磐田、荒れたピッチに苦しみながら神戸に逆転勝利！
2003Ｊリーグ　ディビジョン１　２ndステージ　第9節　ヴィッセル神戸vs.ジュビロ磐田

2003年10月4日（土）14:05キックオフ　神戸ウイングスタジアム　観衆：11,387人　天候：晴
試合結果／ヴィッセル神戸１−３ジュビロ磐田（前１−１、後０−２）
得点経過／［神戸］オゼアス（8分）、[磐田]河村（33分）、西（58分）、前田（72分）


取材・文／貞永晃二

　Ｊ１残留をめぐる苦しい戦いが続く神戸。一方スカッとした勝利を奪えずなかなか勝点を伸ばせない磐田。ともにこの日の試合を勝利することで、なんとか現状を打破して掲げる目標に前進したいところだ。Ｊ１リーグでの対戦は磐田が11勝2分無敗、29得点10失点と神戸は一方的にやられてきた感じだ。
　ほぼベストメンバーの神戸に対し、磐田は名波、福西、成岡を欠きMFに創造性を見出せないがため、グラウが若い前田、西野を後方から支える３トップともいえる陣形を採用した。

---

　序盤の磐田は荒れたピッチに苦しんだ。神戸がペースを握ったのもホームスタジアムを知り尽くしているからこそか。６分、ビスマルクのFKにオゼアスが飛び込むが、GK山本がキャッチ。最近スタメン定着している朴康造もミドルを狙う。
　そして先制したのは神戸。８分、左サイド深くのスローインをカズがキープし、追い越した菅原がゴール前へクロスを供給する。ファーポストのオゼアスがツータッチ目でシジクレイへ落とす。ダイレクトで出されたボールはDF２人の門を抜けオゼアスの前へ。オゼアスの前方を妨げるものはおらず、ニアサイド、GK山本の左下を抜けたシュートがネットを揺すった。オゼアスの得点試合は「不敗」を続ける神戸にとって、これは「幸せの予感」ゴールと思いたいところ。

　反撃に出たい磐田だが、神戸のベテラン・ボランチ三浦泰が粘り強い守備で立ちはだかる。左右からのクロスも慣れない芝生が邪魔をして精度は低い。神戸の苦しい時間帯もビスマルクが気の利いたプレーでキープし、また相手のファウルを誘った。しかし、磐田は前田、西がチャンスを活かせず迎えた33分、河村の自らに向けたバースデーゴール一発で追いついた。ポストとなった西の落としを右サイドから入って左足でネット左上スミに強烈に決めた。24歳の河村、もらった出番に見事なアピールだ。

　攻守にハイ・パフォーマンスを見せる神戸に37分、追加点の絶好機が訪れる。センターラインでパスカットした北本がそのまま前線でボールに絡み、左サイドのカズがキープからクロス。ファーポストで待ち構えるオゼアスがフリーヘッドをニアポスト際に叩きつける。しかしGK山本が足で防ぐファインプレーでチームを救った。
　磐田もグラウのドリブルから得た決定的チャンスに西、前田がシュートを連発するが神戸DF陣が身体を投げ出し守りきった。試合の決着は後半に持ち越されることになった。

---

　後半に入り磐田はアグレッシブに変わった。ピッチに慣れたこともあって、左右からのクロスも鋭く正確性も上がった。両翼の西、ジヴコヴィッチも高い位置で神戸DFを引っ張りだし、空いたスペースにMF陣が侵入を繰り返す。そして58分、西のドリブルの仕掛けに神戸DFはずるずると下がってしまい、ボックスへ入れてしまう。放たれたシュートは文句なしのスピードでGK掛川の肩口を抜き逆転ゴールとなった。直後、神戸はシジクレイが攻撃に加わりワントラップから右足ボレーで狙うがGK山本がファインセーブでリードを守った。

　得点が必要な神戸はカズを播戸に、三浦泰を岡野に代え反攻に出る。しかしペースは磐田に握られたままで苦しい戦いが続く。そして磐田にダメ押しゴールを与えることになる。72分、MFで下がって受けたグラウから左サイドへ流れた西野、さらに内側を上がったジヴコヴィッチとつながり、ボックス内をマイナスに戻したパスを前田がクールにゲット。２点差をつけた。

　前半は対等に戦えた神戸も、磐田との個々の地力の差が顕著になり守備面で後手を踏む場面が多くなる。シジクレイ、土屋とヘッドで磐田ゴールを襲うが枠をとらえられず時間が経過していく。磐田は安全第一、キープにつとめながら機を見てシュートを狙う戦い方だ。そしてついにタイムアップ。磐田の神戸戦の無敗記録は来シーズンに持ち越しになった。もっとも神戸が残留できることが前提だが。

---

　結果的に敗れた神戸だが、前半のパフォーマンスを継続できれば先は明るいといえるだろう。ビスマルクの加入でボールを一旦預ける場所ができたのは大きい。しかし、このチームで目立つのはシジクレイ、土屋、三浦泰、カズ、オゼアスといったベテラン勢である。彼らの勝利への執念を若手が傍観していてはいけない。ワールドチャンピオンが戦ったスタジアムで来季Ｊ２リーグ戦を戦うことを恥ずかしいことだと思い知るべきだろう。残す相手は上位陣が多く、当面の敵としては京都戦を残すだけで非常に苦しい状況だ。とにかく開き直って悔いを残さない戦いを期待する。

　磐田にとっては単なる１勝ではない。先頭グループが抜け出しに苦しんでいる今だからこそ貴重な勝点３だといえる。残り６試合で勝点５の差はまだまだあきらめることはできないし、修羅場をたくさん経験してきた彼らは市原、東京Ｖ、横浜ＦＭとの対戦を残しているだけにこれからが本番だと考えているに違いないのだ。大混戦の２ndステージをさらに盛り上げるためにもベテランの奮起、若手の成長を楽しみにしたい。