ブラジル、PK戦制し最大のライバルが待つ決勝へ。
COPA AMERICA PERU2004　準決勝　ブラジルvs.ウルグアイ

2004年7月21日（日）19:45キックオフ　エスタディオ・ナシオナル（リマ）　
試合結果／ブラジル１−１（PK５−３）ウルグアイ（前０−１、後１−０）　
得点経過／［ブラジル］アドリアーノ（46分）、［ウルグアイ］ソサ（22分）


文／中島　泰介

　ブラジルはいつも通りの布陣で、そしてウルグアイはフォルランを下げやや守備的な布陣で準決勝に臨んだが、立ち上がりにチャンスを作ったのはウルグアイだった。開始１分、いきなりコーナーキックを奪い、そのコーナーキックのこぼれ球をゴール前のダリオ・シルバに繋いでＧＫと１対１となるが、ダリオ・シルバのシュートはGKジュリオ・セザールが防いだ。その後もウルグアイの攻撃が続き、３分で４本ものコーナーキックを得る。

　これらを凌いだ後、ブラジルはカウンターを仕掛ける。クレベルソンの縦パスをもらったアドリアーノがドリブルシュート。これをウルグアイのキーパー、ビエーラが止めるが、こぼれ球に走りこんだクレベルソンは続けてビエーラを襲う。これもビエーラがファインセーブ。

　その後少し試合は落ち着くが、12分にウルグアイに大きなチャンスが訪れる。デルガードが中盤左サイドでアレックスをスライディングで止めると、こぼれ球をクリスティアン・ロドリゲスがすぐさま薄くなっているブラジルゴール前にクロスを入れる。ファーサイドに送られたこのボールを追うGKジュリオ・セザールとファン。結局、ファンが下がりながら頭でクリアしたのだが、ボールはすぐ近くに詰めていたウルグアイの選手の前にこぼれた。このボールがダイレクトでダリオ・シルバに。彼の目の前には無人のゴールが広がるだけだ。誰もがウルグアイのゴールを確信した瞬間、ダリオ・シルバのシュートはクロスバーを叩いた。ウルグアイ国民のほとんどが、テレビを見ながら頭を抱えてしまったシーンだろう。

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　それにしても、３人の守備的MFを敷くウルグアイの中盤のプレッシャーは非常に速い。ブラジルが攻撃しようとボールを持つと、２，３のサックスブルーのユニフォームに一気に囲まれボールを奪われる。そして守備が薄くなっていると見るや、すぐさま右のディオーゴ、左のクリスティアン・ロドリゲスがシンプルにボールをゴール前に上げてチャンスを作る。特に右サイドのディオーゴは、クロスや、時間をかけずにゴール前にボールを放り込むことでチャンスを作るシーンが多く見られた。

　この厳しいプレスをかい潜り、ブラジルは16分にアドリアーノの強引なシュート、17分にはオフサイドになったものの、グスタボ・ネリ、アレックス、エドゥのパスワークから、再びアドリアーノのシュートでウルグアイを襲う。

　しかしリズムはウルグアイ。そしてウルグアイが21分に先制する。マイコンのクリスティアン・ロドリゲスに対するファウルによって左サイドでフリーキックを得たウルグアイは、見事ソサの頭で合わせたシュートでゴールを奪った。シュートは正面だったが、ワンバウンドした弾道にタイミングが合わなかったのか、ジュリオ・セザールはこれを防ぐことができなかった。

　その後もウルグアイの攻勢が続く。しかし、ブラジルはやられたままではいられない。34、35、39分とゴールに迫るウルグアイの攻撃を凌ぐと、40分にカウンターからゴールを目指す。まずはアドリアーノがルイス・ファビアーノに向けて、左から鋭いクロスを送る。しかし、これはモンテーロがその前にクリア。前半ロスタイムには、センターサークルやや前方でアレックスがフリーキックを蹴り、ゴール前でルイゾンがポストとなりボールを落とす。これをもらったファンは後ろのエドゥにはたき、最後はエドゥが絶妙なループシュートを見せた。だが、これはGKビエーラが防いだ。

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　とても見ごたえのある前半だった。ウルグアイは守備的な布陣でありながら多くのチャンスを作り、しかもゴールまで奪ってしまった。してやったりの展開だったろう。しかし後半、この展開が激変する。開始１分に、ウルグアイのゴールキックを左サイドで自分達のボールにしたブラジルは、アドリアーノ、エドゥ、アレックスと左から中央へとボールを繋ぎ、最後はアレックスがスペースの空いた右サイドに走りこむルイス・ファビアーノへスルーパスを送る。ルイス・ファビアーノから低く速い弾道のボールがゴール前に送られる（シュート？）。そこへ詰めてきたのはアドリアーノ。ウルグアイのＧＫとＤＦより一歩前でボールに触れ、同点ゴールを流し込んだ。

　その１分後の47分、そして49分にも難しい体勢からシュートを打つアドリアーノ。この大会すでに６ゴールを奪い得点王レースを独走しているが、ゴールへの飢えはおさまらない。そして、いよいよブラジルの攻撃が始まった。

　後半開始から中盤のプレッシャーが甘くなったウルグアイに対し、ブラジルはドリブルでしかけ、そして軽快なパスワークを用いて中盤を突破。与えられたスペースを有効に利用して前に出る。サイドチェンジも効果的で、サイドのスペースを突いた攻撃もよくみられるようになる。54、55、56分と立ち続けにウルグアイゴールに迫る。

　ブラジルの攻撃に耐えるウルグアイ。しかし、決勝に進むためには守るだけではなくゴールが必要だ。そのゴールへの糸口を見つけるために、ウルグアイは61分、ブエーノに代えてフォルランを、そして69分にはMFクリスティアン・ロドリゲスに代え、FWのビセンテ・サンチェスを投入する。一方、ゴールが必要なのはブラジルも同じ。チャンスを作りながらも２点目が奪えないブラジルは、74分にクレベルソンをジエゴ、エドゥをジュリオ・バチスタに代える。

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　ともに、なかなか決定機が作れない時間帯が続いたが、終盤に両国は力を振り絞りチャンスを作る。85分にウルグアイ、サンチェスが中盤左から逆サイドのダリオ・シルバに長いスルーパスを送る。ぴったりのタイミングでパスを受け取ったダリオ・シルバがシュートするが、これはファンがスライディングでブロック。対するブラジルは88分、アレックスがペナルティ・エリア内左にいたアドリアーノにパス。アドリアーノはトラップミスするも、無理な体勢からゴール前にボールを送り、ファーに走りこんだジュリオ・バチスタが角度のないところからダイレクトシュートを放つ。しかし、GKビエーラがゴールを許さない。

　さらに１分後、ブラジルはウルグアイから奪ったボールをマイコン、アレックスとつなぎ、アレックスからのスルーパスをルイス・ファビアーノが絶好の位置で受け取るが、ウルグアイディフェンスがシュートを許さない。そしてロスタイム、ウルグアイのダリオ・シルバがミドルシュートをふかしたあと、試合終了の笛が鳴った。

　決着は今大会初のPK戦に委ねられた。先行はブラジル。両国とも３人目まで全員決めた後、ブラジルの４人目へナートもど真ん中にシュートを決める。そしてウルグアイ４人目は、ビセンテ・サンチェス。彼のシュートをジュリオ・セザールは左に飛び、見事ブロックして見せた。ブラジル５人目のアレックスは、GKの逆を突くシュートを決め、ブラジルの決勝進出が決定した。

　軒並みに優勝候補が敗れていったユーロと違い、コパ・アメリカの決勝には、南米の２大サッカー大国であるブラジルとアルゼンチンのクラシコとなった。この２チームならきっと攻撃的でスリリングな試合を見せてくれるに違いない。