柔軟性に欠いたフロンターレ、アルディージャに屈す
2003Ｊリーグ　ディビジョン2　第22節　大宮アルディージャvs.川崎フロンターレ

2003年7月6日（日）　18：31キックオフ　さいたま市大宮公園サッカー場　観衆：3.791人　天候：曇
試合結果／大宮アルディージャ１−０川崎フロンターレ（前０−０、後１−０）
試合経過／［大宮］伊藤彰（63分）


取材・文／砂畑　恵

　ここのところ遠ざかっていたアルディージャの試合へ久々繰り出し、スタジアムの雰囲気が激変していることに面食らった。選手個人に対するというよりはむしろ、チームへの声援を主体としているほのぼのとしたアルディージャの応援が、個人コールも増えた上に、サンバ隊まで引っ提げてのにぎにぎしさ。「何があったんだ？」と目を丸くしてしまった。
　しかしながら、その軽妙なサンバのリズムに乗り切れないのが今のアルディージャ。７勝５分９敗と、取り立てて良くもなく、かといって殊更に悪くもない。連勝して調子を取り戻したかと思うと連敗したりして、なんとも奥歯に物がはさまったようなぎこちなさを感じてしまう。

　大宮に乗り込んできたフロンターレは、21節を終って３位と好位置をキープしている。負け試合の数は２試合で、首位のサンフレッチェに次いで２番目の少なさ。若干、勝ち星が劣ることで、アルビレックスの後塵に甘んじているが、なにより負けないということはチームが安定している証拠。リーグの最終局面を迎えた時、案外引き分けゲームが勝負に綾を付けることも少なくない。

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　試合が始まってみると、現在の成績を反映するかのようにフロンターレの力強い攻めがアルディージャを押しこむ展開となった。６分、フロンターレいきなりのビックチャンス。アウグストのパスを受けた中村が、アルディージャDFの隙間を反転しながら擦り抜けてシュート。川島も反応著しくゴールを守る。だがその後も連続して起こるフロンターレの攻撃に、アルディージャはたじたじとなった。

　アルディージャ苦戦の原因は、フロンターレの攻撃を司るアウグストに対する適切な処置を行なえなかったからだ。縦横無尽にポジションを移すアウグストに振り回されるアルディージャ。守備に奔走させられてばかりで、中盤のバランスも悪く選手同士が重なったりして、一向に攻めに転じられない。アルディージャ攻撃陣はイライラを募らせた。その筆頭が伊藤彰。19分にイエローを受けたにも拘わらず、その後も興奮の納まらない様子で、見ているアルディージャサポーターも気が気でなかったのではあるまいか。

　こういう状況にあるアルディージャが、最終ラインで踏みとどまり得点を許さずにすんだのは、怪我がちだった奥野がこの試合で存在感を示したからだ。20分には相手と交錯し頭部に流血を見ながらも、他の選手のカバーリングを的確に行ない、44分、46分とあったフロンターレの決定的シーンでも素晴らしい守備を披露した。

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　後半に入るとアルディージャの菅野監督は、ロングボール主体の攻撃を取る。スピードと対人にも強いバレーにボールを集め、３バックであるフロンターレDFの背後やサイドのスペースを徹底的に突いたのだ。その効果はてき面で、フロンターレがバレーの動きに翻弄させられる。前線で奮闘するバレーに中盤のフォローも整い、一気に形勢は逆転してアルディージャが63分に先制点を奪った。バレーが左サイドでボールをキープする間に、村田が攻撃参加。バレーからパスを受けるとセンタリングを上げる。クロスは吉原にパンチングされたが、そのボールを斉藤が後ろにいた伊藤彰に落とす。前半の鬱憤を晴らすかの如く、伊藤彰の豪快なミドルシュートが決まった。

　手元から逃げたゲームの主導権を再び手繰り寄せようと、フロンターレの石崎監督は策を施す。66分、中村を下げ伊藤優を投入した際、アウグストをFWのポジションにまで高くし３トップ気味にする。ところが、本来アウグストのいるはずの位置に人が不在となってしまい、左サイドの攻撃起点がなくなる。と、見るや、石崎監督は茂原から塩川にスイッチして左サイドを埋め、中盤をフラットにした３−４−３の陣形に整える。

　その采配はフォーメーション的に見合っていたが、急激な変化に柔軟に対応が出来るほどフロンターレの選手は成熟していなかった。フロンターレは有効な攻撃に結びつけることが出来なかったばかりか、逆にアルディージャのカウンター攻撃に晒され危うさが漂う。どうにか89分にしてチャンスを迎えたが、伊藤優の折り返しに、飛び込んだ我那覇は紙一重の差で合わせることが叶わず、同点の機会を逃してしまった。

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　自力を付けてきたとは言え、押しに押した前半に決められず、相手に先行されてからのフォーメーション変更に戸惑うフロンターレのナイーブさ。今後、昇格を目指すに際し、大一番という試合でナイーブな面が頭をもたげないか不安の残るところ。幸いにも、今節はサンフレッチェは勝ち点が足踏みし、アルビレックスも勝ち点１を積み上げただけ。気持ちを切り替えて、前半のようにアグレッシブな気持ちでチャレンジすることが次に繋がるように思う。