五輪最終予選は大丈夫か。日本U-22、韓国U-22に完敗。
国際親善試合　韓国U-22代表vs.日本U-22代表

2003年9月17日（水）19:00キックオフ　ソウルワールドカップスタジアム　観衆：40000人　天候：晴
試合結果／日本U-22代表１−２韓国U-22代表（前０−２、後１−１）
得点経過／［韓国］金東進（６分、32分）、［日本］高松（77分）


文／中倉一志

「７月の試合と同様に高いプレッシャーの中での試合になると思います。そのような状況で各選手がエジプト、シンガポール遠征で得た成果と自信を発揮し、どのようなパフォーマンスを見せてくれるかを期待します」。韓国遠征メンバー発表時の山本U-22代表監督のコメントだ。さらに「最終予選に向けてさらにチームを成熟させる絶好の機会」とも付け加えた。しかし、それどころではなかった。韓国との大きな力の差をまざまざと見せ付けられただけだった。

　得点差は１点。終了間際には攻め込む時間帯も作り出した。ましてやアウェイでの戦い。表面的な見方をすれば許容範囲の出来事だったかもしれない。しかし、内容は・・・。引き分けに終わった７月の国立での対戦後、川淵キャプテンは日韓の様子を「大人と子ども」と表した。あの時よりは若干マシのような気もするが、その差は縮まったとは言いがたい。確かに韓国のゴールデンエイジは強い。しかし、あまりにも日本は未成熟だった。

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　この日の日本は大久保をワントップに配置する３−４−２−１の布陣。DFラインの３人を総入替したほか、トップ下にも新戦力の山瀬を起用した。開始直後は、前からプレスをかけてくる韓国にひるまず、高い位置でプレスをかけ返してボールを奪うシーンが見られる。立ち上がりは上々だ。しかし、たった一つのプレーで形成は一気に韓国に傾いた。時間は６分、崔兌旭の右サイドの突破に日本はCKを献上する。そしていとも簡単に金東進にゴールを決められる。マークについていたのは阿部。だが、あっけなく前を取られた。


　先制点を奪われた直後、日本は根本を右SBの位置に下げて４バックに変更。しかし、これで引き気味になってしまった日本はさらに韓国に押し込まれる。ここぞとばかりに前がかりになって攻める韓国。そして32分、今度は左からのCKに金東進が左足をあわせてゴールネットを揺らす。今度もマンマークについていた阿部を簡単に振り切って放ったシュートだった。残り10分ほどの時間帯から日本が前へでるシーンもあるが、流れを引き寄せるほどではない。

　後半は韓国の練習のような展開だった。引き気味なった日本の中盤にはポッカリと大きなスペースができ、時折攻撃に出るものの、互いの連携も押し上げもなく効果的な形は作れないまま。そんな日本に対して韓国はまるで練習でもやっているかのようにのびのびとシュートを放つ。終盤に入って、日本が前に行くシーンも出来たが、それは韓国が守りに入ったからのこと。77分に石川のクロスに高松が高さのあるヘッドでゴールネットを揺らしたが、それも焼け石に水だった。

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　完敗だった。そしてなにより、アジア大会から全く進歩の見られない日本U-22代表のふがいなさにやりきれない思いばかりがつのった。

　キープしたボールをいかに早くゴール前まで運ぶかということを模索するU-22代表は、昨年のアジア大会のときから、まずは前線へとの意識が強かった。ボールを奪えば、前線にロングフィードを当てるか、両サイドのスペースへ放り込んでWBを走らせる。一見、両サイドのスピードあふれる突破は迫力がある。しかし、中盤に収まりどころがなく、ただ前へ蹴るサッカーは慌しさばかりが目立っていた。実際、突破してもゴールチャンスは少なかった。

　ダブルボランチと攻撃の選手のつなぎの悪さも課題だった。ダブルボランチが低い位置にとどまってボールを捌くため、中盤での効果的なパスワークが機能しない。セカンドボールを有効に使うこともできなかった。両WBと前線との間に大きく開くスペース。チャンスを得ても、分厚い攻撃が組み立てられないという問題を抱えていた。さらに、なんとなく前半を戦い、後半になってからエンジンがかかるのも当時から指摘されていたことだった。

　そして最も問題なのが、同じことを何度も繰り返すということ。これまで、大切な時間帯で最終ラインの青木の軽率な判断で失点を喫するというパターンが何度も繰り返されてきた。そして、今回の日韓戦でも、大事な時間帯で阿部が簡単に前を取られて失点した。守備の集中を高めなければいけない時間帯での軽率なプレーの繰り返し。青木や阿部個人を責める気は毛頭ない。軽率なプレーをいつまでも許しているチーム全体の緊張感の欠如に問題の根幹がある。

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　個々のポテンシャルは決して低いわけではない。この日、初登場した３人のDFラインも、迫力ある韓国相手に決定的に崩される場面はなく、また大久保はＡ代表の将来を担う逸材であることも間違いない。ゲームが作れない中盤にしても、Ｊリーグではレギュラークラスの選手ばかり。山本監督は現浦和レッズ監督のオフトが日本代表を務めた時から日本代表に関わっており、その頭脳は誰もが認めるところ。将来の日本代表監督候補の一人でもある。ところが、それがチームになるとそれぞれの能力が発揮しきれていない。チーム作りは暗礁に乗り上げている。

　アテネ五輪のアジア出場枠は３。最終予選は来年の３月に行われる予定で、３つのグループに分かれる予選方式では、日本、韓国はシードされる可能性が高く直接対決は避けられるものと思われる。しかし、現在のチーム力では韓国はおろか、それ以外の強豪に競り勝つことも難しい。しかも時間もない。この時期にきてもチームの目指すべき方向を見つけられず、しかも課題も整理できないU-22代表。五輪出場枠獲得に赤信号が灯っている。