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| どちらのイレブンも冬の選手権は初体験だ。 |
第84回全国高校サッカー選手権 １回戦 山形県立山形中央高校vs.和歌山県立和歌山北高校
2005年12月31日（金）14:10キックオフ 西が丘サッカー場 観衆：4,775人 天候：晴
試合結果／山形県立山形中央高校１−１（PK５−４）和歌山県立和歌山北高校（前１−０、後０−１）
得点経過／［山形中央］長岡（25分）、[和歌山北]下岡（60分）
取材・文／西森彰
地元高校の敗退でちょっとスタンドが寂しくなった、西が丘サッカー場の第２試合。山形県立山形中央高校と和歌山県立和歌山北高校のゲームは、忙しくボールが左右に行き来して始まった。山形中央は３年ぶりの全国大会出場、和歌山北にいたっては21年ぶりの参加。そのせいか、どちらもボールの処理が危なっかしく、縦に急いでは相手の守備網にひっかけられる。「私も久しぶりですし、当然、選手は入れ替わっているので初めて。めちゃめちゃ緊張していました。ボールが前半、収まらなかったのはそれもあると思います」（木村雅善監督・山形中央）。
浮き足立つ自分たちを落ち着かせる意味で、遠目からでもシュートを放つ両チーム。前半だけで山形中央が９本、和歌山北が８本のシュートを記録した。その中で、得点につながったのは山形中央の長岡康太が放ったヘディングシュート。升川正太とふたりでセットプレーを分けあうフリーキッカー・井上聡がニアに蹴ったコーナーキックに、きっちりと飛び込んであわせた。前半は風下の山形中央が１点リードで折り返す。
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| 先制点を上げた山形中央の長岡。 | |
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| 決着。その瞬間、山形中央の控え選手は、仲間のもとへ駆け出した。 |
「ああいうきれいな攻撃がサッカーの魅力。狙いどおりの形で点をとれた。選手交代で流れを変えて、喉から手が出るほど欲しい１点が入った。これで行けると思いました」と和歌山北の内田善啓監督。山形中央の木村監督も「和歌山北の10番が良い選手なので、これをどのように封じるかを考えました。しかし、１回の決定機をきっちりとモノにされた」と脱帽するきれいなゴールだった。
同点になった後も、もう一度勝ち越しを目指して押し込む山形中央と、ボールを奪って速攻を狙う和歌山北が、互いにチャンスを作り出す。試合終了間際には和歌山北・西口峻史のシュートがゴールバーに蹴られるなどあわやの場面もあったが、両チームの守備陣も良く凌いで１対１で終了。PK戦に突入した。
「（後半終了直前に入れた安部隆介は）入れ忘れていました、というのは冗談で（笑）。いつもPK戦で最初に蹴る選手なので、最後に入れておきました」（木村監督）。練習どおりに安部隆介を第１キッカーにして５人全員が決めた山形中央。和歌山北は最も重い５人目を担った花田のキックが、山形中央のGK・岩井慎佑と、右ポストに阻まれた。
勝負が決定した瞬間、山形中央の女性マネージャーふたりはベンチの中で、和歌山北のキャプテンはセンターサークル付近で、それぞれ違う種類の涙を流した。
「前回、全国大会に出てきた時のチームは、前から後ろまで核になる選手、ひとりで打開できる選手がいました。今回はそういう選手がいないのでチーム全体で戦うしかないと思っています」と山形中央の木村監督。１年生DFの宍戸勇紀から、３年生まで各学年の選手が揃った先発メンバー。ふたりの交代選手が経験の３年生であるように、それぞれの特長を指揮官が上手く引き出している。１月２日の２回戦では第１試合で勝った岡山県作陽高校との対戦。「（作陽対策は）ビデオを見ながら、これから考えます。作陽は強いので、胸を借りるつもりで、楽しんでサッカーをしたいと思います」（木村監督）
敗れた和歌山北の内田監督にも悔いはない。それは大舞台で良い試合ができたという手応えが、残っているからだ。「１回戦で武運つたなく散りましたけれども『21年ぶりに出た和歌山北は立派に戦ったよ』と、試合を見たお客さんに言ってもらえるようなゲームができたと思います。山形中央もまとまりのある良いチームでした。トーナメント表を見た時に山形中央対和歌山北なんて、ぜんぜん注目されないしょうもない試合だと思われたかもしれませんが、お互いにベストを尽くして面白いゲームを見せられたと思います」。
ただひとつ、ゲームの終わり方にだけは嘆息した。「神様もえぐいことをなさるなぁ。よりによって、花田にババを押し付けるなんて…。県大会はケガで出られなかったけれど、チームを引っ張ろうと頑張っての骨折。花田本人も『みんなにここへ連れてきてもらった』と借りを返そうとしていたんだけれどなぁ」。
断言しても良いが、最後の場面で顔を出す彼のカバーリングがなければ、対戦相手の山形中央は、80分間で勝利をその手にしていた。花田には胸を張って和歌山に帰ってほしい。面白いゲームを見せてもらった観客のひとりとして、心からそう思う。
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| どちらかが去らなければいけない。何回立ち会っても、残酷な結末。 |
（山形県立山形中央高校）
GK： 岩井慎佑
DF： 升川正太（H.T／伊藤剣之介）、宍戸勇紀、青嶋貴裕、大場慎哉
MF： 古山慶祐、渡部博文、井上聡、石黒右斗（79分／安部隆介）
FW： 八矢翔太、長岡康太
（和歌山県立和歌山北高校）
GK： 塩路裕也
DF： 藤田順也、花田祥平、三宅順也、北岡宏基
MF： 大宮健護（54分／山内宏太）、西口峻史、中島弾、新原良太
FW： 下岡史人、野口峻
