真夏の夜の夢。エムボマが２度目のMVPを獲得。
2003JOMOオールスターサッカー　J-EAST　vs.　J-WEST

2003年8月9日（土）　19:00キックオフ　札幌ドーム　観衆：34,669人　天候：屋内
試合結果／J-EAST３−１J-WEST（前２−０、後１−１）
得点経過／ ［EAST］中田（27分）、エムボマ（32分）、山田卓（65分）、［WEST］三浦知（84分）


文／2002world.com編集部

　選ばれし30人の戦士たちが札幌ドームに集う。年にたった一度だけ、サッカーファンのために行われる夢の競演。JOMOオールスターサッカーが今年もやってきた。サッカーは組織で戦うスポーツだが、オールスターターだけは別。それぞれのチームから選ばれた選手たちが自分の持てる個人能力をフルに発揮して戦いあう。そこには普段のリーグ戦とは違った面白さがある。札幌ドームに訪れた観衆は34,669人。誰もが憧れのスターたちの高い能力を見逃すまいとピッチに熱い視線を注いでいる。

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　開始３分、J-EASTの崔龍洙のシュートで試合は幕を開けた。「攻撃的な選手が多かったので、最初から攻めていった」（清水監督・J-EAST）。その言葉通り、J-EASTは攻撃的な姿勢を前面に打ち出して前に出る。さらに８分、エムボマがロングレンジのシュートを放つ。ボールはポストの右に外れたが、その左足の威力は抜群。ドーム内にどよめきが起こる。しかし、J-WESTも負けてはいない。16分、吉原が倒れながら右足アウトサイドで出したラストパスに大久保が鋭く反応。右足を振り抜いたが、ボールは左ポストをかすめた。

　さらにJ-WESTの決定機が続く。17分、黒部がポストで落としたボールに２列目から飛び出した森島が右足を一閃。鋭いシュートがクロスバーをわずかに超える。その直後の20分、今度はお返しとばかりに崔龍洙が小笠原のCKに頭で合わせてあわやというシーンを作り出す。ここまで両チームが放ったシュートは12本。次から次へとゴール前の攻防が繰り出される試合にスタンドは熱狂の渦。攻め抜くことを選択した両チームのプレーに完全に引き込まれている。

　そして先制点はJ-EAST。田中達也、崔龍洙が続けて決定機を逃した後の22分、小笠原のFKに中田が頭で合わせた。小笠原の放ったボールに、中央に飛び込んできた崔龍洙、エムボマは触れられなかったが、ファーサイドに流れたところへ中田が判断よく飛び込んできた。この日は３バックの左で出場した中田だが、得点に対する嗅覚はさすが。いつの間にかスルスルとファーサイドに現れた。この時点で勝負あり。見事なゴールだった。

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　このゴールでJ-EASTは試合の主導権を掌握する。右からは初出場の田中がはつらつとしたプレーでチャンスを作り、左からは根本、岩本が攻めあがる。そしてボールを操る小笠原。両サイドの攻防を制して、攻撃の手を緩めずにゴールを目指す。そして追加点は32分。ゴール正面でボールを受けたエムボマがシジクレイを右にかわす。エムボマの武器は左足。もう一度左へ切り返すかと思われた瞬間、エムボマの右足が唸った。一直線にゴールに突き刺さるスーパーゴール。さすがの楢崎もなす術がなかった。

　劣勢に追い込まれたJ-WESTは、後半の頭からカズ、松井、鈴木、松代の４人を一気に投入、３バックに変更して反撃体制をとる。そして名波がポジションを上げてボールを捌く。しかし、ゲームをコントロールするのはJ-EAST。２点リードという余裕からか確実に守ってJ-WESTの攻撃の芽を摘んでいく。そして65分、右からのCKに山田卓が難しいヘディングシュートを決めて３点目をゲット。これで勝負は決まった。この後、やや運動量に陰りが見えたが、J-WESTに決してゴールを許さない。

　そんなJ-WESTに意地のゴールをもたらしたのは、やはりこの人「キング・カズ」。84分のことだった。左からのCKの場面、全員が二アサイドに走りこむのを見ながらファーサイドへポジションを取るカズ。そして、シジクレイが頭ですらしたボールをカズの視界が捉える。後はゴールへ流し込むだけ。左足を伸ばしてきっちりとゴールネットを揺らした。巧みなポジション取り、一瞬のチャンスをものにする集中力。やはりカズはカズだった。

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　試合はこのまま３−１でJ-EASTが勝利。MVPには90分間に渡って迫力のあるプレーを続けたエムボマが受賞した。エムボマのMVPは６年ぶり２度目。前回はハットトリックが評価されての受賞だったが、今回は存在感のあふれるプレーと、常にゴールの匂いを漂わせた危険なプレーが評価されてのものだ。「当時は移籍してきた新しい国を発見しようという気持ちが強く、そこで魅了されたからこそ自分は今ここにいると言える。プレーする喜びは今も変わらない。だからこそ、２ndステージは東京Ｖの選手たちと『我々は勝利できる』ということを証明したい」と喜びを語った。

　そしてMIPはカズ。受賞に際し、「この大会に選んでくれたサポーターに感謝したい。オールスターサッカーに呼ばれることを、毎年自分のモチベーションにして頑張っている。今年は攻撃的なシーンの多い楽しい試合、よいお祭りになったと思う。FKの時、今をときめく大久保くんに蹴らさないとブーイングが起こるかなと思ったけれど、そうでもなくてよかったです」と楽しげに語った。やはりカズには大舞台が良く似合う。

　あっという間に過ぎた90分。攻めに、そして守りに、30人の戦士たちは自分たちのポテンシャルを余すことなく発揮し、夢の競演は日本中のサッカーファンを魅了した。彼らが再びあい見えるのは１年後。そのときを楽しみに待つこととしよう。