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第82回全国高校サッカー選手権大会 ３回戦 武南高校vs.四日市中央工
2004年１月３日（土） 12：10キックオフ さいたま市駒場スタジアム 観衆：10.082人 天候：晴
試合結果／武南２−３四日市中央工（前１−１、後１−２）
得点経過／［四中工］築舘（16分）、［武南］角田（24分）、［四中工］金守（47分）、中林（61分）、［武南］荒井（77分）
取材・文／砂畑 恵
今年の三が日は麗らかで風もほとんどない。日向で観戦をしていると分厚いコートも不要に思えるほどだ。地元・武南と名門の四中工の対戦で、当日券売り場にはチケットを求める人が長蛇の列をなし大混雑。１万人を越える観衆が駒場スタジアムを埋めた。
２回戦からの登場となった武南は、前日に初出場の京都朝高と対戦した。相手のフィジカルの強さにかなりてこずった感があったが、荒井を中心に高い個人技に裏打ちされたゲーム運びで、２−０のスコアーで京都朝高をうっちゃった。
一方、埼玉県を転戦している四中工は、優勝候補だった前橋育英、難敵の大津高校を破り、再び駒場に再び戻ってきた。攻撃に関してはピリッとしないもどかしさもあるが、守備面では１試合通じ高い集中を保ち、初戦に喫した１失点のままここまで勝ち上がってきた。
ファーストユニフォームが同じということで、武南が白のユニフォームを着用し、四中工は今大会初めての濃紺のセカンドユニフォームでお目見えした。
立ち上がりはボールがお互いの陣地を行きつ戻りつして、なかなか攻撃の形を作れずにいたが、10分に最初のチャンスが武南に巡ってくる。越雲がドリブルでゴール前にボールを運び、左に開いた荒井にパスを送る。荒井はそのまま越雲がゴール前に走ることを悟り、ボールをキープしながらタイミングを待ってクロス。越雲は判断良く飛び込んだに見えたが四中工DFが越雲の前に身体を入れて跳ね返した。
セカンドボールを拾ったのは武南。角田から田原にボールが渡り、今度は右サイドからセンタリングを上げる。今度も泉がゴール前に走り込んだが、寸でのところで四中工に上手く処理された。13分には荒井がドリブルで中央突破。荒井が浮かせたボールは、ペナルティーエリアへ斜めに走り込んだ井上に通るが、胸トラップが大きくなったところで樋口にボールを奪われた。
武南の第一波を防いだそのすぐ後、四中工に攻撃の機会が訪れる。15分、右から攻撃を仕掛けた守屋がアーリークロスを入れる。ニア、中央と走り込んだ味方には合わなかったが、大外には築舘。が、築舘の目の前でボールは角田に跳ね返えされた。１、２戦を通しても、四中工の攻撃はおっとりしているところもあって、そろそろエンジンが掛かるころかと思って見ていたのだが、よもやその１分後にゴールを奪うとは考えてもみなかった。
16分のCKを後方にいた島嵜がシュート。DFの足に当たったボールが混戦の中にいた築舘の元へ。築舘は先制弾を武南ゴールにねじ込んだ。19分にも築舘がボレーシュートを放つ。ところが21分にあったFKの際に、意表を突こうとしてトリックプレーをしようとして、武南にあっさりとボールをカットされて勢いが止まってしまった。
四中工へと傾いた流れ引き留めた武南は、24分に角田の得点で追い付く。角田のパスから始まった攻撃は泉、越雲とパスが引き継がれ、オーバーラップをした角田に再びボールが渡る。角田は寄せ来るDFをドリブルで躱わし、GK田中俊と１対１。GK田中俊はニアを突かれないようにしながら、角田を角度のないところへと追い込んだが、角田は落ち着いてファーポストへシュートを流す。ボールはポストに当たってゴールに転がっていった。このゴールで気をよくしたのか、角田はゴールを背にもたつく四中工の選手に果敢にチャレンジしてボールをカット。高い位置に上がって精力的なディフェンスを見せた。
タイスコアーになってしばらく均衡を保っていたゲームは30分過ぎにまたも武南の攻勢変る。荒井・井上のホットラインで四中工ゴール前を脅かす。35分には磯部が攻撃参加し荒井にパス。そのままゴール前に上がった磯部に四中工DFがつられる間に、遠いサイドにいた井上が荒井のクロスをヘディング。わずかにクロスバーの上を超えた。
意気消沈しかけたチームに田中輝が「声を出せ」と渇を入れる。その効果か、四中工が前半終盤に盛り返す。38分のFK。金守の蹴ったボールを、中林がポストとなってボールを戻し、中川がゴール前へ。フリーになっていた築舘のヘッドは惜しくもバーの上。40分の守屋がミドルもGK石長の正面。両チーム同点のまま、一進一退した前半が終わった。
後半、四中工は順調にゲームに入った。43分、中林が右に振ったボールに田中輝が追い付き、DFを抜き去って築舘に低いセンタリングを上げる。胸トラップの収まりは悪かったが、体勢を立て直した築舘は４人のDFに囲まれながらも力強いシュートを放った。四中工の樋口監督曰く、「田中輝には最初から行け」と伝えているらしいのだが、お定まりのように田中輝は後半にならないとあまり仕掛けてこない。それでも田中輝が攻撃モードに入ると四中工は活気づく。46分に中林が攻撃を仕掛けた際も、田中輝が起点だった。3度、四中工ペースとなったところで、勝ち越し点はうまれた。47分、中林のCKをニアに入った守が上手く足で合わせてネットを揺らす。けれど四中工の歓びは束の間だった。
ここで引き下がれないとばかりに、武南の猛攻が開始される。52分、磯部がディフェンスに来た中川をかわして怒涛の上がりを見せ、四中工ゴール前に早いクロスを入れる。ファーにはフリーで井上が待っている。武南、絶好のチャンスと誰もが思ったところに、鬼神の如く引き返した樋口がナイスディフェンス。相手の好機を潰した。58分には磯部のクロスをDFが跳ね返したところを越雲がミドルシュート。GK田中俊にキャッチされた。19分にも、スルーパスに反応した角田がゴール前までボールを持ち込み、ライナー性のクロスを上げる。飛び込んだ荒井にはわずかに合わず、田中輝がCKに逃れた。
辛抱を続ける時間帯が長引く四中工だが、それが喜びに変わる時間はほどなくやって来た。60分に交代した若山が、出場わずか１分で期待に応えたのだ。タッチラインでパスを受けた若山は反転と同時に、隣を走る島嵜に絶妙なパスを送る。ゴールに迫り来る島嵜に武南DFは集中。島嵜は冷静に横に流し、フリーの中林が豪快に３点目を挙げた。
２点差を付けられても武南は諦めたりしなかった。64分に梅澤を投入してより攻撃的に出てきた。左を駆け上った神が低いボールをゴール前に送る。そのボールを受けた荒井は、レッズの田中を思わせるようにDFの間を抜けてシュートを沈めた。１点差に追い上げた武南は一方的に攻めまくった。２度、３度と四中工ゴール前でいいシーンを作るもあと１歩が及ばない。ロスタイムにはゴール正面やや左の位置からのFKを獲得。荒井のキックは５枚の壁を越え、神にの頭に届くがポスト左に外れる。タイムアップ寸前にも、井上のパスを受けた越雲が蹴り込もうとするがGK田中俊がキャッチ。健闘虚しく大会から姿を消した。
