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第82回全国高校サッカー選手権大会 開幕戦 仙台育英vs.奈良育英
2003年12月30日（火）13:10キックオフ 国立霞ヶ丘競技場 天候：晴 観衆：7071人
試合結果／仙台育英４−１奈良育英（前２−０、後２−１）
得点経過／［仙台］石井（39分）、佐藤（39分）、水上（47分）、太田（75分）、宮尾（76分）
取材・文／中倉一志
冬の風物詩、全国高校サッカー選手権大会が今年も国立にやってきた。全国各地で行われた予選参加校総数は3991。その厳しい予選を勝ち抜いた各都道府県代表48チーム（東京都代表のみ２校）が頂点を目指す。「我々選手一同は、ゴールデンエイジとしての誇りを持って、夢と勇気を胸に、勝利の歌が降り注ぐ国立競技場を目指し、正々堂々とプレーすることを誓います」。佐野日本大学主将、稲葉久人選手の高らかな選手宣誓で、大会は幕を開けた。
開会式終了後、高校生サッカー選手にとっての憧れである国立競技場のピッチの上に現れたのは、宮城県代表・仙台育英高校と奈良県代表・奈良育英高校。仙台育英は29回目、奈良育英は10回目の出場と、開幕戦は高校サッカーファンにはお馴染みの２チームの対戦となった。奈良育英のスピードあるサイドアタックを、堅守を誇る仙台育英がどうやって凌ぐか。サッカーファン注目の開幕戦は12:10にキックオフのホイッスルが鳴った。
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一方、仙台育英も簡単にはゴールを許さない。県予選では４試合を戦って１点差が２試合、PK戦が２試合と厳しい戦いを勝ち抜いてきただけあって、いきなり押し込まれる展開にも慌てるそぶりは見せない。16分の奈良育英の決定的な場面ではGK山下がファインセーブを見せてゴールを守った。「まずは我慢の時間帯」。自ら、そう言い聞かせるかのように激しく動き回る奈良育英の攻撃を防ぐ。こちらも前評判通りの堅守を見せる。
「彼らの自信を持っているところを何とか抑えれば、あとはうちの流れになってくるんじゃないかと話していた」（吉井秀邦監督・仙台育英）
「前半の20分位から、（サイド攻撃を）止められたことが、ちょっと弱気になって、それでズルズルきた」（上間政彦監督・奈良育英）
26分、仙台育英の鈴木浩晃選手が巧みなステップワークを見せて右サイドを突破する。そして、このプレーを合図に仙台育英が前に出始めた。マイボールをシンプルに前線に当てる仙台育英は、２トップの佐藤幸大選手、水上選手と、切れのアルドリブルを見せる鈴木浩昭選手を中心に高い技術でゴールに迫る。ここまでシュートが打てなかったのが嘘のようにゲームの主導権を奪い返した。そして前半終了間際の39分、仙台育英が先制点を奪った。
左サイド、ゴールまで約40メートルの地点で得たFKのチャンスに石井選手がゴール前にボールを送り込む。ゴール前に走りこむ水上選手。奈良育英ＧＫの安達選手がボールをキャッチしようと前に出た。それに反し、強風を受けたボールはゴール前でぐっと伸びる。慌てて戻る安達選手。しかし、ボールは安達選手の頭上を越えてゴールネットに吸い込まれた。さらにロスタイム。勢いに乗る仙台育英はＣＫのチャンスに佐藤選手が右足で合わせて２点目をゲット。わずか１分の間に２ゴールを上げて前半を折り返した。
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「結果として負けたことじゃなくて、最後まで自分たちのやろうとしたことは誉めてやりたい」（上間政彦監督）。両チームの間にスコアほどの差はなかった。主導権を握りながらゴールを奪えなかった前半の立ち上がりと、前半ロスタイムの２失点目が勝負の分かれ目になった。後半の立ち上がりは良く追い上げたが、43分にノーゴールの判定を受けた際どいシュートシーンが悔やまれる。ほんの少しの運があれば、試合は全く別のものになっていたかもしれない。
「全て含めて運があったと思いますね。大舞台に強い選手たちなんじゃないかなと、改めて感心させられてます」とは吉井秀邦監督。４得点は練習試合を含めても初めて。しかも、どの得点も実に効果的な時間帯に生まれた。「この初戦だけを考えてきましたので次のことはこれから帰ってゆっくり考えます。今日１日は、国立で１勝を挙げたということ、宮城県で初めて１勝を挙げたということを喜び尽くしたいと思います」。そう語ると満面の笑みを浮かべて競技場を引き上げた。
