山瀬、そして左アウトサイドの平川が絡んで、攻撃の幅が段々広がっていった。

　レッズペースとなった26分、待望の先制点が産まれる。平川からパスを受けたエメルソンが、逆サイドにハイボールを上げた。センタリングはゴールラインを割りそうな勢いだったが、三都主の背後をとった山田がライン手前、ヘディングで中に折り返す。そのボールを田中は下がりながらの難しいボレー。力こそなかったものの、バウンドしたボールはGK黒河の指先をかすめてゴールぎりぎりに転がり込んだ。

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　２試合トータルイーブンに追い付かれたエスパルス。猛反発して勢いを盛り返す。32分、トゥット戻しを鶴見がミドルシュート。34分には三都主のFKに、44分にもCKをゼリッチが頭で逸らせたボールにトゥットが飛び込む。いずれも得点に結びつくチャンスではないものの、GK都築は大忙しとなった。

　だがエスパルスの勢いに田中が終止符を打つ。前半ロスタイム、ドリブルでペナルティーエリアに侵入した平川を鶴見と池田が挟み込むようにブロック。平川がエリア内で倒れたことで、一瞬、エスパルスの選手の足が止まる。いち早く山瀬がこぼれ球に反応して、エリアの外からシュート。そのシュートと同時にゴール前に走った田中が、GK黒河の弾いたボールをプッシュ。２試合合計の勝ち越し点を決めた。

　後半になってもレッズは攻撃の手を緩めることはなかった。相手を畳み込んで、決勝への切符を手にするんだという意志の表れだった。46分にはエメルソンのクロスを田中がヘディングしたのを皮切りに、右からは山田と山瀬のコンビネーションで、はたまた田中が左サイドをドリブルで、相手を崩しに掛かる。50分には田中の戻しを山瀬がシュートするもポストを叩いた。誰もかれも高い位置からのプレスで相手を圧倒する。

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　レッズの勢いに後手に回らざるを得なかったエスパルスは苛立ちが生じ始めていた。ボールを奪ってもなかなか自分達の攻めに移れず、募る焦りがエスパルスを破綻に導くこととなる。52分、レッズエンドで両チームが攻めぎ合う中、こぼれたボールを前に蹴り出そうとした長谷部の軸足目がけて鶴見がタックルに及んでしまった。その鶴見は37分にもイエローカードを受けている。エスパルスの選手が柏原主審を囲んでとりなそうとしたが、鶴見に悪気はなかったとしても、２枚目のイエローの提示は致し方なし。エスパルスはこの出来事により完全に我を失ってしまった。てんで勝手に攻めに出る前の選手に、DFだけが取り残されてディフェンス対応に追われる。

　タガが外れたエスパルスに対し、一気にレッズは押し捲った。54分、山田のドリブル突破が止められたところを、エメルソンがボールを引き継いで、怒涛のごとくゴール前に進みミドルシュートを炸裂。57分には、田中の突破から中央に構えたエメルソンにボールが渡り、エメルソンはGK黒河の動きを冷静に判断してゴールを沈める。糸が切れたエスパルスに62分、エメルソンが追い打ちを掛けるゴールを挙げてハットトリック。更には70分にも山瀬がFKを直接ゴールをねじ込んだ。

　エスパルスは75分に安の突破からGK都築のファウルを誘ってPKを獲得。そのPKをトゥットがきっちり決めて１点返すのが精一杯。GK都築の退場後にあたふたした感のあったレッズを付け入ることが出来ず、狂った歯車を最後まで戻すことは叶わなかった。

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　試合終了後、場内アナウンスで決勝の相手がアントラーズであることを知らされると、レッズサポーターからは「うぉぉ〜」という歓声とともに、相手に不足なしの声が飛び交った。きっとレッズサポーターは、この組み合わせとなることを待ち望んでいたのだろう。初めてのタイトルに手が届きながら涙を飲んだあの日。あれから１年。前のように悪戯に舞い上がって国立の舞台に立つわけではない。選手もサポーターも地に足を着けた闘いが今なら出来る。今度こそ歓喜の涙で顔を濡らすことを、レッズにまつわるすべての人が新たに誓ったに違いない。