YKKを圧倒！！田崎ペルーレが４年連続決勝進出を果たす。 　取材・文／中倉一志

第24回全日本女子サッカー選手権大会　準決勝　YKK東北女子サッカー部フラッパーズvs.田崎ペルーレＦＣ
2003年1月25日（土）13:40キックオフ　西が丘サッカー場　観衆：656人
試合結果／YKK東北女子サッカー部フラッパーズ１−３田崎ペルーレＦＣ（前０−１、後１−２）
得点経過／［田崎］鈴木（28分）、大谷（49分）、山本（73分）、［YKK］五十嵐（85分）


　強い。西が丘に登場した田崎ペルーレの第一印象だ。１回戦から各会場で全日本女子サッカー選手権大会を取材してきたが、ダイナミックさと組織力という点では他を抜きん出ているのではないか、そんな印象を強く持った。ボールが動く範囲の広さ、ゴール前に飛び出していくの迫力、サイドを突破してからのクロスボール、そしてＤＦラインの安定度、どれをとっても他のチームとは一味違っている。準決勝で顔を合わせたYKKを一蹴したのも当然のことだったかもしれない。

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　田崎のフォーメーションは３−５−２。２トップを勤めるのは、ともに日本代表の大谷と鈴木。鈴木が両サイドのスペースに流れてボールを引き出し、大谷が中央でゴールを狙う。この２人の動きをフォローするのが1.5列目に構える山本。スペースに流れる鈴木をフォローし、そして自らもスペースを見つけて前線に飛び出していく。登録上は２トップのシステムになっているが、どちらかといえば３トップに近い連携を見せているようだ。

　その３人の動きをフォローするのが２列目の新甫だ。身長147センチの小柄な体格ながら、ボールキープ力とテクニックは抜群。独特のリズムとタイミングで田崎の攻撃にアクセントをつけている。さらに両サイドからは土橋、早坂の両ＷＢが積極的に押し上げて正確なクロスボールをゴール前に供給する。そしてチームをまとめ上げるのがワンボランチの日本代表ＭＦ川上。的確なポジショニング、機を見て仕掛ける攻撃参加、勝負どころを抑える勘のよさ。チームの要としてその存在感は抜群だ。

　相手チームとの力の差があるため、攻撃ばかりに目が行くが守備面でも堅実さを見せる。Ｌ・リーグで８試合戦って５失点の守備の中心は日本代表ＤＦの磯崎。その磯崎が若い白鳥と佐野を引っ張って相手の攻撃を封じ込める。そしてゴールマウスを守るのは日本代表経験を持つ坂田。経験がものをいう守備面で磯崎、坂田の両ベテランが果たす役割は大きい。こうした才能溢れるイレブンが攻守にわたって組織立ったプレーを行うのだから強いのも当然。全日本選手権で過去3大会連続して決勝進出を果たしているのもうなづける。

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　そんな田崎は、試合開始直後からボールを支配、圧倒的優位に立って試合を進めていく。低い位置に構える川上から出る指示と、その川上のボール裁きでチームはダイナミックに動いていく。他のチームと大きく違うのはボールを動かす意識が高いこと。必要以上にボールをキープせず、とにかくボールが良く動く。そして、そのボールがピッチ一杯に広がっていくのも田崎の特徴だ。サイド攻撃はサッカーの基本だが、これほど広くピッチを使う女子チームは、今大会では田崎だけだろう。

　立ち上がりの３分、土橋が放ったシュートを皮切りに前半だけで放ったシュートは14本。10分に大谷が放った決定的なシュートを始め、数え切れないほどの決定機を演出した。準々決勝で伊賀ＦＣくノ一を下して勢いに乗るYKKだが、その攻撃の前に防戦一方。自陣から出ることさえ許してもらえなかった。「前半、風とか、グラウンドの状態が悪かったんで、その辺で動きがちぐはぐした」とは仲井昇監督（ペルーレ）だが、試合の主導権は完全にペルーレのものだった。

　そして28分、ペルーレにゴールが生まれる。ハーフウェイライン付近で川上からのバックパスを受けた磯崎がゴール前へフィード。それを受けた新甫が独特のリズムからスルーパスを繰り出す。そこへ走りこんできた鈴木が左足で合わせてYKKのゴールネットを揺らした。４人が絡んで、ダイナミックな展開から細かなスルーパスで締めくくったゴール。田崎の特徴が良く表れたゴールだった。

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　後半に入ると、風上に立ったYKKが前に出てくるようになったが田崎は落ち着いたもの。しっかりとボールを大きく動かして自分たちのペースを見失わない。そして49分に山本がドリブルでYKK守備網を切り裂くと、その山本からのラストパスを大谷が決めてリードを広げ、73分には山本が３点目をゲット。事実上、試合を決めてしまった。対するYKKは終了間際の85分に五十嵐が１点を返すのが精一杯。結局、YKKの放ったシュートは、この１本だけ。力の差は否めなかった。

　これで４年連続の決勝進出を決めたペルーレ。３年前に初優勝して以来、決勝戦では悔しい思いを続けてきたが、明日の試合では３年ぶりの女王奪回を目指す。しかし、「今シーズンも含めて、ここ３シーズンくらいベレーザに勝っていない。勝ちたいのは当然だが、自分たちのサッカーを、ボールを早くつないで、動かして、いい形でっていうのを目標にやっているので、その結果が最終的に勝てればいい」と仲井監督（ペルーレ）は謙虚な姿勢を崩さない。さて、決勝戦ではどんな戦いぶりを見せるのだろうか。

※このレポートは「fantasista online magazine 2002CLUB｣に掲載されたものです。