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| 学校が隣駅だということもあってか、ビッグフラッグが出現するなど、 完全に成立高校のホームゲームに。 |
第82回全国高校サッカー選手権大会 ２回戦 成立高校vs.佐賀商業高校
2004年１月２日（金）12:10キックオフ 西が丘サッカー場 観衆：5,803人 天候：晴
試合結果／成立高校３−０佐賀商業高校（前半１−０、後半２−０）
得点経過／［成立］宮内（11分、45分）、鳥井（53分）
取材・文／西森彰
Ｊリーグの試合並みに、5,803人ものファンが西が丘サッカー場に詰めかけた。その来場者の大部分は、すぐお隣にある成立高校がお目当て。入り口ではPTAの方々が、成立応援団にタオルマフラーを配布している。最近はこのタオルマフラーによる応援スタイルが高校サッカー界にも浸透しているが、成立のそれはチームカラーのイエローとブルー。ピッチに入る選手たちを、バックスタンドのビッグフラッグとともに勇気づけたことだろう。これがホームの利だ。
一方、アウェーゲームを強いられるのは佐賀商業高校。佐賀県33校の代表は県大会５戦のうち、初戦の唐津西戦以外は全て２点差以内の競ったゲームをモノにして、全国大会への切符を手に入れた。粘り強い戦いが身上だ。「１点差くらいなら粘り強くついてきて、最後に１点とってPK。そういう戦いができるチーム」（成立・宮内聡総監督）と成立陣営にも油断ならない相手に映っていた。
試合開始から、成立は佐賀商業陣内でゲームを展開する。「今日の試合は初戦ということがあったので、最初の10分間は相手の裏のスペースを狙っていこうと。そういう決め事でやっていました」（成立・山本健二監督）。その指示どおり、宮内亨と市川雅彦はライン裏を狙う動きでボールを呼び込み、ダイヤモンドの頂点に位置する尾林一樹も、２トップへのスルーパスを幾たびも試みる。
先制点は11分。飯和也が右サイドを駆け上がり、中央へ折り返したボールがディフェンダーにあたって戻ったところを、宮内亨が落ち着いて決めた。成立の前線の活発な動きによって、佐賀商業の守備陣は後方の攻撃参加にまで対応できなくなっていた。これも序盤の伏線が効いての結果。ここまでいつゴールが生まれてもおかしくないほど、猛攻を続けていた成立。応援団の歌ではないが「何点入るかわからない」状況だった。
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| 最後まで攻め続ける成立、食い下がる佐賀商業。両校はタイムアップ まで熱戦を続けた。 |
一方的な成立ペースは、20分過ぎ頃に均衡化しはじめ、緒方達也と森田旭の佐賀商業２トップにもボールが届くようになる。24分には松本雄太のパスカットから、森田とつないでシュート。31分にもフリーキックから中央で１枚競っておいて抜けたボールを、セットプレーにあわせて上がっていた西村拓臣が左ポストに叩きつける。「完全に相手のゲームプランに嵌っている」。宮内総監督の目にはそう映った。
しかし、ハーフタイムで息を入れた成立は、後半、もう一度組み立てなおす。左右の飯野将光、鳥井勇作を中心としたサイド攻撃、２トップの細かいパス交換と、成立イレブンは持てるアイデアを次々に出していく。そして45分、フリーキックから江崎一仁が頭で戻し、ゴール中央で粘った宮内が転がして２点目。53分には飯のクロスがファーサイドに抜けて、鳥井が強烈なシュートを佐賀商業のゴールに叩き込んで３点目。必死に食らいつく佐賀商業を振り切った。
敗れた佐賀商業だが、雨あられと降り注ぐシュートを止めまくったGK大坪の奮闘もあって、29本のシュートを浴びたものの３失点で食い止めた。早い時間の先制にも粘り強く耐えて、得点差が開いていっても最後まで諦めずに戦った姿勢は、高校サッカーそのもの。きっちりとフィニッシュして自陣に戻る成立に比べて、シュートで終わるシーンが少なかった。20分過ぎ、そして後半は60分過ぎと、シュートを打つことでリズムが生まれる時間帯があっただけに、そこが惜しまれた。
勝った成立の宮内総監督は高く理想を掲げる。「勝った負けただけではなくて、選手たちがさらに上を目指せるように僕は指導していきたいと思います。僕もサッカーをやってきて、本当に才能はあるのにその場限りで終わってしまった選手をたくさん見てきました。彼らには、どんどんステップアップして世界に通用するような選手になってほしいんです」。そして気を引き締めるように言った。「次はこう行かないと思いますよ。３回戦はもっと厳しいはずです」。
山本監督も「今日は状況的にはもう少し、ボールを上手く回せたと思います。もうちょっと上手くサイドから崩せていければ良かったですね。上に行けば行くほど相手が強くなる。そうなるとボールをもっと上手く回していかないと勝てません」と、チームに注文を付けた。しかし、それも選手たちを信頼しているからこそ。テレビのインタビュー終了後、佐賀商業の田中監督に挨拶した後、取材を申し込む報道陣を制して、選手たち全員に、ひとりひとり声をかける姿が印象的だった。
