アビスパ福岡　サポーター通信　〜不安定な４−１というスコア 　レポート／kohey

　０５年の開幕戦、鳥栖との開幕戦でドローに終わったアビスパ福岡。ＧＫと１対１のチャンスを何度も作りながら、肝心のところで決めきれず、3-0で終われる試合を、下手をしたら1-2でひっくり返されそうになるなど、特に1-1になってからの展開はヒヤヒヤものだった。悪い流れを自分たちの力で断ち切れないあたりを見ると、今シーズン昇格「最右翼」との下馬評にも、首を傾げたくなってくる。

　そんな中迎えた、ホームでの開幕戦。水戸ホーリーホックとの試合を楽しみに、1万１千人以上の地元サポーターやファンが、博多の森へ足を運んだ。試合は、序盤から水戸が積極的に前からプレッシャーをかけてくる。アビスパの左サイドでアレックスがボールをキープすると、この日、１つ前にポジションを取る田中にカッチリと高い位置でプレスをかけ、プレーエリアを制限してくる。

　そのプレスの位置の高さから、昨シーズン天皇杯でのレッズ戦や入れ替え戦の柏レイソル戦で、もしかするとヒントを得たのかと思った。J2でアビスパを相手に積極的に前からプレスをかけてボールを奪いに来るチームは少ない。というか、ほとんどない。しかし、レッズやレイソルは、前線からプレッシャーをかけるとすぐに慌てふためくアビスパを知っていた。だからこそ、前からボールを奪いに来た水戸にその姿がダブったのだ。


　この日、左サイドに入った田中は、窮屈そうだった。アレックスから縦パスが入っても、足元ばかりにボールを収めるため、水戸の格好の餌食となった。当然、左サイドは、昨日不全に陥った。さらに、アビスパの選手の主体的なアクションが少ないことが、さらに攻撃を停滞させた原因でもあった。有光が左に流れてボールを受けようとするが、孤立。フォローは皆無。一人が動き出しても、２人目の動きはない。攻撃の連動性は、極めて低かった。

　最終的に有光のドリブル突破から得たFKから、ホベルトがヘディングで先制点を挙げたが、どうやって攻撃を組みたてていくのか、誰を仕掛けのキーマンとするのか、全く見えてこない。その１分後、すぐさま失点を食らう。１本の縦パスに反応したデルリスが、ドリブルで一人持ちこみシュート。ボールは、ゴール左の隅に吸い込まれた。開幕の鳥栖戦の悪夢が頭をよぎる。失点シーンは、センターバックの宮本と岡山の２人が、オフサイドポジションにいた選手に対してオフサイドを取ろうとしたため一瞬ストップしてしまい、デルリスに対応したポジションを一瞬取り損なってしまったことが原因だった。それはある程度仕方ないが、それよりもあれほど簡単に縦パスをいれさせてしまったことも大きな原因の一つだった。

　一見堅守に見えるアビスパの守備網。しかし、実際は・・・。こんなシーンがあった。水戸が最終ラインでボールをキープ。松下が自分のポジションを空けて、奪いにいった。しかし、ボールを動かされて結局、松下が前に出たために生じたスペースを使われて、結局アレックスの背後のスペースまでボールを運ばれてしまった。このとき、松下が自分のポジションを空けてプレスにいっているのだから、グッと最終ラインを上げて、松下の後ろのスペースを消しながら、例えば、相手のプレーエリアをサイドに押しやり、プレーエリアを制限したりすることで、ボールを意図的に奪えたはずだが・・・。

　最終ラインは間延びしたままで、松下のスペースはポッカリ空いたまま。松下が、主体的にボール奪取を狙った意図のあるプレスをかけているのに、周りは反応しない。どうやってボールを奪うのか、チームとしての共通認識の不足を感じさせた。現代サッカーで重要なのは、失点をしないための守備ではなく、どれだけ意図的に攻撃をするのか、そのための第一歩としての守備でなければいけない。今のアビスパにとって、その攻撃の第一歩としての「守備」は、ほとんど感じられなかった。守備のための守備が多いほど、意図的な攻撃は展開が難しいのだから・・・。


　結局、中村北斗が２得点に絡む大活躍を見せて、久しぶりの４-１の大差で勝利をものにした。だが、スコアほど内容が良かったわけではないのも事実。守備の不安定さは、去年から変わらない。水戸の拙さにも助けられ、４-１で勝ったが、チームは去年と比べてさほどレベルアップした印象はない。唯一の救いは、中村の台頭と新しいブラジル人選手か。

今年もまた厳しく、険しい戦いが待ちうけているようだ。