日本、新顔の活躍で歯ごたえのある相手イランに収穫のドロー。
キリンチャレンジカップ2004　 U-23日本代表vs. U-23イラン代表

2004年2月8日（日）19:20キックオフ　埼玉スタジアム２００２　観衆：21,414人　天候：晴
試合結果／U-23日本代表１−１U-23イラン代表（前１−０、後０−１）
得点経過／［日本］平山（19分）［イラン］モバリ（61分）


取材・文／貞永晃二

　釜山アジア大会決勝（2002年10月）での対戦では、DFのミスもあり１−２と敗れた日本。イラン側は５人が、日本は４人がこの日のピッチに登場した。「谷間」と揶揄されてきた世代がUAE・ワールドユース組と融合し、「結果」を求められる最終予選まで１カ月を切った。

　その日本がスパーリング・パートナーとして選んだイラン。彼らの最終予選は日本とは比較できないほど過酷なものになりそうだ。仮想韓国、仮想中国としての日本との対戦は彼らにとっても貴重な準備試合となるはずだ。

---

　開始直後から、イランがフルパワーで日本に襲いかかった。どのプレーヤーもボールを受けると力強いドリブルで仕掛ける。かつて日本を苦しめたマハダビキア、ミナバンドというスピードと技術をあわせもったサイドの選手の系譜のように左サイドのバダウィが日本のゴールラインまで強引に切りこみクロスをあげる。

　日本も激しいプレッシングで対抗する。そして奪ったボールが右サイド田中隼から田中達（山瀬スルー）、そして飛び出した山瀬へ。ケガからの完全復活を見せたい山瀬のシュートはGKラハマティを脅かした。さらに今野がミドルで、平山の落しから田中達が鋭い飛びだしでと攻めたてる。

　イランもマダンチのパワフルな左足が炸裂、ゴールフレームの右角を叩く。一瞬青いサポーターから声が失われた。「この日の相手は相当手ごわいぞ」誰もがそう思った瞬間だ。日本は今野、山瀬とつなぎ田中達が狙う。イランもカゼメヤンが抜け出しループシュート。展開は五分五分、チャンスはイランにやや多い感じか。



　しかし先制したのは日本。19分のことだった。再三鋭いドリブルを見せていた田中達が山瀬のパス供給でスタート。左サイドで後手を踏んだDFをかわし深々と侵入、中をよく見て左足でクロスを入れる。平山はニアではなく、ファーポストへ逃げ高々とフリーでジャンプ一番、ヘッドで叩きこんだ。派手なアクションはないものの、小さく握りしめた右手こぶしに「やったぞ！」という喜びが満ち溢れていた。満員には程遠い観衆だったが、期待以上の「坊主頭くん」の出来に驚きと喜びが交錯し大歓声となってこだました。

　まだ卒業式も済ましていない高校生。この得点までもしばしば、イランDFにヘッドで競りかって味方にうまく落として見せた平山。浮き球の落下地点に素早くしかも的確に入ることができるターゲットマンとしての才能をかいま見せた。

　日本の先制点のあと一進一退が続いたが、イランのバダウィのドリブルはタテに、カットインして中へと相変わらず日本の守備を混乱させた。そして45分が経過した。

---

　後半開始。山本監督が動いた。狙いは右サイド守備の強化。バダウィ対策といってもいい。右ストッパーに菊地を入れ、徳永を一列上げた。

　61分、同点ゴールはイランMFモバリの直接FKだった。平山も加えた高い日本のカベの上を緩やかに通過したボールは急激に落下し左スミにおさまった。GK林も逆をつかれたか、高い技術を要するキックに空しくジャンプするのがやっとのようだった。１−１、失点の落胆からすぐ立ち直ったゴール裏に陣取るサポーターたちは、大きな声で日本イレブンを鼓舞した。

　同点となり、試合は一段と緊迫感を増した。平山、田中達のツートップを中心にイランゴールを襲い、イランも鋭利なカウンターを繰り出す。そして山本監督は「勝つ」という目的のために森崎浩から根本へ、次に田中達から坂田へ、最後に山瀬から前田へと次々と手札を切った。しかし、イランゴールをこじあけることはできず、逆に根本にミスが出てイランのあわやというカウンターを受けてしまう。

　しかし何とか凌いだものの相変わらずイランペースで進み、やがてアディショナル・タイム。右サイドからのボールをやわらかく胸でコントロールしコンパクトに振り抜いた右足ボレーはイランGKラハマティの出した手にほんの少し触れて、バーの上を通過した。あわや決勝点かと思わせるようなシュートにスタンドが沸いた。そしてタイムアップだ。

---

　イランは強いチームだった。アウェーの不利を克服し日本を苦しめた。ぜひとも予選を勝ち抜きアテネで世界と戦わせたいチームだった。予選での健闘を祈りたい。

　さて日本。平山の陰に隠れてはいるものの、このチームのデビュー戦だった今野、闘莉王も及第点以上の出来だった。今野はその高いボール奪取能力で攻撃の基点にもなって、ある意味中盤に君臨していた。そして闘莉王もラインの中心で大声で守備を統率し、チャンスにはゴール前へ向かった。ただ、攻撃後の戻りの遅さがやや不満が残ったが。

　そして平山相太。敵将・コハン監督をして将来楽しみといわせた彼にさらなる期待がのしかかってくる。チーム立ち上げから何人ものFWが試されてきた。ここで平山にアテネ行きの指定席を予約させていいのか。他のFWの一層の頑張りを期待したい。競争なきチームに栄光など来るわけがないのだから。