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2003Ｊリーグ ディビジョン２ 第44節 川崎フロンターレvs.サンフレッチェ広島
2003年11月23日（日）13:04キックオフ 等々力陸上競技場 観衆：22,087人 天候：曇
試合結果／川崎フロンターレ２−１サンフレッチェ広島（前1-1、後1-0）
得点経過／［川崎］アウグスト（23分）、［広島］マルセロ（35分）、［川崎］我那覇和樹（81分）
取材／文 大内孝彦
三つ巴の混戦が続いていた2003年のJ2の戦いも遂に最終節。前節、新潟が福岡に敗れて川崎Ｆが湘南と引分け、広島が鳥栖に勝利。この結果、まず広島がJ1への１枚目の切符を手にした。残る１枚を手にすることができるのは、新潟なのか川崎Ｆなのか。
試合前の状況を簡単に整理すると、川崎Ｆが昇格となるパターンは唯一つ。川崎Ｆが勝利して新潟が敗れること。つまり、新潟が勝つか引分けるかすれば川崎Ｆの勝敗に関係なく新潟がJ1昇格の切符を手にすることになるのである。川崎Ｆにとって、いわば「キャンセル待ち」とでも表現すべき状況なのである。
そして新潟がその切符をキャンセルする可能性は相当に低い。まず、この日の新潟の対戦相手が大宮であること。今年の新潟はここまで大宮戦は３戦３勝である。そしてなによりもホームのビッグスワンで４万人もの声援を受けて戦うであろうこと。これらを考えると、川崎Ｆが昇格できる条件が揃うことは、相当に厳しいものといえた。
だが、そのような状況下でありながらも、この日の等々力には今シーズン最多となる22,087人もの観衆が詰め掛けた。その大半は川崎Ｆの昇格を願う人々である。
試合は13:04にキックオフ。立ち上がりからほとんど互角といって良い展開となる。そんな中、最初にチャンスをつかんだのは広島であった。７分、森ｱ浩司の鋭いフリーキックにサンパイオがファーサイドで頭で合わせるもののゴールとはならず。この後も両チームともに攻守の切り替えの早いスリリングな試合を見せる。そして川崎Ｆがセットプレーから先制点を挙げることになる。23分。ほぼゴール正面の位置からキッカーのアウグストの放ったシュートが壁を突き破るようにしてゴール左へと決まったのである。実にアウグストらしい力強いフリーキックであった。
既にJ1昇格を決めている広島だが、やはり負けて良い試合など存在しない。この後、同点とするべく川崎Ｆのゴールへと迫ることになる。そして35分。アウグストがペナルティエリア内でマルセロを倒してしまい、広島がPKを得る。このPKをマルセロが落ち着いて決めてゴール。この試合に勝てばJ2優勝となる広島が同点とした。この後も双方ともにシュートを放つ場面を作るものの、得点には至らず同点のまま前半は終了。
後半も両チームとも、一歩も譲らぬ試合展開となる。まず、55分には広島が中山が頭で落としたボールをマルセロがシュートするがこれはGK吉原の正面を衝いてしまい得点とはならず。対する川崎Ｆも58分と60分に立て続けにチャンスを作り出すものの得点には結びつかない。こうして両チームともに勝ち越し点を奪えないまま試合が進む。
そして81分。広島の攻撃を食い止めた川崎Ｆは素早くパスをつなぎ逆襲。最後はジュニーニョからのパスを受けた我那覇がペナルティエリア右からシュートを放ち、これが見事にゴール。こうして川崎Ｆが再びリードを奪った。そしてこの後、川崎Ｆは広島に得点を許さず。結局、試合は２−１で終了した。
こうして、試合は川崎Ｆが勝利。だが、それはこの試合の結果が出ただけでしかない。まだ2003年のJ2リーグの結果は出ていないのだ。果たして新潟の試合結果はどうなったのか。ピッチの上で新潟の試合結果を待つ川崎Ｆの選手とスタッフ達。そしてそれを見守るサポーター達。そしてしばらくして新潟の結果がアナウンスされた。それは新潟のJ1昇格。つまり川崎Ｆに来期も過酷なJ2の戦いが待っていることを告げるものであった。
結局この試合の結果は、敗れた広島がJ1へ昇格を果たし、勝利した川崎ＦがJ1昇格を逃すという皮肉なものとなってしまった。昇格した新潟の勝ち点は88、広島の勝ち点は86。そして川崎Ｆの勝ち点は85。その差はほんの僅かであるのだが、その結果は天国と地獄と表現しても良いような差が生じてしまった。
この試合で見せたように川崎ＦのサッカーはJ1昇格を果たした広島と遜色の無いものであり、J1昇格を果たしていたとしても不思議では無かった。ただ、最後の最後で生じてしまった僅かな勝ち点差こそが、３チームの実力の差といえるのかもしれない。
試合後、この試合がホーム最終戦ということもあり、川崎Ｆの選手達が競技場を一周した。その選手達の顔には遠目にもJ1昇格を逃した無念さが溢れていた。来シーズン、彼らはこの思いをどのようにしてピッチの上で表現してくれるのだろうか。
