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　第82回全国高校サッカー選手権大会

鮮烈デビュー！初陣・筑陽学園が名門・桐蔭を一蹴。
第82回全国高校サッカー選手権大会　２回戦　筑陽学園vs.桐蔭学園

2004年1月2日（金）12:10キックオフ　三ツ沢球技場　観衆：10,000人　天候：晴
試合結果／筑陽学園４－１桐蔭学園（前４－１、後半０－０）
得点経過／［筑陽］西野（11分）、青栁（18分）、仁科（20分）、西野（26分）、［桐蔭］森田（33分）

取材・文／中倉一志

　鮮烈なデビュー戦だった。11分に挙げた先制点から15分であっという間の４得点。全国の高校サッカーファンは度肝を抜かれたことだろう。インターハイを含めて筑陽学園にとって全国は初の舞台。横浜FMの久保をはじめ、幾人ものＪリーガーを輩出しているとはいえ、その名前は全国的には無名といっていい。「１－０、０－１。そんな展開だと思っていた」（吉浦監督・筑陽学園）。しかし、終わってみれば４－１。そのスピーディなサッカーは全国でも十分に通用することを示して見せた。

　先に攻め込んだのは桐蔭学園だった。４－４－２のボックス型の中盤を敷く桐蔭学園は、ボールを速めに前線に送り込み、栗原選手を中心に細かいパス交換から相手を崩すと、井上選手のスピードを生かして筑陽ゴールに襲い掛かる。ファーストシュートは２分、ペナルティエリアに入り込んだ井上選手が右足を振り抜く。しかし、これは青栁選手が身体を寄せてブロック。「あのプレーで選手が落ち着いた」（吉浦監督）。そして、筑陽学園の攻撃が始まった。

　筑陽学園の全国初ゴールは７分、流れるようなパス回しから生まれた。２列目中央から仁科選手がトップの位置にいる桑原へ当てる。そのポストプレーから再びボールを受けた仁科選手が左サイドを駆け上がってきた久光選手へ。そしてスピードに乗ったまま久光選手が上げたクロスを中央で待つ西野選手が合わせた。すべてワンタッチで行われた連携プレー。その鮮やかな一連のプレーに、地元桐蔭学園ファンで埋められたスタンドから思わず感嘆の声が上がる。そして、これを合図に筑陽学園の猛攻が始まった。

　筑陽学園のフォーメーションは４－３－３。最終ラインの前に３人のＭＦが並び、最前列には西田選手と桑原選手。真中のやや下がった位置に仁科選手が構える。最終ラインは決して高くはないが、前に出てくる相手をボランチと協力してボールを奪うと桑原選手へ供給。その桑原選手のドリブル突破とスペースへの球出しでチャンスを作り、両サイドのＭＦがフォローする。西田選手は前線に張り、桑原選手と仁科選手がバランスを取りながら上下動するのがスタイルだ。そして最大の特徴はスピードに乗ったドリブルにある。

　細かいステップ、大きな切り返し、そしてスピード。前の３人に限らずに巧みなドリブルの技術を持つ選手たちは、ボールを持つと相手に突っかけるようにして勝負を挑む。この試合では、そのスピードを警戒して桐蔭学園がラインを下げたため、筑陽学園には自由に勝負を仕掛けられるスペースがあった。自由に走り回る桑原選手を桐蔭学園は止められない。何とか防ごうと人数をかけると、空いたスペースを仁科選手に使われ、更には西田選手に最終ラインを切り裂かれた。

「ひとつ間違えば１人で行ってしまう。いつもドリブルするところと、パスするところの判断を盛んに言っているが、今日はあいつらの判断が正しかった」（吉浦監督）。18分、ＣＫのクリアがペナルティエリアにこぼれたところを青栁選手が蹴りこむ。続く20分、桑原選手が左サイドで相手をドリブルで振り切ってクロスを入れると仁科選手が二アに飛び込んで３点目。さらに26分、片原選手が右サイドのスペースにボールを放り込む。西田選手とＧＫ荒井選手の競争になったが、一歩速く追いついた西田選手が無人のゴールにループシュートを決めた。

　それにしても桐蔭学園にとっては魔の時間帯だった。立ち上がりにショートパスの交換とスピードを生かして筑陽学園を慌てさせたように、互いの力はそれほど差があったようには思えない。だが、守備の甘さを修正する間もなく畳み込まれてしまった。点差が開き、筑陽学園に余裕があったこともあるが、31分に長身の森田選手を前線に投入してからは、１点を返し、なおも互角に戦ったことを考えると選手たちにも悔いが残ったことだろう。

「３点だったらなんとかなると思ったんだが。落ち着かなければいけない時間に、チャンスを確実に取られてしまった。一歩間違えればこうなるんです」。山本富士雄監督も悔しげに試合を振り返る。67分には筑陽学園の青栁選手が２枚目のイエローカードを受けて数的有利にたったが、３点のビハインドを跳ね返すには、残り時間はあまりにも少なかった。

　さて、三ツ沢球技場に訪れた高校サッカーファンに強烈な印象を与えた筑陽学園。福岡県では強豪として知られているが、東福岡と東海第五の壁に阻まれて全国への道を閉ざされつづけてきた。しかし、初めて見せた筑陽サッカーは、サッカー王国九州の名に恥じないものだった。それでも15年目にして全国初出場を決めた吉浦監督は決して謙虚な姿勢を崩さない。上位進出の手応えを掴んだのでは」との問いには、「なんがですか。青栁がおらんとに、どけんするとですか。明日はどげんもならんでしょう」と博多弁で控えめに答えた。

「いろんな奴のことを思い出します。卒業生がいるから今があるわけで。初めて出て初勝利。いいですね。嬉しいです」。吉浦監督はそう続けた。取材陣の中から「初めてというか、久しぶりに見た。かなりレベルは高い」との声が出た筑陽学園のサッカー。初出場とはいえ、波に乗れば今大会の台風の目にもなる可能性を秘めている。２回戦の相手は丸岡高校。出場停止の青栁選手のためにも３回戦突破に挑む。

（筑陽学園）			（桐蔭学園）
	GK：	柳源一郎		GK：	荒井雅人
	DF：	青栁雅信　眞戸原和也　中野裕祐　阿比留誠		DF：	武宮雅純　小川祐樹　増澤和尚　森栄次郎（56分／山口卓也）
	MF：	片原潤　桑原剛　松尾賢二　久光直樹（72分／原大輔）		MF：	八太優樹　栗原明洋（56分／後藤真樹）　井上渉　有田祐大
	FW：	西野涼　仁科友歩（66分／川瀬翔）		FW：	佐本圭（31分／森田彰）　永瀬裕記

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