「オレンジはアンラッキーカラー？！」攻め続けたフロンターレ１点に泣く
2003Ｊリーグ　ディビジョン２　第32節　川崎フロンターレvs大宮アルディージャ

2003月９月６日（土）　19：00キックオフ　等々力陸上競技場　観衆：4.806人　天候：晴
試合結果／川崎フロンターレ０−１大宮アルディージャ（前０−０、後０−１）
試合経過／［大宮］バレー（81分）


取材・文／砂畑　恵

　雑誌などを買った際、「当たるも八卦、当たらぬも八卦」と笑いながらも、何となく星占いのコーナーを気にする人は多いと思う。週刊誌ならば、今週の運勢が数行書かれており、その下に大概は「ラッキーカラー」が記されている。良いことがあれば悪いこともある、それが人生というもので、掲載されてないけれど「アンラッキーカラー」ってのも、本当はあるんじゃないだろうか。

　冒頭にサッカーとは関係ない話をもってきたのは、どうも今シーズンのフロンターレにとって、オレンジ色がアンラッキーカラーのように感じたからだ。他のチームに対してはまんべんなく勝利をしているのだが、チームカラーがオレンジのアルビレックスとアルディージャに未だに勝ちがない。前節もアルビレックスを追い上げたものの２−３で競り負けている。唯一、引き分けに持ち込んだのが、第１クールのアルディージャ戦（ホーム）だけだ。

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　この日のアルディージャとの闘いも、まさにオレンジジンクスを彷彿させる展開だった。開始２分のファーストシュートこそアルディージャのバレーが放ったが、フロンターレは４分のジュニーニョのシュートを皮切りに前半だけで12本と、雨あられのシュートでアルディージャゴールを脅かした。

　14分には山根からの足元へのパスを、ゴールに向き直りながら受けたジュニーニョがフィニッシュ。続く18分、茂原が左に振ったボールに、ホベルチがオフサイドラインをあっさり破ってGK川島と１対１に。しかし、これは川島の攻守に阻まれた。24分に訪れたチャンス。長橋のロングパスに、タイミング良くゴール前に上がったアウグストが、反応の良いGK川島の動きを牽制するような間を作り、狙いすましてシュート。今度はポストに嫌われる。その後も、ジュニーニョ、ホベルチ、アウグストのブラジル人トリオを中心に、今野や茂原、長橋がボールに絡んで、アルディージャを攻め立てた。

　そういうことでは、アルディージャの前半は最悪だった。公式記録によるとシュートは２本。自分の観戦メモも空白が目立つ。選手一人ひとりの動きが緩慢で、フロンターレの選手がゴールを背にボールを受けている場面でも、簡単に前を向かせ過ぎているのだ。ただ、あれだけのシュートを浴びながらもゴールを許さなかったのは、もちろんGK川島の好守もあったが、ゴール前にボールを運んできたフロンターレ選手達が、パスなりボールタッチが１つ、２つと多かったことで、どうにかアルディージャもディフェンス対応する余地をいただいたというものだった。

　これだけアルディージャが守備に回されたのだから、当然、攻撃面では犠牲を払わねばならなかった。アルディージャの攻撃は伊藤・安藤を起点としたサイド攻撃。その二人が対面の長橋とアウグストに押されて自陣に篭められては、アルディージャらしい攻め手がなくなる。自陣からバレーやエジソンへとロングボールを放り込んでも、味方のフォローが追い付かず、フロンターレDFは余裕をもって対処することが出来る。殊にバレーは自力のみでもゴールを落とす選手だが、渡辺が回りを良くカバーして、仕事をさせていなかった。

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　後半に入って、立ち上がりこそアルディージャに攻撃の意識が目覚めたようで、フロンターレと丁々発止に渡り合うかに見えたが、55分の頃には「攻めのフロンターレ」対「耐えるアルディージャ」の前半の構図になっていった。

　ペースを取り戻したフロンターレは、60分に茂原のパスを受けた長橋が、ディフェンスに来た奥野を引きずり倒すほどの強引な突破で、ゴール右のスペースへ走り逆サイドに展開。パスを受けたアウグストは右のゴールポスト目がけて、ロビングボールを入れる。今野が上手く合わせたに見えたが、シュートはクロスバーの上へ。その１分後には、山根と今野がワンツー。山根のクロスに対し、DFの間に上手く入り込んだホベルチだったが、またもクロスバーを越えた。

　73分には山根がFKから直接ゴールを狙う。山根のシュートは絶妙なコースに飛んだが、今度はGK川島がナイスセーブを見せて、ネットを揺するには至らない。80分にも今野のパスを受けたジュニーニョが、中央に入って来たアウグストとパスを交わしてシュートを打ったがGKにキャッチされた。

　これでもか！というほどのフロンターレ攻勢に、フロンターレ贔屓の知り合いからは、「こういう展開に決まって、バレー辺りにポコンと決められるんだよね」と嘆き節が聞かれた。確かにバレーは怖い選手だが、よもやその言葉は現実になろうとは・・・。

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　ただその兆しがアルディージャになかったわけではない。62分に島田が入ったことで、寸断されていた攻撃が徐々に繋がり始めていた。まるで息を潜めていたような安藤も、対面のアウグストが攻めに比重を置く分、裏にスペースはあった。安藤がぽつぽつと高い位置でプレーするようになり、76分には島田のアーリークロスが中央のバレーに合わず、流れてきたところをシュート。DFのブロックに跳ね返されたが、ようやくらしいプレーがみられた。

　それが81分のゴールに結び付いていく。アルディージャのカウンター攻撃。トニーニョのクリアを拾ったバレーが、右に素早く展開。安藤が思い切りのよいドリブルで仕掛けゴール前へ。GK吉原は安藤のシュートを警戒して、ゴール左に寄る。だが安藤はバレーに対するフロンターレのディフェンスが甘いと見るや、クロスを選択。頭一つ抜けたバレーのヘッドが炸裂した。

　攻め続けた挙げ句の失点に、フロンターレの選手の足取りは鈍った。ロスタイムを含めても10分余りあったのだが、その間に３度、ゴールに近い位置でFKも獲得したが、その機会も活かせずじまい。上手にアルディージャに時間を使われ、結局たった１点に泣く結果となってしまった。