白いスタンドの壁の見えるホーム側ゴール裏

前節の鬱憤を晴らし、レッズがトリニータに完勝
2004年Ｊリーグ　ディビジョン１　１stステージ　第６節　浦和レッズvs大分トリニータ

2004年４月18日（日） 14：05キックオフ　さいたま市浦和駒場スタジアム　観衆：19.232人　天候：晴
試合結果／浦和レッズ４−１大分トリニータ（前３−０、後１−１）
試合経過／［浦和］田中（24分）エメルソン（30分、41分PK、82分）［大分］高松（89分）


取材・文／砂畑　恵

　断幕もない、打ち振られる旗もない、そしてチームを応援するコールもない。アウェイスタンドに陣取るトリニータの声援だけがこだまする駒場。前節のエスパルス戦、流れるようなパス回しから田中の２ゴールで相手をリードしながら、後半に退場者を出したとはいえ、立て続けに４失点。それに対するレッズサポーターなりの抗議の表れだった。

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　ゲームのスタートはスタジアム同様の静けさ。序盤の両チーム、田中とマグノアウベスにそれぞれ１本ずつシュートがあるだけで、ゴール前でのホットなシーンはとんとない。互いの陣内をボールが行き交う。こう書いてしまうと漠然と時間が流れる印象を与えるが、実際は試合の主導権を巡り、火花を散らし合う駆け引きが行なわれていた。縦への長いパスに相手の裏へと飛び出そうとする田中、エメルソン、そして三都主。トリニータは統制の取れたラインコントロールで何度もオフサイドに仕留める。ボールを奪ったトリニータがスモールフィールドの利点を活かし素早く攻撃に移行するれば、レッズのDFが相手を絡める取るようにゴール前への侵入を防ぐ。どちらも退かない我慢比べの様相を呈する。

　前半20分、右サイドを破った吉田が倒されトリニータにFKが与えられる。ペナルティーエリア付近、かなり角度のある位置からのFK。キッカー原田は味方に合せる素振りを見せながら、直接ゴールを狙う。ここはGK都築がボールを弾き飛ばし、レッズは事なきを得た。

　これを境にゲームが急速に熱気を帯びた。24分、相手のクリアーボールを内舘がヘディングで前線にロングフィード。間髪入れずのタイミングに、ラインを高くしたトリニータDFは不意を喰らった。そこを田中が飛び出しGKと１対１に。田中は冷静にゴールに流し込んでレッズが先制。ジリジリした展開にやきもきしていたレッズサポーターから大きな歓声と拍手が沸き起こった。

　28分にはCKの流れから三都主がペナルティーアリア内で倒されPKを奪取。そのPKをエメルソンがGK高嵜にコースを読まれながらもきっちりゴールに沈める。41分には右サイドを崩した田中が弧を描くパスを通し、中央を駆け上ったエメルソンが難なくゴールに蹴り込んだ。レッズはペースを掴むと畳みかけるように押し切った。

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アウェイ側ゴール裏。この日ばかりはアウェイサポーターの掛け声が 響き渡った。

　前半を３失点で終えたトリニータは後半の頭から高松を投入。その高松は46分に梅田の縦パスに反応してDFの裏を取る。エリア外に飛び出したGK都築に寸での所で蹴り返されたが、のっけから好調であることをアピールした。54分にはDFを背負いながら反転して相手のファウルを誘い、ペナルティーエリア手前・中央の好位置でFKを獲得。マグノアウベスの強烈なFKは６枚の壁を破り、そのこぼれ球を山崎がシュートするもわずかに右に切れた。

　ビハインドを跳ね返そうとするトリニータの気迫に、レッズは押された感があった。遡ること48分のFKから絶好のシーンもあったが山田のミドルは右に外れる。62分には山田のボールカットから田中が右サイドを破り、最終的にはDFの間隙を抜けた長谷部がゴール前にマイナスのパスを送ったが、小森田の必死な守備にあって酒井に届かなかった。

　この後、しばらく中盤の潰し合いとなり停滞ムード。だが72分に田中とのワンツーを仕掛けたエメルソンの足にサンドロのタックルが入り、既に警告を受けていたサンドロは退場処分に。点差を縮めるどころか、トリニータは一人少ない人数で闘わざるを得なくなった。

　意気消沈したトリニータに対し、レッズは高い位置からプレッシャーを掛ける。82分のゴールはまさに田中のフォアチャックから始まっている。後半からバックラインに下がった瀬戸に味方がボールを戻すと見るや、田中が猛然と走り迫る。瀬戸はGK高嵜にバックパス。ところが田中はスピードを緩めずボールを追う。高嵜が慌てて前に蹴り出すが、味方ヘのキックはブレて、ボールを拾った長谷部に決定的なパスを前線へ送られた。エメルソンはGK高嵜の間合いを外してハットトリック。この日初めて「エメコール」が起こった。

　前節のこともあり、無失点で抑えたいレッズだったが、89分に山田が背後から瀬戸にボールをさらわれ、結局は小森田からフリーでいた高松にパスが渡ってゴールを挙げられる。終了間際の不用意なプレーにレッズサポーターからは烈しいブーイングとなってしまった。

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「今日は完敗」というハンベルガー監督の弁に語られるように、トリニータには厳しい結果となった。不運な形で１点目を奪われたとはいえ、それ以降の前半は完全に集中を切らせてしまった。後半直後は立ち直りの兆しもあったが、そこで得点がなかったことも足枷となった。ただチーム戦術は選手に根付きつつあり、このまま積み上げてもらいたい。

　最後に来ての失点は頂けないが、レッズの試合運びは全般的に良かったと言える。試合後のエピソードに、選手がスタンド挨拶に訪れた際、攻撃陣は手を挙げたが、守備陣は頭を下げるに留まった。失点に対する悔しさが滲んでいた。インタビューを受けたエメルソンも最初と最後に「応援して下さい」と訴える。これらはサポーターに響いたことだろう。