東京Ｖ、新監督の期待にこたえＣ大阪攻撃陣を零封！
2003Ｊリーグ　ディビジョン１　１stステージ　第11節　セレッソ大阪vs.東京ヴェルディ1969

2003年7月6日（日）19:03キックオフ　長居スタジアム　観衆：9,231人　天候：曇
試合結果／セレッソ大阪０−２東京ヴェルディ1969（前０−１、後０−１）
得点経過／［東京Ｖ］柳沢（12分）、山田（87分）


取材・文／貞永晃二

　降格のピンチを脱するため迎えたアルディレス新監督の初のリーグ戦。東京Ｖといえば、「ヨミウリ」時代からブラジル色の強いチームだけにアルゼンチン人監督が指揮することでどのような化学変化が生まれるのか、注目される。
　一方のＣ大阪は、不安定だった守備の立て直しに加え、あっという間にＡ代表にまで駆け上がった大久保が、フランスでの経験を活かしてチームに戻って、どのようなパフォーマンスを見せるかが最大の関心事だ。

---

　エンボマ、ロペスを欠く東京Ｖは右から柳沢、林、米山、三浦と並んだ４バック、Ｃ大阪はやはりジョアンが欠場で中央に長いブランクから復活した柳本、右に鈴木、左に古賀の３バックでスタートした。

　序盤の両チームは左サイドに位置した徳重、三浦がそれぞれ切れ味のあるプレーでチャンスを作る。しかしこれといったビッグチャンスもなく淡々と時間が経過した12分、右サイドにスペースを見つけ上がったSB柳沢が、クロスを上げると見せてさらに前進し、思い切り良く右足でのミドルシュート。GK下川のポジションがやや前目だったが、一直線に左サイドネットに突き刺さってはシュートの素晴らしさを褒めるべきだろう。少数ながらも駆けつけたサポーターも大喜びだ。

　Ｃ大阪はまたしても早い時間帯での失点を喫した。悪癖は治らないものなのか。しかし、監督、選手、サポーター誰もがもう慣れっこになったようだ。慌てる様子は微塵もない。じっくり攻めれば逆転できるはず、と信じているのだ。

　クロスに走りこんだ西澤が柔らかな胸のコントロールからボレーで狙うがシュートに力がない。東京ＶもラモンがFKを狙う。Ｃ大阪のブラジル人ボランチ、アクセウが攻撃参加し何度かミドルを放つが精度は低い。東京Ｖの２トップ桜井、平本はスペースを突く鋭い走りこみで、スピードに欠けるＣ大阪DFを混乱させる。

　注目の大久保はどことなく蓄積した疲れが感じられるが、時折キラリと光るプレーでスタジアムを沸かせる。前半終了間際には胸でトラップしたボールの落ち際を早いタイミングでジャンプボレー、さらに西澤のポストの落としをトゥキック気味に素早くシュートと東京Ｖ守備陣をひやりとさせるが同点ゴールとはならない。　
　東京Ｖの４バック・ドイスボランチの守備重視のシステムにスペースを消されたため、Ｃ大阪は攻めあぐんだ前半だった。

---

　後半、同点を狙うＣ大阪の強力なアタッカーたちは、一点のリードを意識してリトリートして網を張って守る東京ＶのDFを何とかこじあけようとするが、あと一歩というところでかわされてしまう。東京Ｖはカウンターから余り人数をかけずに攻め、桜井・平本の２トップの良質の動きでチャンスを作るが実らず、０−１の局面が継続する。

　Ｃ大阪の決定的なシーンは65分過ぎた頃、連続して訪れる。森島からのクサビを受けた交替出場のバロンからボックスの中へスルーパスが通る。しかし抜け出た大久保のプッシュは勘よくGK高木が飛び出し身体に当てる。さらに攻め込むＣ大阪は、左サイドに入ったレフティ佐藤から再三クロスが入るようになる。そのクロスをGK高木がキャッチしきれずこぼすところを抜け目なく狙ったバロンのシュートは、ゴールカバーに入った林が辛うじてクリアした。

　西村監督は最後にアクセウに替えて眞中を投入し、フルパワーで同点を目指していく。しかし逆効果として東京Ｖのカウンターが冴え渡ることになる。それが実ったのは87分だ。飯尾からゴール正面のラモンにパスが出る。ラモンのシュートを警戒したＣ大阪ＤＦが一瞬フリーにしてしまった山田へスルーパスが通る。これを冷静に決め、２点目は駄目押しゴールとなった。そして勝負は決した。

---

　開幕の神戸戦以来の無得点試合を演じてしまったＣ大阪。引いて守る東京Ｖ守備網をとうとう破ることができず、昨年経験したＪ２での戦いぶりを思い出させるような展開となってしまった。しかし、褒められるべきは東京Ｖの高い守備意識だろう。それも早い時間帯での思わぬ先制弾が決まると、守備に対する集中力は一層増した。若いチームだけにこの勝利を自信としてしまうことだろう。だが、降格レースはまだ始まったばかり。オジーの手腕に期待だ。