アルエット熊本　サポーター通信　〜目標修正 　レポート／川邊　宏次郎

　４月に沖縄で開幕した第32回Ｋｙｕリーグ（九州リーグ）。早いもので先日の大分ラウンドで６節が終了し、全日程の三分の一が終了した。我らのアルエット熊本の目標はもちろん優勝であり、その先に見えるのは３年ぶりのＪＦＬ復帰である。だが、前ラウンド終了時点での成績は２勝２敗の５位。優勝ラインが２〜３敗と言われている今期のＫｙｕリーグにあって、すでに後がない状況で大分ラウンドを迎えることになった。ちなみにＫｙｕリーグは、いわゆるＨ＆Ａではなく、九州各県持ち回りの集中開催。２週間に１度、土日に各チーム２試合を消化する。

　アルエットの今回の対戦相手は前年の準優勝であるヴォルカ鹿児島、そしてデフェンディングチャンピオンの沖縄かりゆしＦＣの２チーム。かなり厳しい対戦ではある。しかしここで勝てないようでは優勝は見えてこない。まずは５月２９日の土曜日、ヴォルカとの対戦。アルエットは３−５−２の布陣。アルエットの攻撃の要は両サイドの野元と森本の２人。右の野元はＪＦＬ時代にＪＦＬ選抜にチームから唯一選ばれ、ウズベキスタン代表の試合に先発した逸材。そして左の森本は高校時代は山口県選抜、大学時代も九州大学選抜に選ばれている期待のニューカマー。この２人のスピードとテクニックがアルエットの生命線となっている。

　対するヴォルカはＫｙｕリーグ通算２０６点を奪っているエースＦＷ西を要し、元Ｊリーガーを各ポジションに配置した強豪。だが昨年の対戦成績はアルエットの２勝。決して分が悪い相手ではない。いよいよキックオフされ、試合が始まった。序盤からペースを握るのはアルエット。相変わらず両サイドが調子いい。そして迎えた前半１６分、トップ下の田尻が右サイドを突破しファーサイドにセンタリング、これを詰めていた森本がヘッドで合わせて先制した。森本は身長１７０ｃｍにも満たないが抜群の身体能力でヴォルカデフェンダーに競り勝ってのヘディングシュートだった。そうそう、アシストを決めた田尻もアルエットを支える中心選手の一人。高校時代は２年生ながら国見高校のレギュラーとして活躍し、選手権優勝を経験している。


　話を試合に戻そう。先制した後もペースを握るのはアルエット。その後もチャンス山を築いていく。が、いかんせん決定力がない。シュートのほとんどは枠すら捉えられない。野元のミドルもバーに嫌われた。攻めながら追加点が奪えないアルエット。結局、前半はリードして終えることができたものの嫌な雰囲気が包んでいた。

　後半、序盤こそアルエットが攻めるも中盤以降は地力に勝るヴォルカがペースを握っていく。だが相手のシュートミスなどもありなんとか終盤まで１−０で試合を進める。後半も残り１０分、アルエットは完全に引いて守りを固める。が、ここでついに悪夢の一瞬がおとずれた。４１分、ＣＫを相手エースの西に決められ同点に追いつかれてしまった。これで５試合中、４試合でのＣＫからの失点。デフェンス陣の連携不足は著明だ。結局、この後は追加点が奪えず、試合はＰＫ戦へ突入した。

　Ｋｙｕリーグには引き分けがない。９０分で試合の決着がつかない場合、即ＰＫ戦となり、勝ったチームに勝ち点２、負けたチームに勝ち点１が与えられる。そのＰＫ戦、アルエットＧＫの城定が相手の１本目をストップするもアルエットは２本を失敗し４−５で負けてしまった。試合終盤までほぼ手中にしていた勝ち点３。しかし終わってみれば１しか残っていなかった。この敗戦によりアルエットの優勝に黄色信号が完全に灯ってしまった。


　続く日曜日、敗戦のショックを引きずったままアルエットは沖縄かりゆしＦＣと対戦。かりゆしは言わずと知れた地域リーグ界の強豪。元五輪代表の松原をはじめとして多数の元Ｊリーガー、そしてブラジル人選手を抱えている。勝つのは厳しいがここで負けると優勝の可能性はほぼ消滅。なんとしても意地をみせてもらいたいところ。だが試合開始僅か１分、ＣＫから早くも失点。もうすでに見慣れた光景だった。

　しかしこの失点で目が覚めたのかその後はアルエットが完全にペースを掴む。どっちが首位のチームかわからないほどの怒涛の攻めだった。が、昨日のヴォルカ戦同様にチャンスをつくるものの決定力に欠きまくり同点弾を奪えない。イライラがつのる中、やっと３５分、アルエットデフェンダーの松浦がＣＫのこぼれ球を押し込み同点に追いつくことに成功。昨日とは逆にいい雰囲気でハーフタイムを向かえることができた。

　後半、まったくの五分の展開。だがやっぱりここでＣＫでやられてしまう。後半１０分、きれいにヘッドであわされてしまった。これでエンジンがかかったかりゆしＦＣ。怒涛の攻めを展開する。アルエットのデフェンス陣もなんとか踏ん張るも後半３５分、３点目を献上するとその後も２点を奪われ（その内１点はまたもやＣＫ）結局１−５で大敗してしまった。決めるところで決めれないチームと決められるチームの差が如実に現れた試合だった。


　これでアルエットは２勝４敗。優勝の可能性はほぼ消滅。それどころか１０チーム中７位に転落し県リーグ降格ラインである９位に近づいてしまった。開幕当初、優勝を目標に掲げたアルエット熊本。しかし目標は優勝から残留に修正しなければいけないようだ。