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KIRIN WORLD CHALLENGE キリンカップ2005 - Go for 2006! - 日本代表vs.ＵＡＥ代表
2005年5月28日（金）19:25キックオフ 国立霞ヶ丘競技場 観衆：53,123人
試合結果／日本代表０−１ＵＡＥ代表（前０−０、後０−１）
得点経過／[ＵＡＥ]アロ・アリ（69分）
取材・文／貞永晃二
６月決戦を直前に控え聖地・国立に日本代表が帰ってきた。昨年２月のイラク戦（２−０）以来１年３カ月ぶりである。キリンカップ初戦、インジュリータイムでの一発のカウンターに沈んだペルー戦（０−１）を受けてそれを繰り返さないことをメインテーマに臨んだ試合である。
メンバーとしては三浦、遠藤、玉田に代わって加地、小野、大黒がスタメンとして登場した。ジャパン・ブルーに染まったスタジアムの期待は、帰国早々の小野とペルー戦で光るものを見せた大黒に集まった。
日本サッカーミュージアム内に設けられることになった「日本サッカー殿堂」に掲額された20名の「偉人」たちが試合前大型ビジョンで紹介された。中でも釜本、杉山、八重樫らかつての名選手たちと並んで日本サッカーにとって「父」と呼ぶべき存在であるデットマル・クラマー氏も元気な姿を見せた。この試合を見て、40数年前から日本の決定力不足は変わっていないなあとおそらく思われたことだろう。
キックオフ早々、引いて守ると見られていたＵＡＥは意外にも前線から激しく日本選手を追い回した。しかし日本は余裕を持って回しペースをつかんでいく。オープニングシュートは小野。しかし大きく外れる。そしてその小野からのスルーパスを巧みなボディーシェイプで受けた大黒だがDFも突破を許さない。
ペルー戦でフィットしなかった日本のセットプレーだが、サインプレーを見せる。右サイド三都主がクロスと思わせておいて、戻し気味に小笠原へ、そしてタテに走った小野にパスが出るという形だ。しかしクロスは合わない。一方ＵＡＥは日本のプレッシングを嫌がってか、あまり攻めに意欲的ではない。日本陣内でのFKも自陣に戻してしまうほどだ。しかし昨年オリンピック予選でU-23日本代表を苦しめたマタルは健在、思い切りのいいミドルを狙ってくる。
25分、小野の浮きダマを扱う高い技術がスタンドを沸かす。左足の柔らかなタッチでDFを翻弄し右足でボレー。しかしゴール天井に落下する。さらに三都主が小笠原とのワンツーで抜け低いクロスを入れる。ニアに走った小野が合わせるが決められずピッチを叩き悔しがる。たたみかける日本は小笠原のパスから大黒が狙うがGKが押さえる。せっかくの初スタメンのチャンスにやや力みすぎの大黒。三都主も二度三度と突破を仕掛けるが、単調なフェイクにＵＡＥのDFは引っかからない。しかし日本は小野の加入で明らかにペルー戦の流れの悪さを払拭したようだ。あとは「決める」だけなのだが・・・
残り５分、日本の攻め疲れに乗じてＵＡＥが連続攻撃に出てハリル、マタルがミドルでGK川口を脅かす。しかしＵＡＥもまた決定力に問題を抱えていることを露呈する。勝負は後半に持ち越されることになる。
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ＵＡＥもじっと耐えて逆襲を狙う。日本ゴール前へロングフィード、坪井のクリアが小さくムバラクがダイレクトで狙う。川口の正面で助かった日本。ジーコ監督が動く。鈴木に代えて玉田投入だ。
69分、この試合唯一の得点シーンが訪れる。残念ながら決めたのは白いユニフォームのチームだった。そして決して「一発のカウンター」ではない完璧に組み立てられたチャンスだった。センターサークルでムバラクが持つ。ハリルにくさびが入る。ボールをムバラクに戻すとほぼ同時にアロ・アリが飛び出す。小野が一、二歩追うが、坪井が追ったためマークを引き渡した格好になる。ムバラクのダイレクトパスは美しい弧を描いてアロ・アリの走るコースに通った。川口の体重が左にかかった瞬間に打たれたシュートはゴール左スミに吸い込まれた。ＵＡＥの三人に対してあまりに甘いチェックだった。まるでフォーメーション練習のようにボールが流れていった。しかしまだ時間はある。
日本の反撃の中心はやはり小野だ。右サイド深くに侵入し一人をかわして低いクロス。大黒がワントラップし打つとDFに当たって右ポストを叩く。さらに小野のクロスに大黒、玉田が飛び込むが大黒のヘッドは左にそれる。坪井が退き本山が入る。ＵＡＥの放り込みからマタルのシュートが飛ぶ。本山の投入で元気づいた日本は玉田のミドル、小野のボレーと続くがワクをとらえることすらできない。そして最大のチャンスも小野の正確なクロスがファーポストへ。福西が渾身の力でダイビングヘッド。しかしGKが立ちはだかる。
田中に代えて茶野を入れていた日本にとって４人目のカードは稲本。福西に代わった。87分、日本はまたFKでトリックを見せる。三都主のFKはタテに走った本山へ。しかしクロスはクリアされ茶野がシュートするがはねかえされる。
もう時間はない。ホイッスルの瞬間、ＵＡＥの選手は歓喜した。しかし5万3千人は重苦しい空気に包まれた。負けた悔しさよりも本番２試合への不安が拡大した夜だった。
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こちらに不安があるならば、ホームのバーレーンにも弱みはあることを忘れてはいけない。相手を完璧だと思ってはいけない。そんなはずはないのだ。北朝鮮の成績を考えれば、日本に負けても３位の確保はバーレーンにとって容易いはずだ。ということは思い切って日本にぶつかることができることになる。かといってスタートから超攻撃的にくるとは限らない。リトリートして守り、ワンチャンスに１点を狙って逃げ切ろうとする可能性もある。３−０のリードもわずか6分間で同点にされてしまうようなことが起こるのがサッカーなのだ。何が起こるかはまさに神のみぞ知るだ。
とにかく日本は冷静に相手の出方を見て戦うことだ。Ｊリーグ30チームのプロ選手の中から選ばれた代表である誇りとプライドを持って激戦にのぞんでほしい。私たちにできることはとにかく応援だけだ。それもタイムアップの笛がなるまで。これから先のことは終わってから考えればいいのだ。そして決して一喜一憂はしない。フランスへの道の途中、皆身体で覚えたはずだ。
