大宮アルディージャ　サポーター通信　〜たったワンプレーで勝ち点を失う 　レポート／OrangeSmile

　一瞬の出来事だった。それまで相手ＦＷの質の高い動きにも最後の部分できちんと対応していたＤＦ陣が、あのときだけはスローモーションのように見えた。広島ＦＷガウボンがロングフィードを頭で後ろへ落とし、そこへ走り込んだＦＷ前田俊介が体を反転させながらの右足ボレー。シュート自体は難易度の高いビューティフルゴールだったが、その局面を作り出してしまったことで勝ち点がするりと逃げていった、そんな試合だった。

　リーグ戦中断前最後の試合となった、４位大宮アルディージャと３位サンフレッチェ広島の上位チームの直接対戦。会場は今年初開催となる熊谷スポーツ文化公園陸上競技場だ。ここは昨年おこなわれた埼玉国体の会場として建設され、昨年９月のヴァンフォーレ甲府戦ですでに１度リーグ戦を開催している。まだできて間もないため施設自体はとてもきれいだが、ピッチコンディションは最悪だった。芝は剥げ小石がそこかしこにちらばり、補修がピッチ練習直前まで行われたが、状況は変わらなかった。昨年はほとんど気にならなかったのだが、おそらく使用頻度が高いため芝が傷んでしまったのだろう。熊谷では今後３〜４試合程度行われると聞いている。なんとかコンディションをよくしてもらいたい。

　試合はそのピッチコンディションの影響をもろに受ける展開となった。思うようにコントロールできないため、どうしてもセーフティーになり相手を崩しきれない。またボールを繋いでいくことができないため、必然的にカウンター気味の攻撃が多くなる。両チームとも素早い攻撃を武器としているため、主導権を握るのが難しく、前半のシュート数は大宮が１本、広島が２本と見せ場のないまま前半を終了してしまった。


　なんらかの策を講じてむかえたはずの後半も、試合の流れは変わらなかった。ホームとして勝ち点３を奪いにいくべきなのに、三浦俊也監督は動かなかった。逆に小野剛監督は、積極的に交代のカードを切ってきた。62分にＭＦ森崎浩を入れて中盤のバランスを取ると、76分には前田を入れて前線の動きを活性化させる。明らかに点を取りにきた采配は、ホームとアウエーが入れ替わったかのようだった。「引き分けも頭にあった」ことで、三浦監督は躊躇してしまったのだろうか。76、88分の交代で２トップを桜井直人、横山聡にしたが、このピッチでは桜井のドリブルも生きなかった。

　大宮の２トップはクリスティアンと森田浩史だったが、荒れたピッチと広島のセンターバック２人の高さの前に、思うような動きができなかった。もっともそれ以前に、彼らにいいセンタリングが１本も入らなかったとも言える。この試合に関しては広島も似たような状況だったが、クロスの精度は他のＪ１チームとの差を痛感する部分だ。「技術的な問題」と三浦監督もはっきり語っているように、まだまだ下手くそだし、まだまだ向上の余地がある。クリスティアンと森田の高さ、強さがあれば、いいボールがくれば決める可能性は高いし、この試合でも「もっとボール（の質）がよければな…」と思うシーンが数多く見られた。両サイドのＭＦだけでなく、サイドバックにもこの部分を意識してもらいたい。そうすれば得点の可能性はぐんと高くなる。

　試合を観戦していて、正直「これは引き分けだな」と感じるほど両チームから得点の匂いがしなかっただけに、後半ロスタイムの失点シーンは『魔がさした』としか表現できない。確かにガウボンへの対応が遅れてはいたが、それよりも前田の一瞬の動き出しの速さに、なにもできずに決められた感じだ。Ｊ１にはあんなＦＷがうじゃうじゃいるかと思うと、この先どうなることかと正直恐ろしい。大宮としてはより一層守備時の集中力、チーム全体のＤＦということを意識しなければ、これからもあっさり失点してしまうケースが増えるだろう。


　ここまで12節を終えて、５勝２分５敗の勝ち点17、８位で約１か月半の中断期間に入る。自動降格圏内にいないことは評価できる。だが「引き分けで終われた試合を落としているのが悔やまれる」と三浦監督も振り返っているように、もっと勝ち点を積み重ねることはできた。今の順位に満足などできない。まだまだやれる。

　リーグ戦は中断したが、今週からはナビスコ杯の予選リーグが再開される。メンバー構成がどうなるのかわからないが、今の大宮は目の前の試合に全力でぶつかり、経験を積むことが一番重要だ。そして結果を残していくことによって、経験が力に変わる。世間的な注目はリーグ戦より劣るが、我々にとってはリーグ戦となんら変わりはない。自分たちのサッカーを実践するだけだ。